表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
122/130

信頼と裏切りの戦場17−1

  17.


「リア様、ショウ様。色々とありがとうございました」

 ローゼムが作った薬を受け取り、正規の料金を支払ったリアたちに対して彼はそう言って頭を下げた。

 しばらくして頭を上げた彼の顔を見て、やはり似ているな、とリアは思った。

 纏っている雰囲気はまったく違うのだが、顔つきはレンゼムにそっくりだ。まるで、レンゼムがその姿のまま生まれ変わってきたかのような、そんな気さえしてしまうほど。

 でも、レンゼムが死んだのはこの目で見ているし、その遺体を焼いたのもリアだった。魔法で作られた炎で遺体を焼くのは、この世界では鎮魂を意味する。一般人は土葬することがほとんどなのだが、亡くなった人の魂が無事に冥層界に辿り着けることを祈る時、人々は魔法使いに鎮魂の意味を込めてその遺体を焼いてもらう。魔法でできた炎が道標となって、その人の魂が迷うことなく冥層界に昇ることができると信じられているからだ。

 だから、リアはレンゼムの魂が冥層界に迷わずに逝けることを願って、その身体を魔法の炎で焼いた。だからこそ、レンゼムは確実にこの世にいないと断言ができる。

 それはわかっているけれど、それでもローゼムを見ているとレンゼムは本当は生きていたのでは、と思ってしまう。

「リア様……?」

 不思議そうに自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、リアはハッと我に返った。

 きょとんとした様子のローゼムに、「なんでもない」と答える。

 自分がレンゼムの立場であれば、きっと家族を守るために同じことをしただろうから、レンゼムを責める気にはなれなかった。

 レンゼムにも守りたいものがあって、リアにも守りたいものがあった。その中で、彼は最善の手を選んだだけだ。リアを手にかけることもせず、それでいて大事な弟を守れる方法を。そのために、ショウが利用された。

 利用された本人であるショウはレンゼムのことを責めている様子もないから、リアがこれ以上のことを言う必要はないだろう。

 でも、どうしてもローゼムの顔を見ているとレンゼムのことを思い出し、訊ねてしまいたくなる。


 ーー『後悔はしていないか?』


 彼なら笑って「していない」と答えそうな気もするが、それでも一度でもレンゼムと言葉を交わせるなら、そう聞いてみたかった。

 そして、自分のことを憎んではいなかったか、とも聞いてみたい。今のレンゼムなら、正直に答えてくれそうな気がする。

 リアを見ていたローゼムは、彼女の表情になにかを感じ取ったのか、にこりと笑った。その笑い方は、レンゼムとは似ていない。ローゼムは控えめに笑うが、レンゼムは豪快に笑う人だった。

「兄はきっと満足していると思います。最期に、リア様やショウ様のような方と出会えて」

「……そう言ってもらえると助かるよ」

 ショウが苦笑しながら答える。その顔は、ここを訪れる前に悩んでいた時の暗い表情とは違い、晴れやかな顔になっていた。ショウ自身も、ずっと黙っていたことを話すことができてスッキリしたのだろう。

 レンゼムのことに関しては、ショウが一人で抱えるにしては重かったはずだ。将軍も副官もグルだったようだし、今後、会うようなことがあれば聞いてみるとしよう。

「薬の注文だけではなく、店中の魔鉱石の魔力補充もしていただき、とても助かりました」

 薬は調合する薬草の稀少さ、調合の複雑さなどで値段がかなり変動するものなのだが、それでも戦争が終わって数年しか経っていない今では、庶民にとっては少し高価な代物だ。けれど、高価であっても需要はどこでも必ずあるために資格を持った薬師は重宝される。

 リアが注文したのはごくごくありふれた薬だったのだが、それでもヴェアール家の次期当主から薬の注文を受けたという箔はつくだろう。研究を続けていくにしても、その事実があれば研究費用の助成の審査で有利に働くことがあるかもしれない。

 もしも、ローゼムがこの土地で薬師を続けていくのであれば、その事実を知った客が足を運ぶようになるはずだ。リアもそれがわかった上で、欲しい薬があったので注文をしたということらしい。

 ついでに、店の明かり用の魔鉱石の魔力残量が少ないことに気づいたリアが魔力を補充しようと申し出た。ローゼムはありがたくその申し出を受け、リアがいくつかの魔鉱石に魔力を補充した。

 鈍い色をしていた赤い魔鉱石は、リアの魔力が補充されると中心部がキラキラと輝き始めた。これは、リアの杖についている魔鉱石と同じ現象だった。リアの魔鉱石も、魔法を使い際に魔力を流し込むと中心部が赤く輝く。

 リアが魔鉱石に魔力を込める姿を見ていたショウは、その手の上で赤い石の中で星空が閉じ込められているような光景に、言葉を失って思わず見入ってしまう。

 そして、一つの疑問が浮かんだ。

「魔鉱石って珍しいんじゃないの?」

 店の明かり用だと言っていたが、珍しいから盗まれたりしないんだろうか。前にリアが、魔鉱石は珍しいものだ、と言っていたような気がするのだが。そんな疑問からの言葉に、リアは「これは言い方は悪いが質の悪い魔鉱石だからな」と答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ