表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜  作者: ゆず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/23

もう確信していいよな?

小競り合いがあったらしい現場。

戦闘そのものはもう終わっていて、俺に残った仕事は“後片づけ”だけだった。


戦闘員はまだ何人か現場に残っていたが、それぞれ離れた持ち場を担当していて──この辺りには、俺ひとり。

誰かの声や足音が、遠くでかすかに聞こえるだけ。

静かすぎて、瓦礫の崩れる音すらやけに響く。


そんな場所で、俺は破れたバッグを拾いあげた──その瞬間、背後にぞりとした気配。


「……危険ですよ。そんなに無防備じゃ、いつ誰に背中を取られるか分かりません」


やけに落ち着いた、そして少し甘さを含んだ声。


振り返ると、そこに立っていたのは──


仮面を被った正義のヒーロー、ゼットグリーン。

スーツの上からでも分かる、場違いな存在感。しかも俺の“間合い”に、いつの間にか入っている。


「……またお前か」


低く吐き捨てると、グリーンは嬉しそうに目尻を下げた。 


「先日のチーズタルト……お口に合いましたか?」

 

背筋に稲妻が走る。


「……は?」


「保冷には最新のパックを使いました。上にあしらったミントは私的な趣味でして……気に入っていただけたなら嬉しいのですが」


「…………」


ああ、やっぱりか。

あのカフェに来ていたイケメンと、目の前のこいつは同一人物──グリーン。


「やっぱり、あれお前だったんだ」


「ええ。気づいてもらえて光栄です、トオルさん」


にこり。仮面越しでも分かる、歪むほどの笑顔。


視線が、俺の顔の輪郭をなぞるように滑る。鳥肌が立った。


「……味の感想を聞くために戦場に来たわけじゃないよな」


「もちろん。それは副次的な目的です。……本命は、あなたの無事確認。戦場は何が起こるか分かりませんから」


ヒーローらしい響き──の“すぐ後”だった。


「たとえば……」


グリーンが半歩踏み込む。距離が近い。呼吸が交わる。


「瓦礫をどけた際、あなた、腰をひねる角度が以前より大きかった。少し力みすぎています。……痛めていませんか?」


「……は?」


「それと、物を拾うとき手袋を外しましたね。素手は危険です。注意しようか迷いましたが……あなたが集中していたので」


「……なに見てんだよ」


「当然です。あなたの動きは、どんな高解像度カメラより鮮明に、私の網膜へ焼き付いています」


さらっと言う内容が重犯罪級。


「それに今日あなたが話したのは、お仲間の戦闘員ですが──距離20センチ以内に、3度も踏み込みましたね。……あまり、そういう相手と親しくしてほしくありません」


「…………」


寒気が喉元を撫でる。


「お前……何、数えてんだよ……」


「不安なんです。あなたが、他の誰かと距離を縮めるのを見るのが」


甘い声に潜む、針のような執着。

ヒーローの仮面の下から、狂気が漏れた。


「……それ、ただのストーカーの台詞だろ」


「違います。“見守り”です」


いや同じだ。むしろ質が悪い。


「──お疲れさまでした、トオルさん。またすぐお会いしましょうね」


仮面の奥で笑った気配。

さっきまで“戦場”だったこの場所より、こいつのほうがよほど危険だ。


……まさか、このあと当然のように別ルートで倉庫にも現れるなんて、

このときの俺は、まだ知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ