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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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セディル家のお家騒動の顛末について2-11

 わけがわからないショウが名前を呼ぶが、リアは言葉を止めない。

「だから、戦場で出会ったお前が『生きて帰れたら、恋人と結婚したい』と言った時に、羨ましいな、と思ったよ。正直なことを言うとな。私は貴族の家の人間として生まれたが故に、結婚には家柄と打算が多くの割合を占めてくる。お前のように、好きだから結婚する、一緒にいたいから結婚する、という感情優先の恋愛が眩しくてたまらなかった。父と母は好き合った末の結婚だったらしいが、私にはそれが難しいことだと小さい頃には理解してしまったからな」

 あの時にリアがそんな風に思っていたなんて知らなかった。気づきもしなかった。

 確かに、リアは貴族の娘だし、ヴェアール家の次期当主でもある。そのリアの婚姻に関しては、多くの打算も思惑もあるのは間違いない。リアが望んだ相手との婚姻は難しいだろうと、言われて初めて気づいた。気付かされてしまったと言った方がいいかもしれない。

 でも、なんでいきなりこんな話をしてきたんだ?

 不思議に思ってリアの横顔を見つめていると、赤い瞳がじろりとこちらを睨んできた。

「気になるのだろう? 次の街にいる、私が会いたくない人間のことが」

 図星だったので、素直にこくりと頷く。

「まぁ、そうだけど……」

 それとこの話のどこに関連性があるのだろうかと思っていたら、脳裏にある光景が思い浮かんだ。

「……あ」

 思い出した。

 リアと再会して間もない時に、リアが婚約者の話をしてくれたことがあった。あの時、リアは婚約者のことが苦手だと言っていた。いけすかない奴だと。

 ーーもしかして、次の街にいるのはリアの婚約者……?

 そして、その人に会いたくないからここまでしているのか?

 そこまでわかると、今までのリアの行動のすべてに納得がいく。

 確かに、あの夜に婚約者のことを話してくれたリアは、自分の婚約には多くの思惑と打算があるのだと言っていた。リアよりも高い魔力を持つ子供が生まれることが見込まれて結ばれた婚約だと言っていた。

 そして、その選ばれた婚約者が苦手で、特に好意的な感情はないのだとも言っていた気がする。それでも家が決めたことなので受け入れているのだとも言っていた。

 ーー確かに、リアの立場からするとオレのことをそう思ってもしかたないかもな……

 ショウはルトを世界で唯一の人に決めた。一緒になるのは、この人以外いないと思っていたのも事実。

 亜人にとって、それは絶対なる感情だ。一人を決めてしまえば、ほかに靡くことは絶対にない。ショウ自身もそう言い切れるくらいに、ルトのことを愛していた。だからこそ、奴を殺して復讐するのだと心に決めたのだ。

 恋人がいる話を戦場でリアにも軽くしたこともあるが、思い返してみればその時のリアは複雑そうな表情をしていた気がする。恋人のことを話すのに夢中で、リアのそんな表情を気にも止めていなかった。

 リアは貴族の娘であるが故に、自分で結婚相手を選べない。自由に選べる立場であるショウを羨むような、そんな気持ちがあってもおかしくはない。

 けれど、同時にリアは自分で自分を納得させているはずだ。自分の結婚は自分のためではなく、家のためにするのだと。それは、貴族の娘であれば当然のことだと聞いている。貴族社会では、政略結婚なんて珍しいことではない。

 ショウはそれを受け入れることは難しいが、小さい頃からその環境で生きてきたリアならば、小さい頃から理解していて当然だ。

 ーーそれをリアは受け入れてるんだ……

 家同士が決めたことなのだからと。それは貴族の家に生まれた人間としては当然のことで、その感覚が理解できないショウとしてはなんとも言えない悲しい気持ちになった。

 それでも苦手な相手であるため、結婚するまではなるべく会いたくないということなのだろう。結婚すれば嫌でも毎日顔を合わせることになる。それまでは会わずにいたいというのが本音らしい。

 ーーだったら、なるべく会わなくて済むように協力しないといけないよなぁ……

 ショウだって、会いたくない相手には会いたくないと思う。それは生き物として同然の行動だ。リアだって貴族の娘である前に人間なのだから、会いたくない相手には会いたくないと思って当然なのだ。

 そう自分を納得させたショウは、「それなら、さっさと街を通り過ぎるに限るな」と言うと、リアは少しだけ赤い目を見開き、それから安堵したようなため息を共に小さく笑った。


「……お前は物分かりがよくて助かる」

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