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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場3−4

 手合わせするのは別に構わないが、手加減ができるだろうか。もしもパティが怪我をしてしまえば、リアの怒りを買ってしまうかもしれない。

 腕を組んでうんうん考えていると、リアはショウがなにを考えているのかがわかったらしく、「言っておくが、パティはそこらへんの人間よりも手練れだ。お前は手加減する必要はない。全力で相手しなければ、お前が負けるぞ」と肩を竦める。

 確かに、パティが魔物相手に戦っているところを見たことがあるが、身体能力は亜人に匹敵するほどだった。リアの話ではパティには常に身体強化の魔法がかけられているらしい。

 パティの右耳にはイヤーカフが付けられているのだが、それは魔鉱石を加工して作られたものであるらしく、その魔鉱石には身体強化の魔法陣が組み込まれているらしく、それが常にパティに魔法をかけている状態となっているようだ。

 魔鉱石が魔力切れになりそうになるタイミングがリアにはわかるらしく、定期的に魔力を補充していると言っていた。

 なんの訓練も受けていない人間ならば、魔法で身体強化した際にその負荷に耐えられずに身体が壊れるものだが、常に身体強化の魔法を受け続けているのにけろっとしているパティは、リアの言う通りかなりの手練なのだろう。

 リアは成人していない未成年だが、そんなリアよりも確実に年下であろうパティは、一般的な同年代の女の子と比べるとその強さは雲泥の差だろう。大の男でも、パティには敵わない可能性がある。

 リアは魔法を使うには魔力も必要だがセンスも問われると言っていたが、剣士や拳闘士にだってセンスが必要になる。武器を扱うことに向いていない人は、どれだけ修行をしようが向いていない。戦場でそのような人物は腐るほど見てきた。

 ヴェアール家はパティの才能をすぐさま見抜き、小さい頃から修練を受けさせたのだろう。

「パティは一応、ヴェアール家で拳闘士の免許皆伝だ。一族内ではほかにも免許皆伝の人間はいるが、パティは史上最年少だな。教えていた先生もかなり驚いていたぞ。教えれば教えるほど、水を吸収するかのように会得していくのだからな。父もまさか私が拾った子供が、稽古を受けるようになってから四年ですべての修行を終えて免許皆伝となるとは思っていなかったようだな」

 報告を受けた時の父の驚いた顔は面白かったな、とその時のことを思い出したのか楽しそうにリアが笑う。パティも「すっごく驚いてたね」とリアと一緒に笑った。

「楽しかったな」と笑い合うそんな二人を見て、ショウは心の中でよかったと呟く。

 再会したばかりの頃、リアは父親の話をする時は悲しそうな表情ばかりしていた。父親を失った悲しみ、父親を殺した相手への恨み。そればかりを募らせていて、触れた瞬間に壊れてしまうのではないかと言う危うさを感じていたのだ。

 そんなリアが、父親の話をしているのに、その顔には笑みを浮かべているのだ。

 リアの中で父親を失った悲しみを受け入れつつある証だろうとショウは思った。父親を殺された悲しみと殺した相手への憎しみは変わらずに心の中にあるだろうが、それでも父親との思い出話を笑顔を浮かべながら話せるようになったのだろう。

 そうやって父親のことを思い出して笑っていたリアだが、パティの頭を撫でて「だが、その代わりパティは剣はからっきしだ。あまりにも拳闘士としての才能を開花させたから、あるいは、と思って剣を握らせたんだがセンスはゼロだった。剣に関しては素人である私の目から見てもわかるくらいに、パティに剣を使うことに向いてない。得物に頼り切らない戦い方のほうが向いているらしい」と言う。

 それを聞いて、パティがちょっとだけ唇を尖らせた。パティとしては、剣の才能がないことが不本意なのがよくわかる。剣に対するセンスがないとわかった瞬間に、ヴェアール家はパティに体術を徹底的に叩き込んだようだ。剣も学びたかったパティだが、才能がないと言われてしまえばそれ以上は何も言えなかったのだろう。

 リアの隣で唇を尖らせてぶすっとしているパティを見ていて、ショウは一つの疑問が浮かんだ。

「そういえば、パティって何歳なの? リアが17歳ってのは知ってるんだけど」

 リアの住むサウス=リアクターでは、法律で成人は18歳と決まっている。ショウはそれを知っているため、17歳のリアはまだ成人していないのもわかる。

 戦場で初めて出会った時、リアは13歳だった。顔つきは今よりもかなり幼かったし、身長だって今より低かった。そして、終戦を迎えた時は15歳だったはず。

 リアは自分の横を歩くパティをちらりと見て、「パティの正確な年齢はわからんのだ」と言った。

「わからない?」

「ああ」

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