第十三章 無縁 七話
ダージュは考えた。
頭の中で、自分の血で成り上がり、富と名誉を取り戻すと言う事を。
だがそこで、ある疑問が脳裏を過る。
「何故だ? 何故この情報を私に教えた?」
「なあに、個人的な理由だが、強いて言うなら、あんたに期待してるからだ」
「私に期待?」
訝しい目をオセロに向けるダージュ。
オセロは、とても清々しい面持ちで語っていく。
「人に依存し、人を愛したあんたが、ここまで歪んだ。人に善意で尽くすと言う所に歪んだユーモアを持ち合わせた人間を、俺は見た事がない。そこに賭けたんだ。あんたならこの世界に革命的な何かを生み出すんじゃないかってな。だから今回あんたに竜血浄の情報をタダで教えたのは、先行投資みたいなもんだ。もちろん、あんたの情報を買いたいと言う奴が居れば、それに見合う価格で情報を提供するがな。だが安心しろ。紙切れ数枚で、数億ドルで買おうなんて人間はまず居ない」
ニヤニヤしながら頭の中で、自分に大金が舞い込んでくるのを想像するオセロ。
それを見たダージュは途方もなく呆れる。
ここまで周到だと、敵に回すのが怖いと思えるほどに。
「分かった。お前を信じよう。ブローカーや情報屋と言うのは、闇の中では信頼が第一だしな」
「物分かりが早くて助かるぜ。で? あんたはこの先どうするんだ? 何をする?」
興味津々でダージュに問いかけるオセロ。
ダージュは眉を顰め、この先の自分のロードを模索する。
だが、その道はすぐに確かなものとなる。
「簡単な事だ。私を除外する者を除外し、絶対君主に尽くす。そこで私は自分自身を見出す。この世界に相応しい人間かどうかを」
これ以上ないくらい、野心で満ち溢れるダージュ。
「へへ。それを聞いて安心したぜ。精々、世界を喰らい尽くすんだな。だが、何を喰うかどうかで、あんたの見る世界が変わる。憎しみか、あるいは愛を喰うか。出来る事ならあんたにはこの世界の未知を喰らって欲しい。その方が、世界は今以上に混沌とし、俺の商売を盛況するもんだしな」
「ふん、裏社会の人間の仕事が繁盛すれば、その分、命を狙われるぞ。出しゃばった真似はするなよ。ブローカーとして情報屋として生きていたけば、とことん根暗になる事だ」
「ハハッ。違いない」
二人は何だかんだで意気投合し始める。
お金以上の価値を、互いで交換し合い、信頼が生まれていた。
「んじゃ達者でな。死ぬなよ先生」
「ああ。貴様もな」
互いに分かり合った二人は、再開する日を望むかのように別れの言葉を交わす。
背中を向け合いながら各々の野望のために歩き出す。
そこからのダージュの崖っぷちからの成り上がり方は急ピッチで行われた。
竜血浄を使い、手術と称して次々と末期の患者を治し、自分の名前を表の世界にも売り込んだ。
一カ月も経たないうちに、人気も上がり、個人病院を設立後、すぐに自分を貶めた、ルチンを引きずり落とすため、オセロから買った情報をもとに、刑事告訴する。
自分が竜種と言う事はもちろん伏せた。
裁判で逆転勝利し、見事、ダージュの汚名は返上で来た。
ルチンは裁判所で判決を下った後、ダージュに怒号の声を飛ばす。
「あんたのせいだ! あんたが持て囃されたあの病院で、私は自分自身が情けなくて悔しかった! クソっ! くそっ! あんたのせいだ! あんたが私を狂わせたんだ!」
暴れまわろうとするルチンを警察官二人が両脇をがっしりホールドしながら、連行する。
そんなルチンを睨みつけるダージュ。
内心、笑っていた。
ざまあみろ、と言わんばかりに、卑屈に、軽視して冷笑するダージュ。
ルチンの行為は悪辣非道と見なされ、終身刑が言い渡された。
このニュースをみた世界はダージュを称えた。
彼こそが、この世界を代表する名医に相応しい。
すぐにアメリカの大統領、ジョーンが目をかけ、ダージュにコンタクトすると、ダージュはこれを千載一遇の好機と見なす。
ダージュはジョーンに会ってこう提供した。
いずれ不老不死に近い何かを完成させる。だから私の今のバイソンクリニックを世界で統一させ、私に統治させて欲しい。この世に私以上の医師は居なくていい、と。
それを聞いたジョーンも目が眩み、莫大の金で他の国と会談し、ダージュの実力も踏まえ、バイソンクリニックを世界だけにして、唯一の医療機関にする事が契約で決まった。
当時の人々は最初は違和感を感じながらも、ダージュの狂気的な医師育成プログラムが如何に画期的で、確かな医療を患者に提供するのかを実感すると、誰もが容認する事になる。
医師のレベルも上がり、重篤な患者などもバイソンクリニックが世界で設立する前に比べて、良好なグラフとなった。
ダージュに取って、病気だけでなく、人々から向けられる悪意は無縁となった時でもあった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回で、第十三章は終わりです。
次章からも是非ご一読ください。
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