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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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セディル家のお家騒動の顛末について2-7

「今は、影を使って暗殺を行ないそれが露見てしまった場合は、良くて国外追放、悪くて処刑となっている。それも、一族で全責任を取らなければならないほどの重い罪としてだ。国外追放の場合は爵位の剥奪、もしくは別の貴族の家から後継を一人選んで爵位を継がせる、ということもある」

「処刑の場合は?」

「そのまま爵位は廃位となる。完全に家が断絶することになる。それは家名を重んじる貴族としては一番避けたい罰でもある。なので、一応その法律ができてからは影による暗殺は行われていない、という話だが実際はわからんな。もしかしたら、周りに気づかれていないだけで行われている可能性もないとは言えん。ちなみに、ヴェアール家は昔から影による暗殺はしていないぞ」

 ヴェアール家は昔から強い権力を持っていたらしいし、狙われることはあっても狙う必要はなかったのかもしれないな、と思った。

 とりあえず、今は影は存在しているものの、暗殺などの物騒なことは行われていないようでホッとした。

 そこで、ふと疑問が過ぎる。

「貴族の人たちって、その影をどうやって手に入れるの?」

 手に入れる、という言葉が影の人たちを物みたいに扱っているようで嫌だな、と思ってしまったが、それ以外の言葉が思いつかなかった。

 リアは不愉快に思うだろうかと窺うような視線を向けると、相手は特に気にしていない様子だった。それに再びホッとする。

「元々は領地で親のいない孤児を引き取って訓練することが多かったらしいが、今ではそれぞれの領地に影となる一族が存在していて、その家に生まれた子供は代々影としての教育を受ける。その一族に、見どころのある孤児を引き取らせて訓練を受けさせることもあるな。なので、領地内に存在する孤児院に影を統率している人が赴いて、子供たちの適性を確認することもある。もちろん、ヴェアール家も複数の影の一族を持っていて、その家の人間はヴェアール家に影として代々仕えてくれている。その一族が孤児院から子供を引き取る際には、本人の意思を尊重するようにと伝えているな。子供とはいえ、自分の人生を大人に勝手に決められるのはかわいそうだから、ヴェアール家では子供の意志の確認を当主自ら行うことが多い。その上で、影の一族に引き取らせているぞ。もちろん、断る子供も一定数いる。その子には、成人したら一般の仕事を斡旋しているな」

「へぇ、選ばせてくれるんだ。それはありがたいかも」

「子供とはいえ、自分の人生を自分で選ぶ権利はあるからな。大人の都合で振り回すわけにはいかん」

「断っても仕事を斡旋してくれるとか、ものすごく手厚い気がする」

「当たり前だ。ヴェアールの領内で子供に仕事を斡旋するのは、昔から行われていることだ。子供は宝だからな。次の世代を担う子供を蔑ろにすることは許されない」

 それを平然とやってのけるのが、ヴェアール家ということなのだろう。

 なんとなく、ほかの領地よりもヴェアール領の方が評判がいいのがわかってくる。

「でも、影の人たちって普段は姿を隠してるんだよね?」

「ボクは会ったことあるよ」

 はーい、とパティが手を挙げる。

「パティも養子とは言えヴェアール家の一員だからな。影を一人つけている。だが、今回の旅には同行していない」

「リアにも影がいるの?」

 養子のパティにいるということは、次期当主であるリアにもいるはずだ。そう思って訊ねると、リアは再びこくりと頷く。

「私はヴェアール家の次期当主として、複数人の影を持っていた。パティ同様、今回の旅には連れてきていない。領地で兄たちのサポートをお願いしている」

「で、外にいた気配はどこかの貴族の影ってこと?」

「そういうことだ。どこの家の影なのかも心当たりがある」

 そこまで言って、リアはげんなりとした表情になる。忘れかけていたことを思い出したらしい。

「私たちを監視していた影は認識阻害の魔法の副作用で存在が希薄になっていたようだが、気配に敏感なパティはもちろんショウにはバレバレだったようだな。もしかしたら、認識阻害の魔法をかけた魔法使いの腕前が悪かったのかもしれん」

「わかりやすかったよ」

「まぁ、確かに存在感は薄かった気がするけど……」

 パティはしっかりと気配を察知していたようだが、ショウはなんとなく存在を感じるという程度だった。これが、認識阻害の魔法の副作用ということなのだろう。

「今からもう一度認識阻害の魔法を使うが、せいぜい三時間が限界だという話はしたな? その三時間でさらに先へ進み、私たちを感z年に見失ってもらう。そうすれば、私に幻影魔法をかけるだけで済むはずだ」

「リアが一番目立つもんね」

「幸いなことに、ショウもある程度目立つが向こうに顔を知られていないからな。パティは怪しいところだが、人混みに入ってしまえば目立たないだろう。だから、今のところは私だけが隠れればいいと判断した」

 そういうリアを見たショウは、「本当にリアの見た目って変わってるんだよね?」と念の為に訊ねる。

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