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 これは中学一年の夏。

 これは僕にとって恋心の原点。大切な思い出の一つだ。

 ある日、僕は学校の保健室にあるベッドでぼけーっと時間を潰していた。

 教室の空気に馴染めない。

 進学してからこれっぽっちも学校が楽しくない。

「はあぁ・・・・・・」

 小学校からの友達は教室が離れ、僕は知らない校区からやってきた知らない人達と囲まれている。面白くもないし、息苦しい。だからといって新しく友達を作る勇気もなくて、学校に通うのもしんどくなっていたときだった。

「あー!」

 女の人の声。

 掛け布団からチラッと視線を向けると、一人の女子生徒がベッドのカーテンを捲って立っていた。

「ちょっと先生、私のベッドに先客がいるんだけどー」

「赤坂さん。保健室のベッドはあなたのベッドじゃないわよ」

「ちぇー」

 不服そうに言って、僕に視線を向けると、

「君」

「・・・・・・」

「狸寝入りでしょ」

 ぎくっとする。けど、それでも声は出せない。

「少女? いや、少年? まあ、どっちでもいいや。そこは私の特等席なんだよね。それを奪うんだからそれなりの理由があるんだよね」

「・・・・・・」

 理由なんてない。案内されたベッドがこの場所だっただけだ。

「その場所を取ったんだからさ、その代わりに」

 代わりに? 僕は何を要求されてるんだ。

「話し相手になってよ、私の」

「・・・・・・え?」

 思わず声が出てしまった。頭まで被った布団から顔を半分出す。

「仮病なんでしょ、君も」

 確信を持ったように言う声。近くにいるはずの先生は何も言わない。僕は回答を求められている。少しだけ考えて、

「仮病じゃ、ないですけど・・・・・・」

「ほら、返事できる。やっぱり仮病じゃん」

「ええっ?」

「本当は元気なんでしょ」

「い、いや、別に、元気なんかじゃ」

「分かるよ。教室にいるのが嫌なんでしょ。逃げてきたんでしょ」

 そう言うわけじゃない。

 逃げてきたわけじゃない。

 僕は、ただ、ただ、そこにいても意味がないって思っただけで。

「僕は」

「私と話そうよ。少し元気になるかもよ?」

 差し伸べられた手。僕に向けられた微笑み。

 美しいと思った。ドキッとして、何か大切なものを鷲掴みされたみたいで。

「え、と」

 僕はそれにおそるおそる口を開く。

 運命。

 なんて言葉が頭に過った。

 この人と会うために僕は今日保健室に来て、先生からこのベッドを借りた。

 そんなことあり得ないのにそんな気がしてしまう。

 これが僕と先輩との邂逅だった。



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