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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場15−3

「……あの時の兄が手にしていたのは、魔鉱石で間違いないんですよね?」

 ローゼムの確認するような問いかけに、リアはこくりと首を縦に振った。

「ああ。それは私が確認した。レンゼムが私に投げつけようとしていたのは、間違いなく魔鉱石だった。それには爆発の魔法が組み込まれていて、強い衝撃を感知すると大きな爆発を起こす仕組みになっていたようだ。もしそうなっていたら、私だけではなくレンゼムやショウもただでは済まなかっただろう。規模的に、サウス=リアクターの本営は確実に爆発に巻き込まれていた可能性が高い。周辺に待機していた兵士たちにも被害が及んだだろう。そうすれば、サウス=リアクター軍は指揮系統を失ったはずだ。ノース=カイマートはそれを合図に攻め込むつもりでいたらしい。レンゼムの死後、捕虜として捕らえた彼らが、尋問の末にそう証言したと報告を受けている」

「……そうですか」

 あの魔鉱石に組み込まれていた魔法は、かなり強いものだった。敵軍の魔法使いがありったけの魔力を使って魔法陣を組み込んだのだろう。あまりの危険性に気づいたリアが、将軍の許可を得てすぐに解除した。

 組み込まれた魔法を解除するには、同じだけの反属性の魔法をぶつけることで可能となる。ただし、それには繊細な魔力操作が必要となり、少しでも威力が強かったり弱かったりして調整をミスすると解除が失敗して、その場で二つの魔法が膨張しあってさらに大きな爆発を起こしてしまう。

 なので、ほとんどの魔法使いが魔法の解除をしたがらない。繊細な魔力操作に自信がある者だけが、集中できる環境で行うことがほとんどである。

 リアは万が一を考えて結界を張った部屋で、魔法の解除を行なった。同行すると言った将軍だが、リアが頑として首を縦に振らず、最終的にショウが見守るということで決着がついた。

 ショウが見守る中、リアは無事に魔法の解除に成功し、ノース=カイマート軍は壊滅を免れることができた。

 レンゼムがリアの殺害を失敗した場合、魔鉱石の魔法の解除の失敗も狙っていたようだ。しかし、リアは見事に解除を成功させた。

 ただの魔鉱石となったものは軍に回収され、杖へと加工されたのち国内の魔法使いへと下賜されることになったようだ。

「兄は、その魔鉱石を投げるつもりがあったのでしょうか……?」

 その言葉に、ショウは首を横に振る。

「本人がいないから推測でしかないんだけど、レンゼムは投げるつもりはなかったと思う」

 それに不思議そうな顔をしたのはリアだった。

「なぜ、そう思うのだ?」

「あの時、オレが思い返す限り、投げるタイミングはいくらでもあったんだよ。それでも、レンゼムはわざと見せつけるように取り出した。今となっては、投げるつもりはなかったんじゃないかなって。オレに殺してもらうための演出だったんじゃないかなって思うんだよ」

 確かに、一番最初にリアに斬りかかった時も、そのまま魔鉱石を投げつければよかったはずだ。あの時が一番油断していた瞬間なのは間違いない。なのに、わざわざナイフで斬りかかって姿を見せた。リアとショウの憎しみを煽るような言葉を連発し、最終的にショウに対して自分を斬るように仕向けた。

 あの時はわからなかったが、冷静な状態で思い返してみるとレンゼムの行動に不可解な点が多い。

「……兄は最初から死ぬつもりだったってことですね」

「あなたを守るために、利用できるものはすべて利用したってことだと思います。オレもリアも、レンゼムの目的のために利用されたってことかと。レンゼムの死後、彼を監視していたノース=カイマートの兵士は捕縛され、将軍と副官の手によっていろんなことを自白させられたようです。そこで、オレはレンゼムがあなたを人質に脅されていたことなどを知りました。それと同時に、レンゼムの最期の言葉に納得してしまいました。そういうことだったのか、と」

「私はなにも聞いてないぞ」

 リアはなぜレンゼムが魔鉱石を持っていたのか、その目的までは知っているはずだ。それ以上の情報を知らないことをショウは知っている。

「オレが将軍にリアには言わないで欲しいとお願いしたんだよ。レンゼムが置かれていた状況を知ってしまったら、リアはヴェアールの力でどうにかしてしまうと思ったから。それはレンゼムが望んでいることじゃないと思って」

 確かに、その話を当時のリアが知ってしまったら、その場で解決しようと動き出しただろう。

 それは、サウス=リアクターの筆頭貴族であるヴェアール家が他国へ干渉するということを意味する。ノース=カイマートへ開戦のきっかけを与えることにもなりかねない。

 だからこそ、ショウは将軍と副官と相談して、リアに対してこのことを伏せることに決めた。リアがヴェアール家の人間である限り、この状況で他国に干渉させるわけにはいかないからだ。敵国に開戦の大義名分を与えるわけにはいかない。

 それは、リアのヴェアール家次期当主という肩書きに傷をつけてしまうことにもなる。

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