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転生人語 ー紫の語りー  作者: 岩田 ヒロ
六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)

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癖が語る過去

 昔から、彼氏や彼女の遍歴は、その人の人格や癖を形成していく。いい意味でも、悪い意味でも。


 あなたはどんな影響を、これまでの恋人に与えてきたのだろうか。


 ***

「あたしはハンカチを持たない男の子は嫌い。だって不潔だもの。だからお願い。毎日きれいなハンカチを持ち歩いて」


 僕は昔の彼女にこう言われたことがる。当時は“躾”かと思うくらい、何度も何度も言われた。


 彼女は、ジーンズの後ろポケットに入れても気にならないほどの薄いハンカチを、何枚もプレゼントしてくれた。


 確かに、夏の暑い日に汗を拭くのにハンカチは便利だ。トイレで手を洗った後も拭ける。花粉やアレルギーで出た鼻水も拭ける。くしゃみをする時も、ハンカチで口を覆えば思いっきりくしゃみができる。フードコートでは、場所取りにも使える。


 おかげで僕は、ハンカチを持ち歩くのが完全に“癖”になった。彼女と別れても、その癖は抜けなかった。


 僕が常にハンカチを持っていることに気づいた新しい彼女は、こう言った。


「いつもハンカチ持ってて、えらいね」


 そして、こう付け加えた。


「あなたのお母さんでしょ? ハンカチ持ちなさいって、ちゃんと躾けたのは。お母さん、厳しそうね」


 母じゃなくて、昔の彼女だよ。そうは言えなかった。


 母はそんなことを気にするタイプではない。この先、もし彼女が母と話す機会があって、ハンカチの話題になったら困るなと思ったが、そんな未来のことはその時に悩めばいいと思った。


「そうそう。でも、ハンカチ持ってるといろいろ便利だよ」


「そうだよね。でも、男の子がハンカチ持ち歩くって珍しいと思うよ」


 どうやら、彼女の元彼たちはハンカチを持ち歩く習慣がなかったらしい。


 ***


 そもそも、元彼・元彼女と今を比較することに意味はない。ただし、これまでの遍歴で“先入観”は確実に作られる。


 そんな先入観を覆すような自分でいたいし、

 人は昔から、そうやって新しい恋人に夢中になるものだ。


 過去のことは、気にしないほうがいい。


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