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転生人語  作者: 岩田 ヒロ


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52/59

転生人語#052 ーAI翻訳の恋―

 昔は手紙一枚書くのに何度も筆を置いて長い時間悩んで、たった一言を伝えようとした。


 今は指先一つで言葉が準備され、しかもどんな国の人でも会話がリアルタイムで出来る。


 でも本当に伝えたい思いほど、ぎこちなく、辿々しいものになり、そんな声こそ人の心にたどり着くのかもしれない。


 ***


 オンラインで英会話を始めた。仕事で海外の仲間、顧客とのやりとりが増えたからだ。費用も会社負担だし、スマホで一対一のレッスンだから恥ずかしくない。会社が終わってから家でやれるので気楽に始めた。


 しかし今は別の理由で毎日レッスンを受けている。


 先生のエミリーはいつも画面越しに優しく笑っている。日本の夜とアメリカの朝がレッスンの時間。最初はただの先生だったが、彼女が僕の拙い英語を根気よく聞いてくれるたびに少しずつドキドキと意識するようになってしまった。


 趣味は?食べ物は何が好き?日本来たことある?アメリカのニュースの話題など僕たちは月曜日から金曜日、毎日20分間会話した。


 最初は長く感じた20分も、最近は短く感じる。もっと彼女のことを聞いてみたかった。徐々に情が湧いてくるという感じだ。


 “You’re improving. I can feel it.”

 そう言われて、飛び上がるほど嬉しかった。褒められたからではなく、僕の言葉を受け取ってくれている気がしたからだ。


 レッスンが終わると復習を兼ねてメッセージを送る。ボキャブラリーがないから、AI翻訳を使う。


「もっと話したい」

 “I would like to talk more.”

 なんとなく固くて、言いたいこととズレてる気がしたけど、送信する。


 ある日、彼女が言った。

 “Your messages are very polite. But… sometimes I feel distance.”


 距離?アメリカと日本の距離?の訳はないよなと思って、こっそりAIを使う。


「距離なんてない。もっと近づきたいよ」と打ち込むと、

 “There’s no distance. I want to get even closer to you.”

 と画面に出て来たので、読み上げた。


 彼女は少し考えてから言った。

 “I see. Thank you. But I want to hear your English. Not AI’s English. Don’t use Google translation.”


 やっぱ、バレてたか。


 僕の英語は下手だ。ボキャブラリーもないし、文法も怪しい。間違って誤解されたらやだ。でもAIは僕の気持ちを翻訳出来る訳はない。


 次のレッスンで僕は決めていた。AIは使わない。


 レッスンの最後、彼女がいつものように言う。

 “Any questions?”


 僕は深呼吸して、ゆっくり話した。


 “I like talking with you. Not for English lesson. I am interested in you. You make me happy. I want to meet you someday.”

 顔が熱くなった。


 画面越しの彼女は少し驚いた顔して、うれしそうに答えてくれた。


 “So sweet. Thank you. I’m glad you told me in your words.”


 やば、なんか通じたかもしれない。


 レッスンが終わった後、彼女からメッセージが届いた。


 “Your English was not perfect. But it was honest. I like it.”


 完璧じゃなくていい。不完全でも伝わるものがある。このまま続けて、彼女にいつか会いに行きたいと思った。


 ***


 そもそも、言葉というものは便利になればなるほど機械的になり、人の心の言葉から離れていくことがある。


 翻訳が正確になればなるほど、「ためらい」や「照れ」や「熱」は伝わらなくなる。


 恋愛なんて、そもそも言葉にしづらい気持ちの集まりだから、うまく伝えることはなかなか難しいのだ。


 昔の恋文は誤字すらも意味があるかもなんて想像したものだ。自分の言葉、声で伝えようとする者の方が誠実に見えるのはわたしだけか。


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 読んで頂き、ありがとうございます。

 気に入って頂けたら、フォローや応援と評価をもらえると嬉しいです。


 #100まで続けます。

 ようやく転生人のプロファイルを確定しました。

 超有名人です!

 #100までには明らかになるようにします。

 みなさん、誰だか予想しながら、お付き合いください!

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