信頼と裏切りの戦場4−3
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突撃部隊隊長となったショウは、戦場に作られたサウス=リアクターの本営に出入りすることが可能となった。ヴェスラ草原の時は突撃部隊の隊員でしかなかったため、本営への立ち入りは許されず、本営を囲むように配置されている一般兵たちに混ざって過ごしていた。将軍からの話では、隊長クラス以上の立場の人間は自由に出入りができるようで、寝泊まりも本営に作られた個人スペースでできるらしい。けれど、本営の空気に慣れずにいるショウは個人スペースにはほとんど出入りせず、突撃部隊の隊員たちと共に過ごしていた。
しかし、いくら自由に出入りができると言っても、ほかの隊長から嫌われているらしいショウに話しかけてくるような者はおらず、唯一話しかけてくるのは物好きな将軍だけだ。それがさらにほかの隊長たちから嫌われる要素となってしまった。
隊長クラスの者たちは貴族出身の者が多く、素性が知れないショウを将軍が気に入っていることが気に食わないようだ。けれど、本営の中では将軍の目が光っているため、直接的な嫌がらせなどをしてくる者はいない。
本営のどこにいても、刺さるような視線がチクチクと全身に刺さる。だが、今日は将軍から呼び出しを受けているため、本営を出て隊員たちの元に戻ることはできなかった。なので、ショウは静かになるべく気配を消して角の方に立っていることしかできない。
しかし、長身であるショウはどれだけ気配を消しても目立ってしまう。こちらをチラチラと見てこそこそと話している顔を覚えてしまった隊長たちの視線を感じながら、早く呼び出しが来るのを待つ。
ーー早く戻りたい……
突撃部隊の隊員を含め、一般兵たちは平民出身の者が多いため、ショウの出自を気にする者はいなかった。だから、本営にいるよりも一般兵士たちに混ざっている方がショウとしては過ごしやすかった。それも彼らは気に食わないのだろう。
人間の身分制度は面倒だな、と思っていると、ショウに近づくてくる人物がいた。自然とそちらの方へ視線が向く。見知った顔にホッとする。将軍の副官を務める男だった。将軍と会う時は、常に背後に立っているため顔を覚えていた。
「お待たせいたしました。将軍がお呼びですので案内いたします」
ほとんど表情が変わらず常に敬語で話すため、ショウはこの人と会話する時は将軍の時よりも緊張してしまう。将軍の話ではかなり有能であるらしく、彼なしでは軍を維持することはできないと笑っていたのを思い出す。
貴族出身なのか平民出身なのかはわからないが、彼の態度はショウに対する時とほかの隊長の時とまったく変わらない。なので、それが気に食わない隊長もいるらしいという話は聞いたことがある。
先導する副官の後をついていくと、さらに全身にグサグサと視線が刺さった。なんであんなやつが、みたいなことを言っている者もいた。こちらに聞こえるようにわざと言っているのがよくわかる。いくら使い捨てだと揶揄される突撃部隊の隊長とはいえ、身分や血筋を重視してプライドの高い彼らからしたらショウのような存在は目障りに違いない。
将軍がいる本営の中心部へ入ると、椅子に座っていた将軍がショウの姿を見て軽く片手を上げた。
「久しぶりだな、ショウ=アステール」
「お久しぶりです」
「急な呼び出しで悪かったな」
そう言って、将軍は立ち上がった。普通に向かい合っても、ショウが見上げることになるほどの大男。人間でこんなに背丈が高い者はそうそういないはずだ。
軽く頭を下げたショウに、「お前に頼みたいことがあって呼んだ」と言う。
「頼みたいこと……?」
思わず首を傾げてしまう。信頼している優秀な副官がいるのに、その人ではなく自分に頼みたいとはどんな内容なのか、まったく想像することができなかった。
ショウのそんな様子に将軍は小さくため息をついた。
「今回、戦況を左右するかもしれないほどの重要な人物が来ていてな。万が一、なにかあってはならないから、お前に護衛を頼もうと考えている。本人はいらないと言っているのだが、副官とともになんとか説得したんだ。で、向こうが出した条件は『一人だけなら許す』だった。だから、軍の中で一番腕の立つ者と考えた時にお前しか浮かばなくて、お前に頼もうと呼び出したんだ」
「……オレ?」
そんな人の護衛を? ショウは怪訝そうな声音で呟く。
将軍はショウが素性がわからない人物であることを知っているはずだ。そんなショウに重要な人物の護衛を任せたいと言っているのが不思議でならなかった。もっと素性のはっきりしている人物の方がいいのではないかと思うのだが。
「素性がわからないオレよりも、身元がしっかりとした人に任せた方がいいんじゃないですか?」
なので、ショウははっきりとそう告げる。
そしたら、将軍は肩を竦める。
「いや、お前の素性はどうでもいい」
はっきりと言い切られて驚く。本当にそう思っている声音だった。




