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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場14-4

 リアは自分の食事に浄化の魔法をかけながら、「身内にいるのだ、一人だけ。お前のようによく食べるやつがな」と言ってくる。

 そう言いながら少しだけ緩んだ目元は、懐かしいなにかを思い出しているかのように見えた。

 リアの身内ってことは、リアと同じ魔法使いなのかな? とは思ったが、その人物に対して特に興味は湧かなかったので、それ以上は訊ねなかった。リアのそれ以上言うつもりはないような雰囲気だ。

 ショウは定位置となりつつある出入り口近くのラグの上に座り、食事を始めた。

 その頃にはリアも自分の分の浄化が終わって、綺麗な所作で食べ始める。

 突撃部隊に入り浸っているころは隊員たちと同じ食事を摂っていた。彼らは「同じ食事のルーティンばかりで飽きる」と文句を言っていたが、ショウにとっては初めて食べるものが多かったので、夢中になって食べていた記憶がある。

 彼らにとっては食べ慣れたものかもしれないが、質素な食事しかしてこなかったショウにとってはかなりの美味だった。人間はこんな美味しいものを食べ慣れているのかと衝撃を受けたものだ。

 そういう料理でも美味しかったのだが、リアの護衛となってリアと同じ食事を摂るようになってから、さらにその上の料理があるのだと目の当たりにした。

 庶民の食事も美味しいのだが、貴族の食事はその上をいく美味しさだった。人間の貴族はこんな美味しいものを毎日食べているのかと、少しだけ羨ましくなったのは記憶に新しい。

 しかも、毎回毎回違う食材で違う食事が出てくる。豊富な食材にたくさんの調理法に驚かされてばかりだ。

 ショウは食事に夢中になり、リアは食事中に口を開かないので無言の時間が流れる。結界が張られた部屋の中に響くのは、ショウが持っているカトラリーが皿に触れてしまった時の音がほとんどだ。

 使い慣れていないカトラリーでは、どうしても音を立ててしまう。それがマナー違反であることはわかっているのだが、どうしようもない。リアはそのマナー違反を不快に思うだろうかと思ったが、まったく気にしていない様子だ。

 里では絶対に出ない柔らかいパンに舌鼓を打っていると、食事の量が少ないリアの方が先に食べ終わったらしい。カトラリーをトレイの上に置いた。

 そして、視線をこちらに向けてくる。

「お前は本当に美味しそうに食べるんだな」

 呆れている様子はなく、逆に感心しているように見えた。

 リアの言葉にきょとんとしたショウは、パンをごくりと飲み込んでから口を開く。

「まぁ、里の食事はこんなに美味しくなかったし……」

 その呟きに、リアが興味を持ったのがわかった。

「里? 亜人の隠れ里か?」

「うん。リアたちにとっては食べ慣れている食事かもしれないけど、オレにとってはめちゃくちゃ美味しいんだよ。人間って、こんなにうまいもんを食べてるんだなって思った」

 その言葉に、リアは少しだけ驚いたような表情をする。

「そうなのか?」

 やはり、こういう食事はリアにとっては食べ慣れたものなのだろう。

 リアの問いかけに、ショウは首を縦に振る。

「肉とかも普通に出てくるし。オレの住んでた里では、肉は結婚式とか子供が生まれたとか、そういう祝い事でしか出てこなかったから」

 リアは納得したように、何度か頷いた。

「それもそうか。人間に居場所を知られないように生活していたら、家畜を飼って放牧とかできないな」

 確かに家畜は飼っていなかった。お祝い事があった時に、里の若者たちが手分けして森の中で狩りをして肉を調達することが多かったかもしれない。ショウも仲間たちと何度かその狩りに参加したことがある。

 長老から聞いた話では、昔は日常的に肉を食していたらしい。だが、その時に森の動物を狩り尽す寸前までになってしまったようで、そのために祝い事の時だけに肉を食すという方針に変わったようだ。そのおかげもあって、今の森には動物が豊富に存在しており、たまにある狩りの時には簡単に獲物を見つけることができる。

「それに、料理の味付けもこんなに豊富になかったし」

「スパイスのことか?」

「それかも。里で出てた食事は食材そのものの味が多かったから。だから、里を出て人間の食事を食べた時、はっきり言って衝撃的だったな。びっくりした」

「ショウの里ではあんまり食文化が育たなかったのだな」

「まぁ、食べれたらいいみたいな精神で暮らしていたから、美味しく料理しようなんて意識はなかったと思う」

 そう言いながらスープを一匙すくい、口へ運ぶ。溶けている野菜の甘味とコショウのぴりっとした感覚が、口の中いっぱいに広がっていく。こんな食事を続けていたら、絶対に里に戻ったら食事のたびに物足りなさを感じてしまうだろう。

「だから、結婚したら彼女と一緒に里を出て人間社会で生きるのもいいかなぁ、とか思い始めてる」

「恋人はそれを了承するのか?」

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