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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場6−8

 将軍は自分自身に亜人の血が流れているから、ショウが亜人だと知っても敵国のスパイかもしれないと疑いはすれど、忌避するような感情はなかったのだろう。本当に、将軍からもリアからもショウを亜人だからと毛嫌いするような雰囲気は感じられない。

 もしかして、亜人が思っているよりも人間は亜人嫌いではないのではないかと錯覚してしまうほどだ。

 将軍は椅子の背もたれに背中を預けて腕を組む。それだけでかなりの威圧感が出た。

 その将軍を指差して、リアが口を開く。

「言っておくが、将軍が亜人の血を引いているという話は最高の機密事項だ。知っているのは軍内部でも信頼の置ける上層部の数人だけ。ほかは、国王と副官と私とお前だけになる」

 リアの言葉に、「えっ……」と思わす声が漏れた。

「それって、オレが知っていいことだったの?」

 自分を指差して驚くショウを見て、リアが意地悪そうな笑みを浮かべる。

「このことは他言無用だ。お前が将軍が亜人の混血であることを誰かに漏らせば、軍だけではなく国を揺るがす大事になる。だが、亜人であるお前なら大丈夫だろうと判断した。目の当たりにした魔法についての質問も、こちらが納得できるような回答だったしな。お前は信じるに値すると判断して話した」

「リア様がそう判断されたのであれば、俺はそれに従うしかありませんね。もしも軍を追い出されることがあれば、またヴェアール領に戻って今度は家を継がれたリア様のために働きますよ」

 少し困ったような表情で苦笑した将軍は、リアに対して全幅の信頼を寄せているような空気を感じた。その疑問を将軍はショウの表情から読み取ったのだろう。視線をショウへと向けて苦笑いをする。

「俺の一族はヴェアール領で暮らしている。ヴェアール家は人間の貴族としては珍しく亜人にも寛容だから、混血の俺でも人目を気にすることなくのびのびと暮らしていけた。軍に志願した時もヴェアール家のご当主様が当時の将軍に口添えしてくれてな。俺はそこからのし上がって将軍の座にまで上り詰めることができた。ヴェアール家は感謝してもしきれないほどの恩がある。だからこそ、今回、リア様の護衛を誰に任せるかと考えた時、お前にしようと考えたんだ。お前は口は硬いし、剣士としての腕前も文句ないくらいだしな」

 かなり信頼されているのがわかった。特になにかをしたわけではないのに、なぜか信頼されてしまっている。それが不思議でならなかった。

「前突撃部隊隊長の目に狂いはなかったってことだな。あいつの人を見る目は確かだった」

 腕を組んで納得している様子を見せる将軍に、リアが「私は会ったことはないが、将軍がそう言うのであればそうなんだろうな」と言う。それを聞いて、将軍は嬉しそうに笑った。

 どうやら、リアは前突撃部隊隊長には会ったことがないらしい。確かに、リアはこのフレストからの参加であるようなので、数年前のヴェスラ草原での戦争で戦死した隊長を知らなくて当然だろう。

「話は逸れましたが、敵軍はリア様の存在に気付いたと思われます。リア様は向こうの出方を見るという方向性で考えているということでよろしいですか?」

 真面目な話が始まり、将軍の言葉にリアが少し考え込むような仕草を見せる。ややあって、「私はそのつもりだ」と答えがあった。

「こちらは、向こうの出方を見ていた方がいいと私も考えている。向こうの出方次第で、こちらも作戦を考えよう」

「承知いたしました。ショウもそのつもりでいてくれ。常にリア様の傍に付き従い、少しの変化も見逃すことなく、リア様を守ってくれ」

「わかりました」

 リアがこの戦争での重要人物であることは、先ほどの出来事で充分によくわかった。だから、この戦争に勝つためにはリアの存在は必要不可欠。絶対に失ってはならず、命を賭けて守らなくてはならない。

「リア様から身体強化などの魔法をショウに付与することができればいいのですが、純血種の亜人は魔法を一切受け付けませんからね」

 将軍のその言葉に、二人の視線が一斉にショウに向けられた。

「亜人は魔力を一切持たぬのに、魔法耐性が高いのも特徴の一つだからな。私も付与できればいいのにと考えたことはある」

「……え? そうなの?」

 初耳だ。亜人が魔力を持っていないことは親から教わったが、魔法耐性が高いなんて話は聞いたことがなかった。なので、驚いて思わず声が出た。

「本当だ。亜人には魔法が一切効かない。純血種であるお前は当然のこととして、亜人の混血種である将軍もある程度の魔法耐性を持っている。私は魔力量が多いから魔法耐性が高くて当たり前なのだが、亜人の魔法耐性はそんな私と同等なくらいだからな。だから、お前は魔法をまったく恐れなくていい」

 自分に向かって魔法が放たれたことがないので、魔法耐性があるなんて知らなかった。けれど、知っていたからと言ってショウの戦い方が変わるわけではない。生き残ることを前提に戦うだけだ。

「亜人は基本的に身体能力が高いから、魔法の付与ができればさらによかったんだがな。こればかりは仕方ない」

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