なんでもいいよ、の温度
「なんでもいいよ」という一言には、人の温度がそのまま宿る。 同じ言葉なのに、言う人によって、受け取る人によって、まるで別の意味になる。
ある人には優しさで、ある人には無関心で、ある人には委ねる気持ちで、ある人には投げやりに聞こえる。
たった六文字なのに、こんなにも解釈が揺れるのは、きっとその言葉が“選択”と“気持ち”の境界にあるからだ。恋愛でも、友情でも、日常のちょっとした場面でも、 「なんでもいいよ」は、相手の温度を試すリトマス紙みたいな役割を果たすことがある。
そんな六文字に左右されてしまう、ひとりの女の子がいる。
***
あたしには、昔から変な癖がある。
「なんでもいいよ」と言われると、一瞬で冷める。どんなに好きでも、魔法が解けるみたいに、すっと温度が下がる。
相手に悪気がないのは分かっている。でも、あの言葉を聞くと、まるで急に現実に戻されたような気がしてしまう。
何も言わずにその場を離れ、電話もせず、電話にも出ず、そのまま自然消滅させたこともあった。きっと彼は、あたしが冷めた理由を最後まで知らなかったと思う。
「そんなの極端すぎるよ」と友達は言う。自分でもそう思うけれど、どうしても直らない。
男友達に話すと、彼は笑いながら言った。
「たぶんさ、暗に“何か食べたいものある?”って聞いてるだけだよ」
「だったら最初から“食べたいものある?”って聞けばいいでしょ。なんでもいいって、なんか……諦めてるみたいに聞こえるの」
そう。“なんでもいいよ”って、投げやりで、無責任で、どこか失礼。あたしは、あの言葉を平気で言う人が苦手だ。
あたしだけなのかな。
***
でも、逆に女の子に「なんでもいいよ」と言われると、男の子はやる気が湧くこともあるらしい。それは男心ってやつなのだろうか。
同じ言葉なのに、言う側と受け取る側で、こんなにも意味が変わる。
レディー・ファーストという言葉があるけれど、その“正解”が何なのか、いまだに私にも分からない。
たぶん、言葉じゃなくて、その人の気持ちと相性次第なのだろう。
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