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転生人語 ー紫の語りー  作者: 岩田 ヒロ
紫の上(むらさきのうえ)

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初対面なのに知っている気がする

紫の上という女は、幼き日に源氏の手に導かれ、慎ましい心ばえと清らかな美を育まれた人である。成長とともに源氏の想いは深まり、彼女もまた静かに寄り添う情を抱くが、その絆は甘やかさだけではなく、選ばれた道ゆえの孤独も伴う。家を守り、源氏の心の拠り所となりながら、胸の奥では言葉にできぬ切なさが揺れ続ける――その静かな強さこそ、彼女の美である。

 なぜか懐かしく思うような出会いがある。何か縁があったのかもしれない。昔から、人はそんな感性を大切にしてきた。


 ***


「今まで内緒にしてたけど、今日、話そうと思ったことがあるんだ」


 そう切り出したものの、やっぱりやめようかと思い直した。気持ち悪いと言われたらショックだ。


 でも、もし彼女が「私も同じこと感じてた」と言ってくれたら——そんな期待もあった。


「何よ、もったいぶらずに話してよ」


 ああ、でもやっぱりやめよう。きっと僕の勘違いに違いない。


「悪いこと?」

「ぜんぜん違うよ」


「あー、何か嘘ついてたとか?」

「そんなんじゃない」


 彼女は真剣に考えている。

「何でもない。忘れて」

「無理、気になる」

 少し怒っている。そりゃそうだ。


「分かった。笑わないで聞いて」

「うん」


「まずね、俺、変な宗教とかやってないの信じて」

「うん」


「それから、霊感とかお化けとかも信じてないから」

「うん」


 深呼吸した。

「えーとね……昔ね、僕たち会ったことあるよね」

「は?」


「昔ってね。前世の時のこと」

「……」


「ほら、やっぱ言わなきゃよかった」

「あの、何言ってるか分かんないよ」


「たぶんね、僕たちは前世でも付き合ってた気がしてならないんだ」

「へぇー」彼女は笑った。


「なんかさ、分かるんだよね。君のこと。すみずみまで」

「すみずみ?」


「そう。このご飯好きかなとか、これ喜ぶだろうなとか。全部当たるというか、分かるというか」

「気持ちわるいね」


「そう言われると思って、内緒にしてたんだよ」

「ううん……そう言われて、うれしいよ。ありがとう」


 ***


 こっちも、びっくりした。そもそも、君の前世はわたしだが、わたしは彼女のことを初めて見た気がする。それとも、わたしの記憶よりも、我々の遺伝子が覚えているのかもしれない。


 昔からこんな言葉がある。


『袖振り合うも他生の縁』


 前世からの巡り合わせがあるやもしれない。だからこそ、日常の些細な出会いや人とのつながりを大切にしないといけない。


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