転生人語 #042 ―手に入れたもの、失ったもの―
女性が活躍する時代になった。首相も女性になり、会社でも女性管理職は珍しくない。 それでも、仕事とプライベートの両立は、やっぱり簡単じゃない。人は何かを手に入れるたび、何かを置いていく。それは、どの時代でも変わらない。
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今日は、わたしの五十歳の誕生日。
部下にも恵まれ、大きなプロジェクトをいくつも成功させてきた。展示会ではお洒落なスーツを着て、大勢の前でプレゼンをした。取引先との接待にも積極的に参加し、顔を広げた。たくさんのお客様、偉い人たちと渡り合ってきた。男性社会の中で、女性として対等に仕事ができたことは、誇りだ。
こっそりエステに通い、ジムにも通い、週末はランニング。体型をキープし、アンチエイジングにも努めてきた。もう少し頑張れば、会社初の女性役員になれるはず。四十歳で課長になってから、ずっと全力で走ってきた。
後悔なんて、ない。負け惜しみでもない。
わたしは、わたしの人生を選んできた。
ただ――女として“ひとつだけ”選ばなかったものがある。
子どもを産むこと。
結婚はしてもしなくてもよかった。でも、女としての機能を使わずにここまで来た。それだけは、胸の奥に小さな影を落としている。
だから、二十歳のわたしに手紙を書くことにした。決して届くことのない手紙を。書いたら燃やしてしまおう。そして、また仕事に戻ろう。
拝啓
二十歳のわたしへ
お元気ですか。
いくつか、五十歳のあなたからアドバイスをします。
若さは美しい。
そして、若さはあなたが思う以上に強い武器よ。
早く親元を離れて、一人暮らしをしなさい。
自由は、あなたを強くする。
バージンに価値なんてない。
でも、自分を粗末に扱う必要もない。
誰かを本気で好きになる経験は、早くしておいた方がいい。
恋愛はもっとがむしゃらでいい。
あなたは思っているよりモテるのだから。
お酒の勢いに頼ってもいい。
ただし、心が動いた相手とだけにしなさい。
内緒にしておけば、誰にもバレない。
出来ちゃった婚でもいい。
子どもを産むという選択肢を、怖がらないで。
敬具
五十歳のあなたより
若さは武器。でも、若さだけがすべてじゃない。
手に入れたものも、失ったものも、どちらもわたしの人生だ。これからも、わたしはわたしの選んだ道を歩いていく。
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そもそも「いのち短し恋せよ少女」とは言うが、若さ以外にも武器はある。そして、武器をどう使うかは、その人の生き方次第だ。
人は皆、何かを得て、何かを失う。その重さを量る天秤は、他人には見えない。だからこそ、人生は面白いのだ。
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