同じ「赤」
「やっぱり駆除するしかないですよね?」
「人間を守るのがわたしたちの仕事。今までの方針通り、危険なら駆除よ」
「絶対あのおばさん怒りますよね……」
「人間の生活を脅かす限り、どんな動物も害獣よ。ゴルゴサウルス、サウロルニトレステス、トロオドン、そしてモリス」
「今ホモ・サピエンスが混ざってませんでした?」
「どれも二足歩行よ」
ピックアップトラックに戻ったわたしたちは、日没後にこのごみステーションに戻って警戒することにした。トロオドンは夜行性だから、狩場にティミーが戻ってくるはずだ。
「鈴木くんはライフル得意? クレー射撃できる?」
「い、一応」
「十分よ。ティミーを撃つときは、まず胴体を狙いなさい。動きを止めてから二発目で仕留めて」
「うへぇ……」
鈴木くんが自信なさげに愛想笑いする。でもクレー射撃ができれば素人ではない。確かに小柄なトロオドンと大柄なハドロサウルス科では的の大きさが違うから、難しいと感じるかもしれないけど。
「わたしは右肩が壊れているからライフルは使えないけど、当然フォローするし、何かあってもわたしが責任を負うから。期待してるからね」
緊張する鈴木くんの肩を叩いて励ます。
実際問題、わたしは肩を痛めているからライフルを使いたくない。でも小賢しいトロオドンを罠猟で捕まえるよりも銃猟のほうが話が早いから、ライフルを使える鈴木くんに任せるしかない。
「大丈夫。昔のわたしみたいに派手にやらかさなかったら、それでいいわ」
意気地なしだった昔のわたしみたいに、恐竜を取り逃がしたりしないだろう。
「そのアイリーンさんがやらかしたことって、なんすか?」
「ええ。さっきの話の続きなんだけど――」
サハラ支部にいた時、スピノサウルスとの戦いで肩を痛めたわたしは、大剣を振れなくなった。狩りの方法をまた考え直さないといけなくて、ライフルを使った銃猟に挑戦することにした。
ちょうどそのころ、ルゴプスが近くの農場に出没して、ごみを荒らしていた。本来は臆病なスカベンジャーで、人里に近づくような恐竜ではない。でも一頭、人を怖がらず、農場主が追い払っても平気で戻ってくる子がいた。
そこまで大きい恐竜でもないし、わたしの復帰戦の相手にちょうどいいと思った。
ルゴプスをシュトローマーくんと二人で狩ることになり、わたしたちは簡単な作戦を立てた。シュトローマーくんがルゴプスを農場から追い立てて、平原に出たその子をわたしがライフルで撃つ、というもの。ライフルを使った狩りは初めてだったし、広い平原にルゴプスをおびき出せば気兼ねなく銃を使えるはずだった。
ほどなくルゴプスが農場に現れ、手筈通りにわたしは平原で待ち伏せた。あとはシュトローマーくんがルゴプスを連れてきてくれる。そのはずだった。
でもいくら待っても、誰も現れない。恐竜も、相棒も。
さすがに遅いとしびれを切らして、農場のほうに戻ったが、その時に見たのは――。
「多分シュトローマーくんは、後ろから襲われたのよ。うつ伏せで、体があり得ない方向に折れ曲がっていたし。
わたし、シュトローマーくんが喰われてるなんて思っていなかったから、動転しちゃったの。一矢報いたくてライフルを使ったけど、手が震えて狙いが定まらないし、肩が痛くて、……取り逃がしちゃった」
「折れ曲がる……?」
顔を引きつらせた鈴木くんが聞き返してきた。
「人の体だって壊れるのよ。600キロもある巨体で突進されたから、腰がこう――」
「うわ……」
鈴木くんが顔を青ざめさせた。ハンターをしていても、苦手なものは苦手だろう。
「でも、一つ大事な事実を思い知ったの。人間の肉って、わたしたちが殺してきた恐竜と同じ、赤色だって」




