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転生人語 ー紫の語りー  作者: 岩田 ヒロ
夕顔(ゆうがお)

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匂いが連れてくるあの頃

 何がきっかけで恋に落ちるのかは、昔からよく分からない。一瞬の気の迷いなのか、ふとした拍子に心が揺れることがある。匂いも、そのひとつかもしれない。


 ***


 彼女と二回目のデート。映画のあと、ビールを飲みながらピザをつまんでいた。


 今日も彼女は、僕の話を楽しそうに聞いてくれた。その笑顔を見ていたら、急に昔のことを思い出した。


 *


 中学一年の頃、ある女の子と二人で帰った。

 彼女の家の近くの公園のベンチに座り、雑誌を見せながら一生懸命説明してくれた。


 雑誌の特集は「男の子と女の子の体の違い」。


 最初は真面目に聞いていたけれど、生理の話は正直どうでもよかった。本当に知りたかったのは「どうやって子どもを作るのか」だった。


 退屈していた時、ふと“匂い”を感じた。甘くて、すっぱくて、いつまでも嗅いでいたくなるような匂い。間違いなく、彼女から漂っていた。


 あれがフェロモンなのかは分からない。


 けれど、その後も何度か同じ匂いを嗅いだことがある。仲の良い女の子たちから。


 その匂いを嗅ぐと、まず中学の時のその子を思い出すのが僕の癖だ。そして、目の前の女の子に夢中になる。


 彼女たちと別れたあと、なぜか空気が薄くなるように感じ、深呼吸をすると、ようやく現実に戻る。もう例の匂いはしない。


 僕は思う。あれは男をダメにする一種の麻薬みたいなものを、彼女たちは無意識に発しているのだ。しかも、好きな男の子だけに。


 今、彼女からその匂いがする。


 ***


 そもそも、匂いは本能に直接作用するもので、説明がつかないことが多い。


 私も昔から石鹸の匂いや汗の匂いにずいぶんやられた思い出がある。


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