第十四章 愛と遭い 四話
ネムイたちが精を出そうとした時、ある疑問が脳裏に浮かぶ。
それは、アメーバの摘出についてだった。
「ねえ、普通に考えたら、アメーバの物理的摘出なんて無理よね?」
「ああ、アメーバは十二時間ごとに倍になって増えていく。普通なら発見次第、唯一の治療法である、抗真菌薬や坑寄生中薬などの薬剤を複数投与させ、脳の腫れを抑えるため低体温療法を組み合わせるしかない」
「だよな。なあ、アッシュ、もしかしたらだけどダージュ先生ボケたか? 医師ならあたり前な治療もしないで物理的に摘出って、脳筋かよ」
「……あんたが言わないでくれないかしら」
ぶつくさ文句を言うライアに対し、呆れるネムイ。
「いや、どうも今回のアメーバは新種の寄生虫なんだ。アメーバであるフォーラーネグレリアなのに変わりはないけど、問題なのは、フォーラーネグレリアが変異したアメーバだと言う事だ」
「変異したフォーラーネグレリア?」
先程よりは落ち着きを取り戻したアッシュは、敵でも睨みつけているかのようにまっすぐ前を向きながら敵意を込め口にする。
それにはさすがのカズイでも驚かされた。
「そう。既に薬剤や環境を整えた治療は済んでいる。けど、その新種がまだ生きてるんだ」
「え⁉」
「……突然変異、てやつだよな?」
「……ああ。そうなる……」
「……寄りによって、なんで、その新種の寄生虫が、このタイミングでルイちゃんに寄生するのよ」
ネムイたちは一回立ち止まり、悔しそうな表情で、床下を睨みつける。
だが、すぐにライアが「んだったら物理的に一匹残らず取り除くだけだ! そうだろお前たち!」
力強く口にするライアに、やっぱり敵わないよ、見たいな表情になるネムイたち。
アッシュも心強い仲間を持てたことに、自分自身に初めて誇りと言う物を見いだせた気がした。
以前、スインに『家族に対する優しさを、少しでいいから他人にも分けてあげてくれないか? そうしたらきっと、君の人生は、支え合う素晴らしい人でしか埋められない何かに変わる。それは財産になり、いずれ間接的にその財産が人々に笑顔をもたらす』と言われたが、今まさにそれを実感した時でもあった。
だが、そんな風に感傷的に浸ってる猶予はない。
覚悟を決めたアッシュたちは鋭い眼差しでライアの言葉に頷き、すぐさま、前代未聞の変異した新種のアメーバの摘出の練習を、練習用の手術室で始めた。
その日の内から特別に有休を貰い、訓練用の御遺体を頂き、その御遺体に敬意を表し、目を瞑り祈るアッシュたち。
せっかくの御遺体を無駄には出来ない。
すぐにでも難題に直面するかと思いきや、思わぬ朗報がある事を、アッシュたちは、御遺体の脳に寄生させた新種のアメーバにある事を知る。
レントゲンやCT検査で調べた結果、そのアメーバたちは、まるで動く様子が無かった。
この事で、アッシュはダージュが言っていた事を思い出す。
「そう言えば、今回のアメーバは、まるで動く様子を見せてないんだよな。だから下手に早期治療に出ないで、少し様子を見てからにしたいとか言っていたっけ?」
「あんたね。そう言う大事な事は、もっと早く行ってよ」
「そう言うなネムイ。アッシュも実の妹がこんな事態に遭っている事に混乱して、思考が上手く定まらなかったんだろう」
カズイの言い分に納得したネムイは「それもそうね」と検査結果の写真や動画を見ては同時にどうしたらいいのか思考を回していた。
「確認は済んだな? 動かずにいるならそれでよし。 早速、取り掛かろうぜ」
「ああ」
ライアの冷静な声音に気持ちを切り替えるアッシュたち。
果たして、アッシュたちは、この逆境を乗り越える事が出来るのか?
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