セディル家のお家騒動の顛末について4-4
店主から紙袋を受け取ったショウは、背負っていたリュックを下ろして中に詰めていく。大きめのリュックなのだがそんなに荷物を入れていないので、渡された乾パンはなんなく中に入れることができた。
その間にリアは店主へ金を払い、ショウがリュックを背負い直したのを確認してから、店主へ礼を言った。
「ありがとよ。またこの街に来た時は寄ってくれ。その時に、乾パンの味を聞かせてくれ」
「わかりました」
ショウが言葉を返すと、店主はトングをかちんかちんと鳴らしてニカッと笑う。
かなり接客に慣れている。この仕事も長いのかもしれない。
味のついている乾パンを食べるのが楽しみだな、と思って、歩き出したリアの後に続く。
市場が終わる時間が近づいているせいか、最初の時よりも人の数は少なくなっていた。それでもショウの感覚ではまだまだ人の数は多い。
通常であれば、夕方になればすぐにでも宿を取って休むのだが、リアはずっと言っている通りこのまま街を出るつもりでいるようだ。
どんどん市場から離れていく。
喧騒が遠ざかっていき、人の姿がまばらになったところで繋いでいた手を離す。
三人で横並びに歩きながら街の端を目指して歩き続ける。
「この街は夜になれば城門が閉まってしまうからな。今の時間であれば急がなくても間に合うとは思うが、早くこの街を出るに越したことはない」
一刻も早くこの街を出たくてたまらないのがよく伝わってくる。
そう言ったリアは、今のところ追っ手もいないことで安心しているようだ。無事にこの街を通り過ぎることができると思っているらしい。
ショウは亜人の勘でなんとなく嫌な予感がするのだが、はっきりとなにに対して感じているのかがわからないため、リアにはなにも言えずにいた。
でもなんとなくだが、無事にこの街を抜けることはできないような気がする。
この予感が杞憂で終わればいいのだが、と思いながらリアの後に続いていると、石畳の大通りの向こう側に大きな城門が見えてきた。
魔物から民を守るためなのかこの街は大きな塀に囲まれており、東西南北の位置に関所が設けられていた。そこで街に入ってくる者、出ていく者を管理しているおり、その関所が夜になると扉を閉めるため、一切の出入りができなくなってしまうようだ。
その前に、リアはこの街を出たいらしい。
街に入るのに税金を払うこともあるらしいのだが、この街は入るのにも出るのにも税金は必要ないらしい。その代わり、宝石などの高価な品物を持ち込んだ場合にはそれなりの税金がかかるようだ。だが、今のショウたちは高価なものなどは持っていないために税金は支払わずに済んでいる。
北門と呼ばれる関所に向かうリアは、無事にこの街を抜けられると確信しているようで足取りが軽い。
北門を守っている門兵がリアに気づいた頭を下げて道を開けた。
「……?」
その反応をショウは不思議に思ったのだが、リアは特に気には留めてないようだ。
「よし、街を抜けるぞ」
そう言って、リアが珍しく満面の笑みで振り返ってきた。相当、無事に街を抜けられるのが嬉しいらしい。
軽い足取りで城門に向かっている。
ショウとしては、ずっと感じていた嫌な予感が強くなったような気がして、なにも起こりませんように、と祈りながらリアの後ろ姿を見やる。
そして、それはリアの身体が北門を潜る直前のことだった。
「ーーやぁ」
声がした。
「……ッ!」
びくりと肩を震わせたリアが足を止める。なので、後ろに続くパティもショウも足を止めざるをえなかった。
ゆっくりと声がした方向を振り返ったリアの視線を追うと、そこには夜には閉ざされる扉に背中を預けてこちらに向かって手を振っている青年の姿があった。
「……あ」
その姿をしっかりと確認したリアが、絶望を感じさせる声を小さく漏らす。
こちらに向かって近づいてくる青年は、固まっているリアの目の前に立った。
「久しぶりだね」




