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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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セディル家のお家騒動の顛末について2-5

「三人目」

 そう言って拳を振り上げたパティに、ショウが口を挟む。

「ーーその前に、そいつの懐にはなにか入っているみたいだから確認した方がいいんじゃないか?」

 ショウの言葉を聞いたパティがきょとんとした表情でこちらを見ていて、次にリアに視線を送る。どうやら、ショウの言葉に対しての許可を求めているようだ。

 リアはじぃっと男の懐を見つめ、なにかがあることに気づいたらしい。パティに視線を向けて、「確認してみてくれ」と許可を出した。

 了承の答えをもらったパティが、うつ伏せに倒れていた男を仰向けにする。その間にも男は許しを乞うような言葉を叫んでいるが、パティはまったく気にしていない様子。耳に入っているかどうかも怪しい。彼女にとって、大好きな姉に手を出そうとしたこと自体が万死に値するのだろう。

 抵抗できない男の懐を探ると、なにかを見つけたらしい。男の懐から引き抜いたパティの手には、手のひらサイズのなにかが握られていた。

 リアとショウが近づいて、それを確認するように上から覗き込む。

 パティが手を広げると、そこには黒い鉱石があった。

「……?」

 こんなものを見たことがないショウが首を傾げると、リアが「ほう、珍しいな」と言ったので、どうやらリアは知っているらしい。

「そうだねー」

 そう答えると言うことは、パティもこの黒い鉱石の正体を知っているのだろう。この場で知らないのはショウだけであるらしい。

「なにこれ?」

 指をさしながらリアに視線を向けると、リアは黒い鉱石に視線を向けたまま、「黒鉱石と呼ばれるものだ」と答えた。

「くろこうせき?」

 魔鉱石と名前が似ている気がするが、リアの反応から同じものではないらしい。第一、魔鉱石は真っ赤であるのが特徴の一つだ。この鉱石は夜の闇のように真っ黒で、魔鉱石とは似ていない。

 ショウが知らないとわかったリアが説明してくれた。

「黒鉱石は魔鉱石になれなかった鉱石のことを指す。地中で鉱石が作られる段階で、なにかしらのエラーが起きて作られるのではないかと言われているが、詳しいことはまだ研究段階だ。黒鉱石は魔鉱石のように魔力を貯めるようなことは一切できず、魔鉱石よりも数は圧倒的に少ないから稀少であるのは間違いない。使い道は主に装飾品だな。貴族の間では黒い宝石には大金が動くから、黒鉱石はその混じり気のないくろさからも人気があってかなりの金額で取引されている。これを一介の盗賊が金で手に入れたとは思えないな」

「「……」」

 リアのその言葉に、ずっと騒いでいた残された二人が口を閉ざした。

 その二人に、リアは目を向ける。

「なるほど。宝石商かなにかを襲って手に入れたということだな?」

「「……」」

 リアの問いかけに、二人は答えない。だが、その沈黙は肯定しているのと同じだ。

「盗賊なんてやめて普通の仕事をしていれば、普通の人生を送ることができたはずなんだがな。戦争が終わった今、そういう人生を送ることができるようになったはずだが……」

 そう言いながら、リアが指先で小さな円を描く。そこに小さな丸い球体が生まれ、空高く飛び上がってどこかに行ってしまった。

 なにをしていたのかがわからないショウが球体が消えた空を見上げていると、「警邏を呼んだだけだ」とリアが小さく言った。

「このまま放置するわけにもいかないからな。解放してもほかの旅人を襲うだろうし、新たな被害者が出る前に警邏に来てもらって捕まえてもらうのが一番だ」

「なるほど」

 リアの言葉を聞いて、二人の男がなんとか解放してもらおうと頼み込んでいるが、リアは一切耳を貸さない。

 それどころかーーーー

「パティ」

 短く義妹の名前を呼び、視線を向ける。その目がなにを訴えているのかを理解したパティは、転がっている男たちに近づき、その腹部に容赦ない打撃を叩き込んだ。

 一気に静かになり、パティが手に持っていたトンファーをベルトに戻す。それを見て、ショウも持っていた長剣を背中に戻した。

「とりあえず、これだけ騒げば『影』に見つかってしまう可能性がある。今のうちに移動しておこう。念のためにもう一度、認識阻害の魔法をかけておく」

「こそこそしなくても、ずっと認識阻害の魔法をかけておけばいいんじゃないの?」

 なぜそうしないのかがわからなくて、ショウがそう訊ねるとリアが「そうしたいのは山々なのだが……」とため息と共に言う。

「認識阻害の魔法は便利ではあるのだが、副作用があるから常に展開するわけにはいかないのだ」

「副作用?」

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