14.誕生
母上が二人目の子を無事に出産した。
二人目のためか、母上も直前まで余裕そうであった。
しかも、待望の女の子が生まれた。
健康そうな子で、見た目は期待通り、母上にとてもよく似ていたので、その時の父上の狂喜ぶりは忘れたい。
本当に……。
妹は「イリーナ」と名付けられた。
そして、国王夫婦とエミールがまたもやお忍びで、生まれた妹に会いに来た。
「ふーん。セリウスにあまり似てないね……」という残念そうなルシェール国王陛下の反応はともかく、パメラ王妃は「可愛い!可愛い!!ミニミニの小猿!!」と言って、珍しく興奮していた。
女性は小さいものが好きなうえ、パメラ王妃は母上のこと大好きだしね。
「……」しばらく無言で妹を眺めるエミールに、父上と俺は、妹にも俺の時のようなキス攻撃をしないか警戒していた。
ところが……。
「……ふふ、とても可愛いね。義理とはいえ、僕の妹になる子だから仲良くしたいな」と王子様らしいさわやかな笑顔で言い放った。
「は?何でイリーナが義妹になるんだよ?」と素で聞いてしまうレイモン。
「それはもちろん、ふふふ」と笑うエミールの言わんとすることはよくわかっているが、いい加減かなわないと何故わからない。
「ねえ、セリウス叔父様。こんな可愛い子はお嫁にはあげられませんよね?」
「当たり前だ!いくらエミールでもこの子はお嫁にあげないよ!!」
「僕にはレイがいるので間に合っています。
将来はこの子はお嫁に行かず、お婿さんをもらえば、跡継ぎのレイは僕のところに心置きなくお嫁に!!
よかったね、レイ!問題が一つ解決!」
「いや、根本的な問題が間違っているからね」
「レイもそろそろ王妃教育をしないとね」
「しないから。いらないから」
「直前だと、つらいのはレイだよ?」
「直前も何も、俺が王妃になる日は永遠に来ないことだから」
「エミール。レイもお嫁にあげないよ!」とエミールとレイモンのいつものやり取りに、セリウスまで参戦する。
「……僕がイリーナをお嫁にしても?」とエミールが尋ねる。
「絶対に、ダメ!だから、僕の子は二人とも誰にもあげないの!」とマジ切れするセリウス。
「たぶん、この国中がイリーナを僕のお嫁にと言ってくる中、レイモンがいるからといえば、みんな納得しますよ。どうしてもどちらかを僕のお嫁にするなら?」
「どっちもやだ!」
「……どうしてもどちらかと言われたら?」
「しつこいよ、エミール。隣国のお姫様でも嫁にしなよ」
「……父上は?」とルシェールの助けを求めるエミール。そして、ルシェールの耳に囁く。
「父上、もし僕が女の子のレイモンと結婚したら、孫はセリウス叔父様か母上に似た子が生まれる確率がぐっとあがりますよ。小さい頃のセリウス叔父様か母上にまた会えますよ」と悪魔のような誘惑をするエミール。
「おお!小さい頃のセリウスとパメラか!!」と想像してデレデレとするルシェール。
「セリウス、レイモンが女の子になったら、是非、エミールの嫁に!」とルシェールからもセリウスに頼んでくれる。
「えー!兄上までひどい!!絶対、嫌です」と拗ねるセリウス。
「じゃあ、こっちの女の子をエミールの婚約者にしちゃおうかな~。王命で!」
「兄上!そんなことしたら、国外逃亡しますよ!!イリーナはもっと駄目です!」
「じゃあ、レイモンの方だな。私もセリウス似のレイが嫁だと楽しい!」
「くっ!わかりました。もしも女の子になれたら、レイモンの方を嫁に」
「やったー!レイ!!ついに、セリウス叔父様の許可がおりたよ!!」と喜ぶエミール。
何だ、そのやり取り!
しかも、父上、俺よりイリーナを選びましたね?
わかっていたけど、ひどい!!
でも、俺的にも妹はエミールなんかに絶対あげないけどね。
あと、もし女の子にされても、俺が嫁をもらうことがあっても、嫁になることは永遠にないからね!!
ため息をついたレイモンは、いまだにレイモンを嫁に!と騒いでいるエミールやルシェールを全無視して、可愛い妹イリーナのちっちゃな手やほっぺをつついて癒されるのであった。
妹は本当に可愛い。母上に似ていることもあるが、茶髪がほわほわして、自分と同じ緑の瞳に親近感がわき、さらに自分が微笑んでいるせいか、レイモンを見てにこっと笑う顔が何とも言えず、天使のようで可愛い。
俺の妹、世界一、可愛いー!!
あれ?
俺も、もしかしたら、あの重度のブラコン王ならぬシスコンになりそう?




