第十五章 開幕のとき来る 四話
ダージュ・オブ・ゲーヘントの装置を見張っていた監視カメラ。
その監視カメラを監視していた警備員が、入室すると聞かせられていない人物を目にして驚愕した。
「ん? あいつは確か、生贄のリストに載っていた、カズイ・コーター⁉ 何故、奴があそこに……いや、考えるよりも、早く大統領にお伝えせねば!」
血相を抱えてモニター室から飛び出す警備員の男。
その向かった先はホワイトハウス。
すぐに警備の人間にその事を伝えると、大統領室に居るジョーンに直接伝える様、指示を受け、モニター室に居た男は、その事実をジョーンに直接伝えた。
「な、なんだと? ダージュから事前に入室の許可を取っていない、生贄候補のカズイ・コーターが、ダージュ・オブ・ゲーヘントの装置の前に居る?」
「はい。しかも何やら起動させるような素振りを取っておられますので、まず間違いなく、自分が生贄になると思われます」
ジョーンは、顔を真っ青にしていた。
だが、下手にカズイを刺激すれば、何をするか分からず、手が出せない。
ならば、と思い、カズイが自分を生贄にして、死者蘇生を実行すると思い、ある予備プランを遂行するため、決断したジョーンは、勢いよく立ち上がる。
そして、近くにいた秘書を指先で自分の近くに来るよう指示を出す。
「よし。こうなったら止む負えまい。今すぐ私を安楽死させろ」
「なっ⁉ 本気ですか大統領⁉」
「もちろんだ。既にダージュは私をダージュ・オブ・ゲーヘントの蘇生対象にリストアップしている。今よりも若くなった肉体と精神で、この世に蘇生されると言うのは、私もあの装置を見て把握済みだ。ならば、カズイ・コーターが今、生贄にならなくとも、もうすぐダージュ・オブ・ゲーヘントは起動する。遅かれ早かれ、私が死ぬプランに変更はない。ダージュは今まで私に尽くし尽くしてきた。少なくとも、信用は出来る人間だ。そして、私が蘇生された暁には、ダージュを捕まえ、尋問が駄目なら拷問なり洗脳なりさせ、今度こそ、ダージュ・オブ・ゲーヘントの全てを私の手中に収める。異論はないな? これは大統領命令だ。速やかに事を進めろ」
「は、はい! 畏まりました! では大統領。当初の予定通り、すぐに安楽死できる準備は整っておりますので、隣の部屋で」
「ああ」
秘書が身を縮ませながら、恐々としながらジョーンを隣に設立させてある、安楽死室に案内しようとする。
「フフフフッ。些か予定とは違うが、どの道、私は、若さを取り戻し、復活する。その時には、世界を私の意のままに操る世界に造り変える。見ていろ、世界」
怪しく光る瞳と、歪になる頬。
ジョーンは世界に自分の存在を見せつけ、自分の思うがままの人と世界に作り変える野望を叶えるため、窓から空を見渡し、世界に訴えかけた。
そうこうしている間に、ライアはダクトからリンの手術の様子を見渡していた。
息を潜め、無線を自分の口元にくっつけ、最小限の小声で、ダージュ・オブ・ゲーヘントの装置の前に居るカズイと連絡を取り合っていた。
「どうだライア? 様子は?」
「今の所、これと言ったアクシデントは起きてないな。リンちゃんの容態も安定してるし、さっきアッシュが言ってたけど、アメーバの除去まで、一時間を切った、て言ってた」
「そうか。順調なら何よりだ」
ライアからの吉報に安堵するカズイ。
だがすぐに、最悪な予想をしてしまう。
それを一番、考えていたのはライアだった。
現状、見学に来たと嘘をつき、ダージュの命を狙っている医師の二人は、相も変わらず、リンの脳に目など向けず、ダージュを睨みつけたままだった。
それを客観的に見ていたライアにはすぐに分かる。
あの二人は、ダージュを憎んでいる事に。
ライアは緊張と恐怖で、今にも過呼吸になりそうだった。
「……なあライア。昔からよく、トードたちと一緒に支え合っていたよな?」
「え? なんだよ急に?」
無意識に手放しかけた意識を繋ぎ止めてくれた、何気ない気さくなカズイの声音。
それに応えるかのように、ライアの意識はしっかりと定まったが、何を伝えたいのか分からず、呆けてしまう。
「別に、他愛のない昔話さ。俺と君たちは死ぬか生きるかのギリギリのラインで綱渡りをする毎日だった。落第したくなかったら、互いに支え合い続ける毎日。まあ、大半は、自分の事しか考えられない、自己中心的な医学生だったが、トードたちと支え合っていたあの日一日一日が、どれもが尊く、どれだけ大切な日常だったか、彼らが死んでから、昔以上に考えさせられる」
「……そうだな。そう言えば言ってたっけ? トードはよく、医療界に革命を起こしたいとか言い続けて、それを俺様たちは無理だと思いながらも、心のどこかでそうあって欲しいって、思う様になってたって」
「ああ。彼は医師の鏡の様な志を持った青年だった。そんな彼を友として隣にいた俺は、どこか誇らしかった。そして彼が俺たちを一つに纏めた。結果、彼は帰らぬ人となったが……彼には大きな借りがある。俺たちを一つにし、これ以上無い絆を生み出してくれたことに、こればっかりは、ダージュ先生の発明品でも絶対に作れない、掛け替えのない物だからな」
「……」
尊く、誇らしく語っていたカズイとライア。
だが、トードたちが亡くなった事を思い出すと、つい昨日の事に思えて仕方なかった。
会いたい。
会って、自分たちを一つにしてくれたお礼を伝えたい。
そんな気持ちが、沸々と、湯が沸く前の泡のように膨れ上がっていく。
暫くの沈黙が経つ。
この時のライアは、またもや最悪な想像をしてしまう。
この話の流れ……。
……まさか……。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の投稿はここまでです。
さあ、いよいよクライマックスに突入しました。
もう少しでダージュ・オブ・ゲーヘントは完結します。
是非とも最後までお付き合いしていただければと思いますので、何卒よろしくお願いします。
皆さま、素敵な一日をお過ごしください。




