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転生人語  作者: 岩田 ヒロ


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転生人語#049 ー育ててしまう恋―

 好きになると、人は相手を変えたくなる。

 優しさのつもりで、支配に似たことをしてしまう。


 若い頃は、導かれるままに染まっていく。

 導く側は、その変化に安心する。けれど、大人の恋は対等でないと続かない。


 育てられた側は、いつか飛び立つ。今日も、その痛みに気づいた女性がいる。


 ***


 彼と初めて会ったとき、まだ幼さが残っていた。言葉は荒く、服のセンスも子どもっぽく、どこかぎこちない。その不器用さに、わたしは惹かれた。


 “わたしがいなきゃダメだ”そう思った瞬間から、恋ではなく“育てること”に夢中になっていた。


 似合う服を選び、

 言葉遣いを整え、

 仕事の相談に乗り、

 人との距離感まで教えた。


 彼は素直に吸収し、どんどん洗練されていった。それが嬉しくて、わたしはさらに踏み込んだ。


 毎日綺麗なハンカチを持ちなさい。

 爪は短く切りなさい。

 店員さんには必ず「ありがとうございます」と言いなさい。


 気づけば、母親みたいなことまで言っていた。


 それでも彼は自信をつけ、いい男になっていった。

 わたし好みの、わたしが作った彼に。


 けれど、ある日ふと胸をよぎった。

 “わたしじゃなくても良くなる日が来るかも”


 その予感は、静かに、心にくすぶっていった。


 ある日、彼が職場の女性の話をした。明るくて、よく笑う子。彼は楽しそうに話す。


 わたしが教えた言葉遣いで、

 わたしが選んだ服を着て、

 わたしが育てた彼が、

 わたし以外の誰かと笑っている光景が浮かんだ。


 わたしは笑って聞いていた。でも、その笑顔の裏で、何かが音もなく崩れた。


 “育てたのはわたしなのに、彼が見ているのはわたしじゃない”


 その痛みは、気づかないふりをしても膨らんでいった。


 帰り道、彼の背中を見ながら思った。

 もう、最初の彼ではない。

 彼を変えたのはわたしだ。


 そして変わった彼は、もうわたしを必要としていないのかもしれない。


 取り残されたのは、わたしのほうだった。


 虚しさと、少しの誇らしさが胸に残った。


 あなたはもう、わたしを必要としていない。


 ***


 そもそも、人は人を思い通りには育てられない。


 変わるのは自由で、変わった先で同じ関係にいられる保証なんてどこにもない。恋は育てるものじゃなく、並んで歩けるかどうかで決まるのだ。


読んで頂き、ありがとうございます。

気に入って頂けたら、ブックマークや評価をもらえると嬉しいです。


#100まで続けます。

ようやく転生人のプロファイルを確定しました。

超有名人です!

#100までには明らかになるようにします。

みなさん、誰だか予想しながら、お付き合いください!

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