転生人語 #026 ―母の背中を思い出す日―
昔に比べ、医学はかなり進歩している。昔は諦めなければいけない病気も、今では治せてしまう。それでも家族は心配だ。手術は成功するのだろうか。元気になってくれるのだろうかと。
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母が入院した。狭心症で心臓のバイパス手術をするからだ。全身麻酔の大手術らしく、父と僕は手術前の説明を大学病院の先生から聞いた。
話を聞きながら、昔のことを思い出した。
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僕は小学生の頃、体が弱く、しょっちゅう風邪をひいて扁桃腺が腫れた。母は僕を医者に連れて行ってくれた。熱でぼうっとした頭で、母の自転車の後ろに乗せられたことをよく覚えている。一度は気持ち悪くなって、母の背中に吐いてしまったこともあった。
父はサラリーマンで、夜遅くまで働いていた。母もパートで働いていたので、午前中で学校が終わる日は、家に帰るとお弁当を作っておいてくれた。弟と二人で食べた。暖かいご飯が食べたかったけれど、当時は電子レンジが家になかったと記憶している。
父は怖かった。どうしてそんなに偉そうにするのか理解できなかった。しかし母はよく父の言うことを聞き、僕の前で父の悪口を言うことはなかった。僕が何度か父への不満を母に言ったが、「そんなことないよ」となだめられたことを思い出す。
高校に入ると、母は毎日お弁当を作ってくれた。当時はそんなことは当然だと思っていた。父が夜遅く帰ってから夕飯を作り、それでも朝早く起きてお弁当を作る。昼間はパートも続けていた。きっと睡眠時間は短かったはずだ。
就職して家を出てからも、母は夏や正月になると「いつ帰ってくるの?」と電話をくれた。本当は友だちと遊びに行きたかったが、母の電話で渋々帰省した。
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先生の説明が終わり、手術室に向かう前に母と話すことができた。車椅子に乗った年老いた母を見て、さっき思い出したことも重なり、少し声が詰まってしまったが、それでも母に声をかけた。
「お母さん、手術うまくいくよ。それでさ、親父よりも長生きしてね。親父の面倒見れるのはお母さんしかいないから」
「うん、分かったよ」
母は手術室に向かった。
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そもそも「親の心子知らず」と言う通り、自分が親になって初めてそのありがたみや心境が分かると言われる。親の病気が、そんな気持ちにさせてくれる場合もあるようだ。親が生きているうちに親孝行したいものだが、なかなか照れ臭いもの。でも、よかった。きっと彼の言葉に、お母さんは勇気づけられたに違いない。
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