評価されない僕
仕事でつまずくと、人によっては恋愛でつまずくよりも深く傷つく。「自分は必要とされていない」と感じる瞬間、人は大きな絶望を味わう。でも、そんなときにだけ見える景色がある。
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仕事で失敗する瞬間は、いつも突然やってくる。予兆なんてない。むしろ「今日はうまくいきそうだ」と思った日に限って、足元をすくわれる。今日の僕がそうだった。
朝から資料のチェックをして、質問されそうな箇所には補足資料をつけた。三日間、毎晩遅くまで残業した。「これならいける」と思っていた。会議室に入るまでは。「この資料、全然ダメだよ。お前、何を見て作ったの?」上司の声は静かだった。
静かな声ほど、人を深く刺す。僕は言い訳を飲み込み、ただ頭を下げた。会議室の空気が一瞬で冷えた。
同期の中野は、僕の隣で淡々とメモを取っている。今日の彼は完璧だった。上司に褒められ、社長にも気に入られ、次のプロジェクトリーダーにも選ばれた。
僕はというと、「お前はサポートでいいから」その一言で片付けられた。サポート。
便利な言葉だ。褒め言葉でもなければ、期待でもない。ただの脇役だ。
会議が終わり、僕はトイレの鏡を見た。「俺、何やってんだろう」思わず声に出た。
*
帰り道、同期の中野からメッセージが来た。《今日はお疲れ。また飲みに行こうぜ》優しいやつだ。でも、その優しさがイラつく。僕は彼に嫉妬している。認めたくないけれど、心のどこかでずっと比べている。
努力しても報われない。頑張っても評価されない。そんな日が続くと、自分の価値が分からなくなる。
家に帰ると、机の上に置きっぱなしのノートが目に入った。日記とまでは言えないが、昔からうれしいことや嫌なことがあると、メモ程度に書き留めてきたノートだ。ペラペラとめくると、昔の僕が書いた言葉があった。《努力は報われるとは限らない。でも、努力しなかった日は必ず後悔する》
いつ書いたのかは思い出せなかった。
でも、今日の僕に向けられた言葉のように思えた。こんなことあるのかと、少し涙ぐんだ。僕はノートを閉じ、深く息を吸った。
明日も評価されないかもしれない。「サポートでもしてろよ」と言われるかもしれない。それでも仕事に向き合うしかない。僕は僕のやり方で、僕のペースで、少しずつ前に進むしかないのだ。
***
光の君にも、評価されない時期があった。
どれだけ才気にあふれていても、どれだけ人に愛されても、政治の世界では思うようにいかない日々が続いた。努力が形にならない時期が、確かにあった。けれど、のちに気づく。評価されなかった日々こそが、自分を強くしたのだと。
そもそも、人は順風満帆なときには成長しない。むしろ、誰にも見向きされなかった努力が、のちになって静かに効いてくる。「僕」の今日の挫折も、きっとどこかで報われる時が来る。
光の君がそうだったように。
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