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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場3−3


  ****


 こんこんこん、と規則的な音が聞こえて、ショウの意識は覚醒した。

 ぱちりと目を開けると、あまりの眩しさに目を細める。窓から眩しいほどの朝日が入ってきていて、ショウの顔に降り注いでいた。手で庇を作ってから上半身を起こして、周囲を見渡す。

「……」

 一瞬、自分がどこにいるかわからなかった。だが、すぐに宿屋に泊まったことを思い出す。

 少しぼぅっとしてからベッドから降りようと床に足をついた瞬間、もう一度、こんこんこん、と音がした。それはドアの方から聞こえたので、さっき聞こえたのはノックか、と気づいて「はい!」と声を上げる。

 なんか同じようなことが昨日の夜にもあった気がするなぁ。そう思ったこところで、昨日の夜、「朝食を食べる時に迎えに来る」と言われたのを思い出した。なので、ノックをしているのはリアで間違いないだろう。大きな魔力の塊がドアの前にある気配もする。

 慌ててドアを開けると、そこには予想通りに燃えるような赤い髪の少女が立っていた。後ろには金髪碧眼の女の子がいる。赤い二つの瞳がまっすぐに見上げてきた。

 リアは少し呆れたような表情で、「ずいぶんとぐっすり眠ったようだな」と言ってきた。嫌味に聞こえないのは、その声音に安心するような空気を感じたからだ。

「戦場では眠りが浅い様子だったことが気になっていたが、普段のお前の眠りは深いらしい」

 そう言いながら部屋の中に入ってくる。

 道を譲ったショウはパティも中に入ったのを確認してからドアを閉めた。

 初めてショウが泊まっている部屋に入ったパティは、物珍しそうにきょろきょろとしている。

「朝ごはんか?」

 その問いかけに、リアはこくりと頷く。

「そうだ。私はもう少し後でもいいんじゃないかと思ったんだが……」

「ーーお腹すいた!」

 こちらを見て、びしっと手を上げたパティが勢いよく口を開く。付き合いが短いショウから見ても、相当お腹が空いているんだろうと察することができた。

 リアはそんな義妹に視線を送って、「ずっとこの調子なんだ」と肩を竦めながらため息をついた。呆れているというよりも諦めているような感じがする。

 けれど、なるほど、と納得してしまった。太陽の高さからして朝食にはまだ早い時間帯のような気がしないでもないが、パティから「お腹すいた」攻撃を朝早くから受け続けてしまったのだろう。結局、リアが折れてショウを迎えに来た、ということらしい。

「さっきすれ違った従業員に訊いてみると、この時間でも開いている露店はあるらしいからな」

 しっかりと露店が開いているかも調べてからここにきたようだ。開いていないようだったら、それを理由に納得させるつもりでいたようだが、予想に反して開いている店もあるということでショウを迎えに行こうとなったらしい。

「わかった」

「とりあえず、私たちも部屋に戻って必要なものを取ってくる。その間にショウは着替えてくれ。また結界魔法をかけるから荷物は置きっぱなしで構わない。長剣を持っていくか持っていかないかの判断は任せる」

 そう言って、リアはパティを連れて部屋を出て行った。

 その後、リュックから取り出した服に着替えてから廊下に出ると、ちょうど二人がこちらに向かって歩いてきていた。

 合流してから部屋に結界魔法をかけてもらい、三人は宿屋を出た。

 やっと朝食にありつけるということに上機嫌のパティを連れて、昨日歩いた露店がたくさん出ている大通りを目指す。

「ショウは今日も長剣を持ってかないの?」

 手ぶらであるショウの姿を不思議に思ったのだろう。きょとんとした目で見てくるパティに、ショウは苦笑を浮かべて「まぁ……」と言葉を濁す。

 今のリアは杖を持っているし、パティは腰にトンファーを下げている。自分の得物は常に持ち歩くのが当たり前という感覚のパティにとって、二日連続で長剣を部屋に置いているショウの行動が不思議でならないのだろう。

 言葉に困っている様子のショウを見ていたリアが、パティに視線を向ける。

「ショウは素手でも充分に強いからな。そんじょそこらの人間じゃ手も足も出ない。長剣を持っていれば手加減ができないから、持っていなくてちょうどいいんだ」

 リアの言葉に、パティの目がきらりと輝いた。なにか楽しいことを見つけた子供のような表情になる。

「ショウってそんなに強いの?」

 きらきらと光る視線を向けられたショウは本格的に言葉に困り、助けを求めるようにリアを見る。それを受けたリアは、小さくため息をついてパティに視線を向ける。

「まぁ、二つの戦場の最前線で戦ったにも関わらず無傷で生き残ったのは、私が知っている限りショウくらいなものだ。《ヴェスラ会戦》と《フレスト対戦》の二つで大きな功績を挙げたのも事実だからな。最前線に送られる突撃部隊の中で、今でも伝説と語り継がれているくらいの最強の隊長様だ」

 予想以上の言葉に、ショウはおろおろとし始める。パティの目がさらに輝いた気がした。

「や……、やめてよ、リア。生き残れたのはたまたまだよ」

 それを聞いて、リアはショウを見てにやりと笑う。絶対にこの状況を面白がっている雰囲気が伝わってくる。

「たまたまなものか。戦場の最前線は運だけで生き残れるほど甘い場所ではないのは子供でも知っている。生き残れたのはお前の実力に間違いない」

 確かに、リアの言う通りあの場所は運だけで生き残れるような場所ではない。それは前線を経験したショウですらわかっている。それに、ショウは突撃部隊が結成された初期の頃から所属していたが、戦争が終結した際、初期メンバーの中で生き残っていたのはショウだけだった。ほかのみんなは全員死んだ。

「ショウ、今度、手合わせしようよ」

 キラキラとした目をパティが向けてきて、ショウはうっと言葉を詰まらせる。

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