転生人語 #038 ―強行突破の恋―
くよくよ悩むくらいなら行動した方がいい。そんなことは分かっているのに、いざ自分がその場に立つと足がすくむ。
成功した人の話だけを聞いていると、まるで行動することが簡単に思えてしまうけれど、実際はそうでもない。
人は時に、理屈より勢いが未来を動かすことがある。今日は、そんな“勢いが人生を変えた若者たち”の話を語ろう。
***
「なぁ、知ってる? Yに彼女ができたらしいぞ」
「え、YってSちゃんのこと好きだったよな」
「そう。そのSちゃんと付き合い始めたんだって」
「よかったじゃん」
「それがさ……」
YはSちゃんに、ほとんど勢いだけで告白したらしい。
•好きです
•付き合ってください
•ずっと好きでした
•Sちゃんのためならなんでも頑張る
•なんでも言うこと聞く
•もし振られたら学校来れません
•お願いします
「なんか脅迫みたいだな」
「強行突破って感じだよな」
「でもSちゃんはOKしたんだろ?」
「噂だと、“学校来れなくなったら自分のせいにされるの嫌だから”ってOKしたらしい」
「優しいじゃん。でも、まったく嫌いじゃなかったんじゃないの?」
「それは本人しか分からないよな」
恋愛って難しいようで、案外きっかけは些細なことなのかもしれない。そんなふうに思った。
これは僕らが高校2年の時の話。そして10年後、彼らは結婚した。
結婚式の二次会で、僕は彼女に聞いてみた。
「高校2年の時のYの告白、覚えてる?」
彼女は一瞬だけ目を細めて、懐かしむように笑った。
「うん、もちろん。忘れないよ。いろいろ約束してくれたから」
あの噂は間違いで、彼女は当時、彼の“提案”を受け入れただけだったのかもしれない。そして、その後ゆっくりと、Yのことを好きになっていったのだろう。
Yを見習おうと思った。
***
恋愛も仕事も、努力してチャンスを逃さず行動し、成功する人がいる。
でも実際は、チャンスを前に立ち止まってしまう人も、行動しても結果が出ない人も多い。
そもそも努力の仕方が間違っていることだってある。
結局のところ、成功も失敗も、人の数だけ“形”がある。
だからこそ、誰かの成功を羨むより、自分の一歩を信じて踏み出すしかないのだと思う。
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