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転生人語  作者: 岩田 ヒロ


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転生人語 #027 ―独り占めの快感―

 人には言えない悲しい過去や、思い出すと顔が熱くなるような出来事が、わしにはたくさんある。たまにそれを思い出して、自分を戒めたりもする。


 では、人には言えない“楽しみ”はあるのか。わしにはあまり思いつかない。


 わしには思いつかないが、転生してきた“僕”には、どうやら内緒の楽しみがいくつもあったらしい。


 ***


 僕は若い頃から、こっそり楽しむことが好きだった。ここで話すと秘密ではなくなるけれど、実名が絶対に分からない範囲で少しだけ共有してみたい。


 高校生の頃、僕はクラスで人気の女の子と内緒で付き合っていた。デートはわざわざ遠い街まで行き、二人でクラスの事件や笑い話をするのが楽しかった。


 社会人になってからも、職場の女の子とこっそり付き合ったことがある。仕事中の彼女と、二人きりの時の彼女。そのギャップにドキドキした。職場が同じだから話題も尽きなかった。


 朝早く起きてランニングすることも、僕にとっては小さな秘密の楽しみだ。走って、シャワーして、プロテインを飲むと、生きててよかったと感じる。人に言っても分からないだろうから、あえて秘密にしている。


 最近は、友人に連れていかれた隠れ家的なスナックがある。マンション最上階の、看板のないドア。電話をすると内側から開く。少し高いが雰囲気が良く、女の子たちも可愛い。この部屋がスナックだなんて誰も思わないだろう、というところがまたいい。


 平日に休んで、誰もいない海でサーフィンするのも好きだ。週末は混んでいて気を使うが、平日はほぼ貸し切り。これも内緒にしておきたい。


 なぜ僕は、こんな“内緒の楽しみ”が好きなのだろう。

 秘密の花園を独り占めしたいのかもしれない。バレると、その楽しみが奪われる気がするのだ。


 ただ、こういう秘密事を開拓するには、意外と努力や勇気がいる。高校の彼女や職場の彼女に告白するリスク。朝早く起きて走り出す前の億劫さ。秘密のスナックに入る時の妙な緊張。平日にサーフィンするために有給を取る時のビクビク。


 そうか。

 この“ビクビク”や“わざわざ”の先に、快感や楽しみが待っているのだ。だから人には勧めにくいし、こっそり自分だけで楽しむものになる。


 できれば、もっと秘密の楽しみを増やしていきたい。

 できれば、人の秘密の楽しみも知りたいが……それはきっと内緒なのだろう。僕も内緒にしておこう。


 ***


 辛いことは共有すると和らぎ、楽しいことは共有すると倍になる。そう思っていたが、彼は“内緒の楽しみを独り占めしたい”と言っている。


 もしかすると今の時代、見える化や風通しの良さが求められるほど、逆に“自分だけの楽しみ”を持ちたい欲が強くなっているのかもしれない。


 しかも今は、秘密を抱え込むための道具が手の中にある。

 スマホは、その“秘密の楽しみ”を独り占めするための最強のツールだ。


 秘密を抱え込むことは、もしかしたら現代の新しい病なのかもしれない。


読んで頂き、ありがとうございます。

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