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Wind Illusion Story ー世界は混沌に選ばれし勇者の再来を待ち望むー  作者: 雪杜 凛


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信頼と裏切りの戦場12-6

「探査の魔法は、魔法耐性を持っていたとしても関係ないのはよく知られていることだ」

 それは先ほどリアが教えてくれた。魔法耐性があるショウや将軍でも、探査の魔法ではその気配を捉えることができると。なので、リアは何度も探査の魔法を使って敵兵の気配を探るが、その姿を捉えることができないらしい。

 周辺の気配を探ることができる魔法って便利だな、と思ったのだが、どんなものにも抜け道というものは存在するようだ。

「だとしたら、それをわかった上でなにかしらの方法ですり抜けている可能性がある」

 敵軍の魔法使いは、その抜け道をうまく使っているらしい。魔法に詳しいはずのリアでさえも、その抜け道を見つけ出すことができないのだから、将軍やショウがそれを見つけるのは難しいだろう。

 そのまま再びしばらく考えた後、リアはおもむろに杖を手にし、魔鉱石が付いている方で地面をこつっと叩いた。

 小さく金属がぶつかり合うような澄んだ音が響き、その瞬間、足元に淡い光を放つ魔法陣が現れた。それに驚いてびくりと肩を震わせたショウの全身をリアの魔力が駆け抜けていく。何度経験しても、この魔力が身体を駆けていく感覚には慣れない。ほんの一瞬だけだが、背筋がぞわっとする。そしてしばらくして、背中の方から魔力が駆け抜けた。再び背筋に気味の悪い感覚が走る。

 その中心に位置しているリアは、魔法を使っている張本人なのでショウと同じ感覚を感じていないのだろうか。特に表情を変えることなく、う〜ん、とリアは腕を組んで唸る。

「……条件を変えてみたが反応なしか……」

 どうやら今のは探査の条件を変えてみた結果の魔法であったようだ。だが、結果は反応なしだったらしく、その後も何度かリアが条件を変えて探査の魔法を発動させたが、すべて変わった反応はなかったようだ。

 思いついた変更する条件も尽きてしまったらしく、とうとう難しそうな顔をして黙り込んでしまう。そのまま無言で考えている様子に、リアの邪魔をしてはならないとショウは空気に徹した。気配を消すことには慣れているので、気配を殺して息を潜める。

「これ以上の探査は無理か……。魔力は温存しておかねばならないからな」

 リアがそう呟いたことによって、ショウはハッとした。リアは今の時点で何度も探査の魔法を発動している。ということは、リアの魔力がそれなりに削られている可能性がある。リア自身もそれに気づいているようで、それ以上、探査の魔法を行うことはなかった。正直、魔力が全身を駆け抜ける感覚には慣れていないので、少しだけホッとした。

 だが、どんなに条件を変えても探査の魔法になにも引っかからないのは気になる。

 ずっと目を伏せて考え込んでいたリアが、ふっと視線を上げた。赤い瞳とバチッと目が合う。

「一応訊ねるが、ショウは不審な人物を見かけたりはしたか?」

「……不審な人物?」

 そう言われても、ショウは軍内部でさほど他人と交流しているわけではない。自分の部下にあたる突撃部隊の隊員たちとはそれなりの関係を築けているが、ほかの部隊の隊員たちとは挨拶をする程度でしかないので、リアの言う不審な人物に心当たりはなかった。

 脳裏に顔を知っている隊員たちを思い浮かべるが、特に不審な行動をしていたりはしていない気がする。ほかにも挨拶をする程後のほかの部隊の隊員の顔も思い浮かべるが、彼らはショウが軍の演習場で行動訓練を行なっていた頃からの付き合いなので、その時から敵兵が潜り込んでいる可能性は低いのではないかと思った。

 なのでショウが首を横に振ると、リアは「だよな。私もいろんな部隊を見て回ったが、不審な動きをする人物を見かけることはなかったと思っているのだが……」と言う。

 その言葉に、え、と声が漏れそうになった。リアは積極的にいろんな部隊を見て回っていたのは、単に興味があったからなのだと思っていたのだが、実は不審な動きをしている者がいないかの監視の意味を込めたものだったらしい。

 確かに、この戦争の勝敗を左右する存在であるリアが堂々と歩いていれば、良からぬことを考えているような者は油断して不審な動きをする可能性もある。それを考えれば、リアは格好の囮だった。

 でも、それでも将軍の予想が正しければ、サウス=リアクター軍には敵国の間者が紛れ込んでいる。しかも周りに悟られることなく、かなりうまく潜入している可能性がある。それも、リアの魔法を掻い潜る、なにかしらの方法を使って。

「……ショウ」

 短く名前を呼ばれ、ショウは手招きをするリアへと近づく。

 距離が近くなったショウに対して、見上げる形になったリアが少しだけ上目遣いになって口を開く。

「少し、相談してもいいだろうか……?」

 オレに? と思ってしまった。なんでもかんでも自分で考え自分で結論を出してしまうリアが、この自分に相談するようなことがある、ということに驚きを隠せなかった。

 なんだろう、と不思議に思っていると、次にリアが告げた言葉の内容にショウが驚きで目を見開く。

「本気なのか、リア?」

 信じられないという気持ちで訊ねると、リアはこくりと頷く。

「軍に紛れ込んでいる間者は、今夜も動く可能性が高い。そこを突く」

「……」

 ショウが黙ってリアを見下ろしていると、こちらを見上げるリアの瞳に迷いなんて言葉はなかった。まっすぐに見上げてくるリアの瞳としばらく見つめ合い、根負けしたショウがため息をつく。

「……わかった、協力するよ」

 ショウが了承したことによって、リアは勝ち誇ったようににやりと笑みを浮かべる。

「お前の腕前は信用している。よろしく頼むぞ」

 リアとショウは共に頷き合い、夜を待つことにした。

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