11.初めての部下
レイモンは、孤児院での別れを済ませ、今度は王宮からの迎えの馬車に乗って、無事に王宮へ戻った。
王宮に着くとすぐ、レイモンはセリウスの執務室へ向かった。
セリウスの執務室に入るやいなや、「ああ、レイモン!」といって、セリウスに抱きしめられるレイモン。
「な、父上?」
「よかった!!無事で本当によかった!レイモンが撤退命令を受け取れず、一時的に行方不明になったと聞いて、あやうく、僕自身が乗り込むところだったよ。」
「そ、それは…。」
「でも、その後、すぐに子供達も救い、犯人まで捕まえるなんて、本当にお手柄だったね。でも、かなり危ない状況だったのだろう?危機管理について、もっと教えないとね。」
「はい。ごめんなさい。今後は余計なことや無茶はしません。」
「うん!今後は絶対、そうしてね。」
「はい!」
「でも、今回、頑張ったレイモンには、部下を1人と言っていたけど、2人にしてあげよう!」
「え?2人も部下が?それよりも報酬は?」
「そうだよ、2人も部下ができるんだよ。
あと、報酬もちゃんと出すから、心配しなくていいよ。でも、『キャロルの店』でのお菓子もほどほどにね。大人買いは駄目だよ。」
「え~。はい…。」(そのためにも頑張ったのに!あと、父上と母上への出産祝いのためでもあるけど。)とちょっと不満そうなレイモン。
「じゃあ、まず、部下の紹介をするね。1人は決定したけど、もう1人はまだ選考中なんだ。今回の事件では予想外のことがあったからね。」
「そうですか。」
「じゃあ、いいよ、入ってきて!」
そういって入ってきたのは、情報省の職員で大人だと思っていたら、今は5歳児位の容姿になっているアリスであった。
「どーもー!アリスちゃんです!!」と元気いっぱいに挨拶するアリス。
「へ?なんでアリス?」と素で驚くレイモン。
「なんと!『効率の魔女』アリスがレイモンの部下になってくれまーす!」とセリウスも調子に乗って言う。
「…断ってもいいですか?断る以外、選択肢がないのですが。
一応、あいつ、罪人ですよね?部下はもっとまともな大人にしてください。」
「うーん。その気持ちはわかるけど、『効率の魔女』、特にアリスの年齢操作の能力はイレギュラー過ぎて、他に渡したくないんだよね。情報省でこそ役に立つ能力だしね。潜入捜査の際に、アリスが子供になってやってもらえるから、今回みたいにレイモンに頼まなくて良くなるよ。
あと、アリスは犯罪に手をかした罰で、刑期の間のみ、この情報省で生活費以外は無償で働くことになったんだ。」
「じゃあ、アリスは他の方の部下にしてください。自分では手に余る存在だから。」
「そうしたかったのだけど…。
レイモンで手に余る存在を、他の情報省の職員で、対応できるレベルの者は少ないんだよ。しかも、それだけ有能だとたくさんの他の仕事も抱えているから、アリスの管理もなかなかできなくてね。
あと、アリスがレイモンの部下にするなら、無条件で言うことを聞くって言うし、むしろレイモンじゃないと言うこと聞かないって言い張るものでね。」
「何でですか?」
「それは、レイモンの魔力の味が忘れられないからです!たまにでいいので、レイモンの魔力をください!!それが私の本当の報酬です!」とアリスは涎を垂らさんばかりの勢いで言ってくる。
「俺の魔力だと!?」と思わず、アリスを睨むレイモン。
「そうなんだよね~。レイモンからの魔力補給なんて、ちょっと許しがたいし、レイモンの貞操もそのうち狙われるかも知れないしね。
厄介な存在だ…。
でも、万が一、レイモンに害をなした時点で、アリスは魔法省の実験体になる予定だよ?」
「…あの孤児院には戻してあげないのですか?」とレイモンはアリスを慕うスタンリーのことを思い出しながら言う。
「それは駄目。アリスは国レベルでの管理下におかないといけないから。」
「そうですか…。」と言って、ため息をつくレイモン。
セリウスの命令なら承諾しないといけないのは一応、わかっているが、相手がアリスなだけに気持ち的に受け付けられないレイモンであった。
「いいかい?アリス。もしレイモンを害したり、手を出したりしたら、すぐに捕縛するからね。その後は僕の家族に手を出したことを死ぬ程、後悔させるし、僕にはそれが可能だから。例え亜空間へ逃げても絶対に逃がさないから、そのつもりでいてね。」とセリウスはいつもの10倍以上の冷気で、アリスを本気で脅す。
「ひぃ!絶対、しません。誓います!!」と青褪め、冷や汗を出すアリス。
「レイモンには、一応、アリスと正式に交わした契約書の写しやアリス関連の書類を、一通り渡すね。レイモンの許可なく魔力を喰わないことや、他にもレイモンの身に危険が及ばないように配慮しているけど、もし抜けがあると思ったら、指摘するか、相談してね。」
「はい。」
「あと、アリスは王宮内に住居があるから、仕事の時以外は一緒にいなくていいよ。でも仕事に割り当てられた時間帯には面倒みておいてね。」
「はい。」
「アリスも休みの時以外はきちんと仕事をするんだよ。」
「はい!おまかせください、セリウス殿下。」と何故か嬉しそうなアリス。
「じゃあ、二人とも仲良く、がんばってね!」といって、セリウスは笑顔で、アリスとの契約書の写しや、諸注意の書類、魔法省の作成したアリスの扱い方等の入ったアリス関連のもの一式をレイモンに渡した。
セリウスにアリスを押し付けられたレイモンはげんなりとしながら、とりあえず、初任務の報告書を書くために、王宮にある王族専用の学習室に向かおうとすると、アリスもとことこついてくる。
「アリス、今日はもう自分の部屋に帰っていいよ!」
「えー?暇だからレイモンについて行く!王宮探検したいな~。案内してよ、レイモン。」
「来賓客か!?一応、罪人なんだから大人しくしておけよ。しかも、お前、王宮内でも入れるところは大幅に制限されているだろう。」
「うん、まあね。じゃあ、街に行こう?外出は制限されていないから。王都一のお菓子屋『キャロルの店』に行ってみたい!!」
「『キャロルの店』か。それならいいぞ!俺も行きたかったし。」とちょっと楽しくなってきたレイモン。しかし…。
「ふふ、そんな王都一のお菓子屋にはどんな子供達が集まってくるのかな。きっと王都一の美少年とか?お菓子のことで興奮した子供達はさぞ可愛いのでしょうね~。ぐふふふ、グフォ。」と想像だけで鼻血と涎を垂らすアリス。
あ、やっぱり、街にも行ったらだめだ…。
こんなのを街に連れて行ったら、街の子供達まで狙われる!!
レイモンはアリスを外出も制限か監視して、むやみに街の子供達と会わせないようにしようと決め、1人で予定通り学習室に向かうのであった。
ちなみに、レイモンについて行こうとしたアリスは、王族専用エリアには一切入れず、しぶしぶ自室に帰っていった。
そして、この日から、アリスはレイモンが王宮に来ると、仕事のない時でも、必ず現れてレイモンにつきまとうようになった。思わずそれを嘆いてしまうレイモン。
初めての部下がアリスだなんて、あんまりだ!




