信頼と裏切りの戦場14−2
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夜になった。
日が落ちて辺りが暗くなり、本営内は複数の魔鉱石を使って足元が見えるぐらいの薄暗さを保たれていた。
魔鉱石は込められた魔力によって色んな魔法を再現することができるのだとリアから教わった。魔法使いは魔鉱石に魔力を込めることによって、イメージしている魔法をこの世界に再現するらしい。魔鉱石を使わなくても魔法は使えるらしいのだが、使ったほうが消費魔力が少なくて済むのだと言っていた。
リアの杖にも魔鉱石は付けられていて、その大きさと透明度からかなりの高値で取引されるものであるらしい。この魔鉱石一個で中堅レベルの貴族の領地の年間予算に匹敵すると聞いた時は、思わず顔が引き攣ってしまった。
どうやら、魔鉱石はその大きさと含まれている不純物の少なさでかなり値段が上下するらしい。リアの魔鉱石はかなり大きめで、不純物がほとんど含まれていないらしく、父親であるヴェアール家当主がリアが生まれた時に世界中を探しまくって見つけた代物のようだ。
そして、リアには兄も弟もいて二人ともリアには及ばないもののそれなりに魔力を持つ魔法使いであるようで、それぞれも専用の杖を持ち、その杖にはかなり高価な魔鉱石がつけられているらしい。
リアが魔法を使うたびに魔鉱石が光るのは、リアの魔力が込められているからであるようだ。
『魔鉱石は、こめた魔力の量で輝きの強さが変わる。不純物が多ければ多いほど、込められる魔力は少なくなる。耐えきれなくなって破裂するからな。魔力量の多い魔法使いであればあるほど、不純物が少なく、込められる魔力が多い大きめの魔鉱石が必要になってくるのだ』
リアは運良く潤沢な資金を持つ貴族の家に生まれたが、平民に生まれた魔法使いは魔鉱石を買うお金がなくて苦労する者もいるらしい。
ヴェアール家は、そのような領民にも魔鉱石を購入する資金を援助することがあるようだ。そのため、領地には自然と魔法使いが集まり、ヴェアール家は一つの魔法使いだけで構成される師団を持っているのだと言っていた。その師団で領地内の警備を行うため、魔物の脅威を恐れた人々が安全な生活を求めてヴェアール領に集まり、その中から見どころがある者を支援し、その者が結果を出して領地に利益がもたらされる。その利益によりさらに支援を行い、の繰り返しで、ヴェアール領は発展してきたようだ。
それを聞いて、考えてみればすごいことだよな、とショウは思った。
リアの言う、人に投資するというのはこういうことなのかと実感した。魔法師団があるおかげで、ほかの貴族はヴェアール家に対して下手に手を出してこないようだ。王族ですらヴェアール家には頭が上がらない時があるらしい。
夜を待つ間にリアから聞いた色んな話を頭の中で反芻しながら、ショウは伏せていた視線を上げた。
目を向けたその先にはリアが作った光の魔法よって室内が明るく照らされ、昼かと勘違いするほどの明るさになっていた。リアの頭上で光る明かりを見たショウは、魔法ってやっぱり便利だよなぁ、とぼんやりと思った。
この魔法を亜人が使うことができたなら、里での暮らしももう少し楽なものになったかもしれないと考える。里の暮らしに文句があったわけではないのだが、里を出て人間社会で暮らしてみると、いかに人間が便利な暮らしをしていて、亜人が不便な暮らしをしていたのかを実感させられる。
現状維持の生活を続けてきた亜人と、常に生活の利便性向上を考えてきた人間とでは、日頃の暮らしに対する労力がどれだけ違うかが思い知らされた。里を出た仲間が何人か見送ったことがあったが、一切戻ってこないのはこういうところなのかもしれないと思う。
ショウは珍しい部類に入る方の亜人かもしれないが、人間社会はかなり暮らしやすい。
また視線を伏せて考え事をしていたショウの耳に、女の子の声が入り込んでくる。
「みんなが寝静まったころで行動を開始するぞ」
それで意識がまた現実世界に戻ってきた。
やる気満々のリアの姿に、本当にするんだ、とショウは思わず眉を寄せてしまう。いくら守護の魔法をかけているから通常の攻撃は通用しないと教わったものの、リアを危険な目に合わせるのは気が引ける。
彼女の話では、ショウが仮眠をとっている間に将軍に話を通したと言っていたし、こんな作戦、よくあの将軍が許したな、と思ってしまった。絶対に反対すると思っていたから、少し意外だった。もしかしたら、リアが色々と言って説き伏せたのかもしれない。
その後、いくつか色々と作戦内容の確認をしていると、食事の時間となった。
ショウが近づいてくる気配に気づいて、結界をすり抜けて天幕を開けて外の様子を見る。リアからの話で気づいたのだが、ショウはリア並に魔法耐性が高いようで結界魔法をすり抜けることができるらしい。試しに結界魔法に触れたら、その指先がするっとなにかしらの薄い膜を抜けた感覚がした。
どうやら、ある程度の魔法耐性がある者は結界魔法を無効化することができるらしい。すり抜けたとしても結界魔法が壊れるわけではなく、通り抜けた後、結界は元通りに再構築されるというなんとも便利なことになるようだ。




