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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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セディル家のお家騒動の顛末について2-8

「変わってるよー」

 答えたのはパティだ。やはり、パティとショウで見えているリアの姿は違うのだろう。

 赤色じゃないリアも見てみたい気もする。この時ばかりは、魔法耐性の高い自分の体質を恨めしく思ってしまった。

「では、もう一度かけるぞ」

 そう言ってリアが杖で地面を軽く叩くと、三人の足元に魔法陣が現れる。それは一瞬だけ明るく発光し、すぐに消えた。

 ショウの目にはなにも変わっていないように見えるのだが、リアが魔法を失敗したとは思えないし、認識阻害の魔法は無事に成功しているはずだ。

「認識阻害の魔法は存在を完全に感知されてしまえば、見破った者に対しては一切の効果を失うからな。だから、なるべく人とは目を合わせないようにして、存在を悟られないようにしろ。道で人にぶつかったりしたら、高確率でその人には存在を感知されるからな」

「ボクはそれ大丈夫だよ」

「オレも、一応は気配を消すのは得意だな。人にぶつからないようにするのも大丈夫だと思う」

「……私は気配を消すとかいう芸当はできないから、人混みではなるべく人にぶつからないように気をつけよう。声を出しても存在を感知される可能性が高くなるから、なるべく口を開かないように」

 話し声を聞かれると存在を認知される可能性が高いということらしい。それを聞いて、ショウも人混みに入った時は喋らないようにしようと心に決める。

「では、行くぞ。明日の夕方には新しい街へ着く予定だ。三時間ほどは進めるだけ進んで、一旦朝まで休もう。その後はほかの旅人に紛れて街道を進むつもりでいる」

「はーい」

「わかった」

 とりあえず、ここで拘束している男たちは警邏に引き渡すということらしいので、夜のうちに火が消えないように薪を追加し、三人はこの場から離れた。

 ショウが小さい魔物と遭遇したが、それ以上の大きさの魔物の気配はまったく感じられないということで、リアが大丈夫だろうと判断した結果だ。あの男たちは、目覚めたら警邏に囲まれているかもしれない。そのあとは、罪を償うための人生を送るのだろう。

 その後は会話は最低限にして森の中を進む。

 探査の魔法をこまめに発動させたリアが追っ手がいないことを確認してから、三時間後に認識阻害の魔法を解除して、森の中をしばらく歩いて拓けた場所を見つけた。

「とりあえず、朝まではここで休むことにしよう」

 リアとパティが手慣れた様子でテントを作り始め、その間にショウは周辺で枯れ枝を集める。

 ショウが集めた枯れ枝に魔法で火をつけたリアだが、「疲れたからもう休む」と言って、さっさとテントの中に入ってしまった。

 ショウとパティは身体が資本だから体力がある方だが、魔法使いであるリアはそれほど身体を鍛えているわけではないだろうし、疲れて当然だろう。それに、今回はほとんど寝ていない。

 テントに入っていったリアを見送ったショウは、残ったパティに「パティも寝るか?」と訊ねる。

「うん」

 欠伸をしながら返事をしたパティは、リアの後を追うようにテントに入っていく。

 残されたショウは、パチパチと爆ぜる焚き火を見ながら小さく息を吐いた。

 リアは詳しい話をしてくれないが、どうやら監視してくる相手に心当たりがあるらしい。パティも同じく心当たりがあるようで、二人の間だけで会話が通じ合っている。

 ーーそのうち話してくれるかなぁ……

 リアとパティだけわかっていて自分がなにも知らないのは、なんとなく疎外感のようなものを感じてしまう。一から十まですべてを教えてくれとは言わないが、今回、なにから逃げ回っているのかは教えて欲しいところだ。

 ーーまぁ、リアのことだからそのうち教えてくれるかもな……

 呆れたりすることはあるものの、リアは面倒くさがることなくちゃんと教えてくれるから、面倒見がいいタイプではあると思う。だが、たまに相手がわかっていないというのに気づかずに話を進めてしまうこともある。その時は後から気づいて教えてくれたりするので、ショウはそれを待つつもりでいた。が、今回は自分から訊ねてみようかと考えてしまう。

 相手は会いたくない人間のようだし、あまり口にしたくないのかもしれない。こっちから聞かないと、ずっと教えてくれない可能性もある。

 ショウにだって少なからずそういう相手はいるし、リアにいてもおかしくはないだろう。

 そう思って、ショウは枯れ枝が爆ぜる音を聞きながら、膝を抱えた状態で目を閉じた。

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