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Node7.4:日本対アメリカ―魂の決着――これがV.B.L!

ブザーが鳴った瞬間、アリーナの空気が張り詰める。

これは世界大会で中途半端に終わった因縁の戦い――“アメリカのリベンジマッチ”。あの時、アメリカは不可解なラグに悩まされ、日本もどこか後味の悪さを抱えたまま優勝を掴んだ。

今日こそ、互いが胸を張って語れる「本当の決着」がつく。


「レディース・アンド・ジェントルメン――待ちに待った一戦!日米、魂の決戦です!」

実況の声が会場を震わせ、観客は総立ち。手拍子、口笛、名前を叫ぶ声が渦のように広がる。


最初のオフェンスを決めるコインがトスアップされ、スタートオフェンスはアメリカ!が制した。客席から「イーグルーー!」という歓声が飛ぶ。


序盤からアメリカは圧巻の個人技を見せつける。

シルキーがトップで股の間にボールを通すレッグスルーを繰り出し、ディフェンスを揺さぶる。

「速い! シルキー、切り込む!」

さらに『チェンジオブペース』――あえて一度動きを緩め、相手が油断した瞬間に爆発的な加速で抜き去る緩急自在のドライブでギアを上げると、わずかに空いたスペースから飛び上がり、空中停止したような姿勢からプルアップジャンパー(ジャンプシュート)を沈めた。

「彼女は、3Pだけじゃないのか?」

Hare Showが驚愕を口走るが、日本も負けてはいない。


Hare Showが『スターターステップ』で一歩大きく踏み出し、一瞬で重心を前に乗せて相手の足を止めると、すぐさまボールを背後へ回す『ビハインドザバックパス』を繰り出した。

「おおっ! 背中を通した!」

観客が一斉にどよめく。ボールはマジックのようにYUTAの手に収まり、彼はボールを外側へ押し出すフェイントから内側へ引き戻すインサイドアウトで相手を翻弄する。

そこへ走り込んだQUEENが、相手を背負ったまま独楽こまのように体を反転させるロールターンでゴール下に切り込み、最後は、指先を転がすようにしてボールに順回転をかける『フィンガーロール』で柔らかくシュートを沈めた。


「決まったぁー! 日本もまけていないー!」


アメリカの攻撃。巨躯を誇るアンドレが、重戦車のごとき勢いでペイントエリアへ突っ込んでくる。その圧倒的な筋肉の壁に圧殺される覚悟しながら、NOVAはテイクチャージの姿勢でその衝撃を真正面から受け止めた。


「うわぁ、止めた!」

「あの重戦車を正面で受けるのかよ!」

観客のどよめきがスタジアムを揺らす。コートに倒れ込んだNOVAを仲間たちが心配そうに覗き込んだが、彼女は立ち上がりながら、胸の内で奇妙な違和感を感じた。

(……今のアンドレ何?おもったより軽い)

視界を塞ぐほどの分厚い胸板、丸太のような両腕。その外見から予測される「骨を砕くような重圧」は来なかった。

確かに激しい衝撃ではあったが、まるで、巨大な風船を押し返したような、どこか空虚な手応え。


NOVAは脳裏をかすめた疑問を抱えながらも、小さく苦笑いした。

「そう……簡単には抜かせない」

NOVAは『ヘジテーション』で一瞬静止して相手の重心を浮かせると、両足を交差させて左右を瞬時に入れ替える『シザーステップ』で逆を突く。

さらに、突き出したボールを魔法のように一気に引き戻し、相手のアンクル(足首)を砕かんばかりに翻弄する超絶技巧『シャムゴッド』を炸裂させた。

「おおおおっ、出たー! シャムゴッド!」

観客が総立ちになる。そのままステップバックから放たれたスリーポイントが、真っ白なネットを激しく揺らした。


「決まったぁぁぁぁ! 日本、同点ー!」


勢いに乗る日本。YUTAが『チェンジオブペース』に、上半身を前後に揺らす『ロッカーモーション』を組み合わせ、椅子に座るような低い姿勢からDFのタイミングを外すと、ふわりと高く放り出すスクープショットを沈める。

「日本、完全に乗ってきた!」

攻守がめまぐるしく入れ替わる。


イーグルは、獲物へ飛びかかるような大股のジャンプ『ギャロップステップ』で一気に間合いを詰めると、そこから後方へ飛び退きながら放つ『フェイドアウェイ』を披露。

「空中で後ろに下がった!?」

実況が叫ぶ。ボールは完璧な放物線を描き、リングに吸い込まれた。


観客席は拍手と雄叫びで揺れた。

アル=ナジール戦で見た「一糸乱れぬ歓声」とは違い、ここでは誰もが思い思いに叫び、笑っている。NOVAは胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。

「……やっぱり、こういうゲームが気持ちいい!」

QUEENもちらりとNOVAを見たが、何も言わず、不敵な笑みを浮かべて前を見据えた。


残り十秒。戦況は一進一退、スコアは同点。アメリカボール。イーグルがトップで構える。

NOVAが、全身の神経を研ぎ澄ませて正面から対峙した。

イーグルの瞳から一切の感情が消え、機械的な冷静さと野生の獰猛さが同居する異様なプレッシャーがNOVAを襲う。

イーグルは左へ爆発的な一歩を踏み出した。NOVAは死力を尽くしてこれに反応し、コースを塞ぐ。だが、それは誘い(いざない)に過ぎなかった。

イーグルは踏み込んだ足を軸に、『ロッカーモーション』を極限まで加速。上半身を激しく前後左右に揺さぶり、NOVAの予測回路をオーバーロードさせる。

「……そこだッ!」

NOVAがボールを奪おうと手を伸ばした刹那、イーグルの指先が魔法のようにボールを操った。


『シャムゴッド』――。

一度大きく突き出したボールを、物理法則を無視するような鋭さで手元へ引き戻す。NOVAの重心は完全に虚空を掴まされ、前のめりに崩れる。

だが、イーグルの追撃は止まらない。引き戻したボールをそのまま逆の手へ通し、『シザーステップ』で左右のスタンスを瞬時に入れ替える。NOVAは必死に踏ん張ろうとするが、すでに限界を超えていた彼女の膝が、自らの体重とイーグルの放つ「負の加速度」に耐えきれず、悲鳴を上げた。

――アンクルブレイク。氷の上を滑るように、NOVAの足がもつれ、コートに膝をつく。


「……NOVA。君は素晴らしいプレイヤーだ。だが、まだ『SAMURAI』には届いていない」

イーグルはそうつぶやくと優雅に、そして悠々とNOVAの真横を通り抜けた。

もはやディフェンスのいないゴール下。イーグルは跳躍することさえせず、練習中のように静かに、レイアップでボールをリングに置いた。


――ブザー。

ボールがネットを通過する音と、試合終了の長いブザーが重なった。

イーグルは、倒れ込んだNOVAを見下ろすことなく、イーグルは静かに自陣へと歩き出す。完璧な技術。完璧な支配。


観客席は一瞬の静寂の後、今日一番の、しかしどこか恐怖すら混じった大歓声に包まれる。NOVAはコートに手をついたまま、震える指先を見つめていた。自分が今、何をされたのか。その意味を理解したとき、彼女の視界はアル=ナジールの冷たい月光のように、清々しさに包まれていた。


「最高のゲームだー!」

「これがV.B.L!」

観客の各所で叫ぶ声が聞こえる。

「……惜しかったな」

YUTAが息を整えながら呟く。

「でも、最高の試合だった」

QUEENが胸を張る。NOVAは悔しさを噛み締めながらも、心の奥から笑みを浮かべていた。

「これが、V.B.L……魂のぶつかり合いだ!」

Hare Showが大げさに両手を広げ、観客に応える。

会場はさらに大きな拍手で包まれ、誰もがこの瞬間“真のV.B.L”を感じていた。


冷たい月夜、アリーナの歓声が砂漠の風に溶けていく。しかし、アル=ナジール情報局の地下深くでは、収集されたNOVAの脳波データが、”HARMONIA”の揺り籠の中で「再構築」されていた。

彼らの真の狙いは、単なるデータの収集ではない。 明日行われる「日本対アル=ナジール戦」。そこでNOVAが再び「ゾーン」へ到達し、その精神が肉体の限界を超えた刹那、彼女の意識をシステム全体へと『昇華』させること。


NOVAを、この幸福なディストピアを維持するための永久的な管理AI――““HARMONIA”の生贄”として、永遠のバーチャルに吸収する。 逃げ場のないチェックメイトの盤面が、アリーナという名の祭壇に、着々と整えられていた。




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