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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場6−1

  6.


「護衛をショウ=アステールにすれば、私はそちらの要求を受け入れよう」

 

 リアがそう言ったことにより、将軍はこれ幸いとその場でショウにリアの護衛を命じた。今のショウは隊長でありながらも兵士の一人であることは変わらないため、絶対的な権力を持つ将軍からの直々の命令に逆らえるわけもない。逆らうな、という圧も凄かったため、ショウは「わかりました」と返事するしかなかった。

「ならばよい」

 ショウの出した答えに、リアは腕を組んで満足げな表情をした。

 これによって、ショウはいたくもない本営に滞在せざるをえなくなってしまった。帰りを待ってくれている隊員たちにどう説明すればいいんだ、と悩んでいると、視界の端で将軍が近づいてくるのが見えた。

 そちらに視線を向けると、こそっと顔を近づけてきた。

 護衛をまったく受け入れなかったリアがショウを名指しして了承したことが心底不思議だったのだろう。

 将軍は「お前はなんでこんなに気に入られたんだ? なにかしたのか?」と訊ねられたが、ショウは首を傾けることしかできなかった。

 荷駄置き場に連れて行かれた時も会話らしい会話をした記憶はない。なぜ自分が気に入られたのか、ショウだってわからなくて困っているくらいだ。

 ーー亜人が物珍しいのかなぁ……?

 この軍の中に、ショウ以外の亜人の気配は感じられない。だから、一人だけ人間の中に混ざっている亜人が物珍しいのかもしれないという結論に至る。

 その後、ショウを連れて歩く赤髪の少女の姿は本営でよく見られる光景となり、リアに気に入られてしまったことによってショウを表立って悪く言う者はいなくなった。ショウを見ながら悪口を言う者がいれば、リアがめざとつ見つけ「言いたいことがあるのであれば、本人に言ったらどうなのだ? 大人のくせにこそこそと相手を悪く言うことしかできないのか? それがサウス=リアクターを支える貴族の人間のすることか?」とはっきり言ってのけたのだ。

 その発言に驚いたショウはリアの後ろで慌てに慌て、十三歳の少女にそんなことを言われた隊長たちは唖然とした様子を見せた後、気まずそうにその場から立ち去った。その後ろ姿を見送ったリアは、「あれで隊長が務まるのか? 将軍に軍内部の人事を一度見直すべきだと進言しよう」と言ったので、目の前にいる十三歳の女の子に空恐ろしいものを感じた。

 あんな大男に物怖じすることなく発言する精神的な強さといい、本営にいる隊長たちよりも貴族らしい気がしてならない。でも、リアの発言によって、表立ってショウを悪く言う者はいなくなったので、その辺はかなり感謝している。

 本営からなかなか戻ってこないショウを部下たちが心配しているらしいと将軍の副官から聞いたのは、リアの護衛となってから一週間が経った頃だった。一週間も戻らなければさすがに心配するだろうな、と思ったショウは、リアに一度部下たちの元へ戻りたい、と告げると、ついていく、と言われた。

「え、ついてくるの? 突撃部隊の陣営に?」

 驚きのあまりそう言うと、リアは「お前の部下に興味がある」と言ってきた。

「興味があるって、ただの男たちだけど……」

「これから最前線で戦う男たちだ。一度、顔を見ておきたい」

 使い捨てだと揶揄される突撃部隊の隊員たちの顔を見てみたいだなんて、珍しいことを言う子だな、と思ってしまった。

 今まで、突撃部隊の隊員に興味を示すような人たちはいなかった。使い捨てだと思われていたので、興味すら湧かなかったのだろう。

 しかし、リアは違う。会いたい、と言う。

 ショウは将軍のところで待っていて欲しいとお願いしたのだが、リアが自分の意思を曲げないので、根負けしたショウが将軍の元へ向い、事情を話すとあっさりと許可を得ることができた。

「リア様が行きたいのであれば連れて行ってやってくれ。俺は軍の全権を任されている身だが、戦争の勝敗を左右するのはリア様だ。リア様の意志はかぎりなく尊重して欲しい」

「……わかりました」

 リアがこの軍の頂点に君臨する将軍よりも、さらにその上に君臨している存在であるのは充分よくわかった。そんな人の護衛を任されて、傷一つでも負わせてしまったら首が飛ぶかもしれないな、と思いながら、ショウはリアと共に突撃部隊の陣営へと向かった。

 道すがら、「なんで、リアはオレの部下に会いたいの?」と訊ねる。

 最初は将軍のように『リア様』と呼んでいたショウなのだが、リアに呼び捨てで呼べと言われてしまい、困り果ててその場にいた将軍に助けを求めるような視線を向けると、「リア様の言う通りにしてくれ」と言われたので、仕方ないのでリアの要望通りにすることになった。

 将軍も「本当に気に入られてるんだな」と呟いており、ショウは最初に出会った時の自分の行動を思い返してみたが、どこが気に入られたのかまったくわからない。やっぱり、亜人ってだけで珍しいのかもしれない。

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