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転生人語 ー紫の語りー  作者: 岩田 ヒロ
紫の上(むらさきのうえ)

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SNSの既読

 誰かを想っていると、ちょっとした沈黙やすれ違いが不安を呼び起こす。そんな“待つ時間”の中だけで分かる気持ちがある。


 情報の多い今では、たった一つの連絡が埋もれてしまうこともあるのかもしれない。今もそんなことにもがいている僕がいる。


 ***


 彼女の既読がつかない。一時間、二時間、三時間。スマホを開いては閉じ、閉じてはまた開く。通知が来ないだけで不安になる。


 何をしてるんだろう。

 忙しいのか。

 僕と分かって無視してるのか。


 昼休み、同僚が笑いながら言った。

「既読つかないくらいで不安になるなんて、惚れてる証拠。振り回されてるよ」返す言葉がなかった。


 もっと落ち着いた恋愛をしたい。こんなにも不安で、もろい関係なんて疲れる。


 SNSなんて無ければいいのにと思う。既読通知にビクビクしてるなんて、あんまりだ。既読もつかない、返事もないなんて耐えられない。


 少し前の電話の時代なら、電話がつながらないとイライラしていたのだろう。


 もっと昔は手紙が届くのを待ち、何日も何週間も返事を待っていたに違いない。


 今の僕は既読がつくのを待つだけでも耐えられないのに、何度かけても電話に出ないとか、手紙の返信を何週間も待つなんて想像がつかない。


 夜、ベッドに横になりながらうとうとしていると、スマホの画面が光った。やれやれと思ったが、ニュースアプリの通知だった。

「またか…」小さくため息をつき、画面を伏せる。


 既読がつかないとは「嫌われている」という訳ではないはずと、何度も言い聞かせる。


 期待して、落ち込んで、また期待して、また落ち込む。そんなことを繰り返すと、僕がどれだけ彼女のことを想っているかを知る。


 深夜一時。眠れずにスマホを手に取る。画面には未だに既読が現れない。僕の送ったメッセージがそこに残っている。


 待つ時間は苦しい。その苦しさの中で、僕の気持ちの深さを知る。


 スマホを閉じて、目を閉じる。明日になれば彼女の既読がついていると信じて。


 ***


 既読がつかないことで、不安でしょうがなくなる人もいる。


 そもそも、既読がついて返信が来たとしても、安心できるのか。


 そう思うと、待つ時間は長いけど、自分の気持ちがはっきりしていく。


 昔は待つ時間で「腹が座る」なんてことも言っていた。


 今は便利になったおかげで、せっかちに答えを急ぎ過ぎる。


 もっと悠長な気持ちを持てれば、もっと楽しめるのに。


読んで頂き、ありがとうございます。

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