転生人語 #039 ―天気のいたずら―
天気は予測はできても、コントロールはできない。たまたま降る雨や思いがけない晴れ間が、日常に小さなドラマを生む。特別な出来事がなくても、雨の日はなぜか記憶に残るものだ。
***
朝から雨が降っている。しとしとと優しい雨だ。ざあざあ降りなら外出を諦めるけれど、この程度なら傘をさして駅まで歩くのも苦ではない。
外は薄暗く、部屋の電気をつけるか迷う明るさ。こんな日曜日の朝は、気持ちまで少し沈む。洗濯しても乾かないし、掃除してダラダラするか……そんなことを考えながらソファでゴロゴロして、窓の外を眺めていた。
それでも貧乏性なので、せっかくの休日を無駄にしたくない気持ちがむくむくと湧いてくる。
彼女に連絡しようかと思っていたら、先にLINEが来た。「ひま?」と。
「ひまだから遊びに来て」と返すと、「うん」とだけ返事が来た。
一時間後、そろそろ着く頃だと思ったタイミングで、雨が急に激しくなった。アパートの窓に大粒の雨が叩きつける。
「ピンポーン」。
ドアを開けると、彼女がびしょ濡れで立っていた。駅を出た途端、横なぐりの雨にやられたらしい。
彼女のジーンズがずぶ濡れだったので、僕のジーンズを貸し、濡れた方はハンガーに吊るして乾かした。
「こんな日は出かけない方がよかったかしら?」
「雨の日に一人でいると暗くならない?」
「たまにはいいのよ。雨の日にしかできないことを考えるの」
「そうかな。来てくれて部屋が明るくなったよ」
彼女は僕のジーンズの裾をくるくると折りながら、「お昼ご飯どうする?」と聞いてきた。
「この雨だし、家にあるもので何か作るか」
「何があるの?」
「卵、ベーコン、牛乳、玉ねぎ」
「パスタ茹でればカルボナーラできる」
「作れるの?」
「うん」
「怪しいなあ。あたしが作ってあげる」
彼女が作ったカルボナーラと、インスタントのコーンスープ。
一人で食べるより、二人で食べるご飯はやっぱりおいしい。五月の雨で少し肌寒い部屋が、いつもより暖かく感じた。
三時頃、雨が上がり、外が急に明るくなった。
「今日は天気が忙しく変わるわね」
「うん、日が差してきた」
「散歩でも行こうよ」
「いいね」
僕のジーンズの裾を上げて歩く彼女が、なんだかいつもより可愛く見えた。
しとしとの雨から、びしょ濡れになる雨へ。そして最後はカラッと晴れた今日の一日が、とてもいい休日になった。
***
昔から、天気を味方にした話はたくさんある。
戦国時代の合戦でさえ、天候が勝敗を左右した。
恋愛もまた、天気に左右されることがあるのだろうか。
そもそも、雨が降るか晴れるかなんて誰にも分からない。
恋だって同じで、思わぬところでふいに晴れ間が差すものだ。
読んで頂き、ありがとうございます。
気に入って頂けたら、ブックマークや評価をもらえると嬉しいです。




