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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場1-1

新しい話が始まります。

今回はプロット通りにいけば、少し長めになる予定です。

よろしくお願いします。

  1.


 奇跡的に魔物に遭遇することなく森を抜けたリアたちは、とある街にたどり着いた。前に滞在した街よりかは小さい規模だが、大きな街道の途中にある街なので人の数は多く活気があった。

 周りの人より頭一個分以上身長が高いショウと物珍しそうに辺りをきょろきょろするパティ、かなり人目を引く色をしているリアの三人組は、街に入った途端に目立ちまくっていた。すれ違う人は足を止めて振り返り、大通りの両側にある露天の店主は客そっちのけでこちらを凝視し、地元民と思われる女性たちは三人を見ながらこそこそと話をしている。

 リアは慣れているらしく気にしている様子はない。パティも相手に敵意がない限りは気にならないようだ。しかし、ショウはまだ慣れていないため自分に人の目が向けられると気になってしまう。いつか自分を亜人だと見抜く者が現れるのではないかと思うと不安でたまらない。リアに迷惑をかけるのだけは避けたかった。

 少しそわそわしながら歩いていると、先頭を歩いていたリアが足を止めて振り返ってくる。

「どれくらい滞在するかは決めていないが、とりあえずは宿の確保だな。大きな市が開かれているわけじゃないから、簡単に部屋は取れると思うが……」

「宿を探すか?」

 ショウの問いかけに、リアはこくりと頷く。

「そうだな。まずは宿を探して荷物を置いてから、なにか食べるか。二人とも腹が減っているだろう?」

 リアにそう言われた瞬間、パティのお腹が鳴った。人混みの喧騒の中でも、亜人であるショウの耳にはその音がばっちりと聞こえた。それにパティは気づいたのだろう。自分のお腹に手を当て、ショウを「なにも言うな」という雰囲気で睨みつけてくる。

 睨まれたショウは苦笑いをしながら頷いてリアにはなにも告げずにいたのだが、二人のそのやり取りだけで赤髪の少女はなにがあったかを理解したようだ。

「パティのためにも、早く宿を探さないといけないな」

 そう言いながらリアはパティの頭をぽんぽんと叩き、小さい少女は不服そうに唇を尖らせた。子供扱いされたのが不満らしい。急がなくても大丈夫だと言いたいらしいが、いかんせん身体が食欲に対して正直すぎた。弁解しても意味がないと悟ったのだろう。なにかを言いかけて口を開くが、結局はなにも言わずに口を閉ざした。

 宿を探すために街の中心部を目指して歩き始めるが、あちこちからいい香りがしてきて空腹がくすぐられた。パティもショウも、食べ物を扱っているたくさんの露店に目が釘付けになる。今まで立ち寄った街にはそれぞれ特産品を扱った露店が多く、食欲旺盛なショウとパティはそれらを制覇したい気持ちに駆られてしまう。

 どれくらい滞在するかは決まっていないが、食べられるだけ食べられたらいいな、と思ってパティを見ると、今にもよだれが垂れそうなくらい露天の食べ物を見つめていた。

 先頭を歩くリアはその様子に小さく笑ってから、近くにいた人に声をかけ、宿の場所を訊ねた。声をかけられた人はリアを見て大きく目を瞠った後、緊張感を滲ませてリアに宿屋の情報を提供した。

 リアほどの名門貴族の人間であれば高級宿を希望するのが当たり前なのだが、リアは普通の旅人が使うような平民向けの宿を使う。人の目を気にする見栄でできているような貴族とは違い、リアは気楽さを選択した結果だった。

 一度、不思議に思ってリアに訊ねた時、「高級宿は肩に力が入ってリラックスできん。支配人の視線がわずらわしい」と言っていた。支配人はそれが仕事なのだが、リアはそれがあまり好きではないらしい。自分のことは自分でするから放っておいてくれ、とのことで、平民向けの宿を使うらしい。こちらは基本的にほったらかしにしてくれるため気が楽だそうだ。

 名門貴族の次期当主でありながら、リアはかなりの庶民感覚の持ち主で思わず笑ってしまった。だが、ショウはそれがありがたかった。高級宿に宿泊なんて絶対に気を張ってしまって眠れないだろう。そこの感覚はリアと一緒のようだ。

 地元民に教えてもらったいくつかの宿屋の中から、街の中心の噴水がある広場に面した宿屋を選んだリアは、道を教えてくれた人に礼を言いながら歩き始めた。

 初めての街であるはずなのに、一度道を聞いただけで知っているかのようにスイスイと歩く。パティとショウはその後に続くだけだ。

 そして、しばらくして街の中心部にたどり着いた。噴水がある広場を東の方へ円の縁をなぞるように少し歩いてから目的の宿屋に着いた。サウス=リアクターで宿屋が掲げる共通のマークが焼印されている木札がドアに下がっており、この建物が間違いなく宿屋であることがわかる。

 リアがドアを開けるとベルの音がし、客の来訪がわかった店主がこちらへと視線を向ける。まずはリアの姿に一瞬だけぎょっとする。その後に背の高いショウを見てポカンと口を開けた。しかし、そこは商売人らしくすぐに笑顔になるが、ショウにはその笑顔が引き攣っているようにしか見えなかった。

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