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共に背負って

「共に進みましょう」

その言葉に、お嬢様は嬉しそうに頷いた。


その笑顔が頼もしく、また怖かった。

未だ、私の心の奥底に住まう恐怖。

胸に宿った灯火の影で、それは醜くも蠢く。

それを振り切るように、お嬢様の目の前にスマートフォンを取り出した。


「昨日、私達が所属している組織より、連絡がありました」

暗い画面のままのスマートフォンを、お嬢様が見る。

「出頭し、状況の説明をせよ、と」

弾かれたように、お嬢様は私を見る。

「行っちゃだめだよ!」

スマートフォンを掴みかからんばかりに、お嬢様は身を寄せた。

「ええ、勿論です。行くつもりはありません」

誰が見ても分かりきっている。

これは、断頭台への階段だ。

そこに、のこのこ自ら行く者はいない。


「ですが、ただ手をこまねいている訳にはいきません」

お嬢様を、じっと見る。

お嬢様の喉が、コクリと鳴った。


「お嬢様は……どうなされば良いと思いますか」

私の言葉に含まれたもの。

お嬢様は、感じ取るだろうか。


「私、は……」


揺れる瞳。

酷な選択だろうか。

いっそ、逃げようと言ってくれれば、どれほど楽か。


「私……」


見つめる瞳は揺らぐが、逸らされない。

お嬢様は、戦っていらっしゃる。

それが、私の中で蠢くものを、小さくした。


「私は、進みたい」


迷いながらも。

恐れながらも。

お嬢様は、はっきりと言った。


「……承りました」

その思いを呑み込みながら、自分の口から出た言葉は、いつもより低く感じた。


「灯お嬢様は、思うがままにお進みください」

お嬢様を見る。

微かに震える手。

揺れる瞳。

その瞳の奥に宿る、仄かな灯火を感じながら。


「その歩んだ先の責任は、私が負いますから」

その言葉に、お嬢様は震えを抑えるように、胸の前で強く拳を握った。




事務スタッフのトップの執務室には、いつも通りの静けさがあった。

そんな静けさの中、ノックもなく、扉が乱暴に開かれる。

手に持った書類から目を上げると、傷だらけの男───HEROが立っていた。


「なにか用か?」

そう言いながら、気だるそうに歩いてくる。


「前回の件、どういうつもりですか?」

書類を机に置きながら、HEROに問うが、不思議そうな顔が返される。


「SATANとMARIONETTEの邪魔をしたでしょう?」

その言葉に、得心がいったように手を叩く。


「どういうつもりもなにも、そういう契約だろ?」

悪びれもなく、HEROは言った。


「俺はいかなる時でも、サタンと戦う権利がある───そうだろ?」

その言葉に、思わず眉を顰めた。


「あなたは本当に、ヒーローにでもなったつもりですか?」

そんな私の言葉に、HEROは吹き出した。


「いや、すまん。同じことを言われたからな」

くくく、と喉の奥で笑いながら、言葉を続ける。


「だから、同じように返そう。義を見てせざるは勇無きなり、ではない」

机に手をつき、顔を寄せてくる。


「宿命だよ」

それが全てだとでも言いたげに、獰猛な笑みを浮かべた。


「宿命、ね」

用は済んだとばかりに、HEROは早々に背を向け、部屋を出ようとする。


「……その宿命に、ゆめゆめ殺されないように」

そんな私の言葉に、なにも言わず部屋を出て行った。




背中に言われた言葉を反芻する。

「もう、殺されかけているよ」

体中に刻まれた傷を感じながら、呟くように言う。

脳裏に浮かぶ、男の姿。


───ミスター、これが最初で最後だ。


男───白瀬 真の死を悼むように、天を仰いだ。


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