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ゴゴ  作者: しいな ここみ


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6/9

焼肉を食べながら

 楽しい焼肉パーティーが始まった。


 スティーブが『JOJO園』から牛肉を10キロ買い取ってくれた。

 

 オレは生でいいのだが、それだと一瞬で食い切ってしまう。だからだ、オレも行儀よく、肉が焼けるのを待ってるのは。


「ふぅん?」

 スティーブの話を聞きながら、ゼンゾーが言う。

「なるほどね、ミアちゃんは相続争いに巻き込まれて、命を狙われてるんだね」


「そこでキミの出番だよ」

 ナプキンをエリマキトカゲみたいにつけたスティーブが言う。

「キミは警察官だ。ぜひ、ミアちゃんを守り、そして何よりゴールドスミス家の悪事を暴き、社会的制裁を加えてほしい」


「警察は何かあってからじゃないと動かんからなぁ……」

 ゼンゾーが面白くなさそうな顔でカルビを口に入れた。

「ミアちゃんが危害を加えられてる事実とか、既にあったりするのか?」


「お手伝いさんがいなくなった……」

 ミアが小さな声で言った。

「……でも、警察は動いてくれなかった」


「そうだろうな」

 ゼンゾーがぱくぱくと肉を食べながら、言う。

「警察は権力に弱い。おそらくは『暇を出した』とでも言われ、それを聞いたんだろう。本当は殺されていたのだとしても──」


「だから警察、きらい……」

 とても小さな声でそう言うミアの言葉がオレには聞き取れた。

「みんな強いひとの味方だもん」


「……ま、おれが一人で捜査してみるよ」


 ゼンゾーがそう言ったので、びっくりしたようにミアが顔を上げ、聞いた。


「警察って、二人一組じゃないとお仕事できないんでしょ?」


「おれはダメ刑事扱いされてるからな、大丈夫だ。勝手な行動をしてもスルーしてくれる。それに……」

 ゼンゾーがミアにウィンクをした。

「ミアちゃん、有望だからね。あと10年もしたら美人になりそうだ。おれと年齢差が20歳だから、じゅうぶん結婚もできる」


「相変わらずだな、善三は」

 そう独り言を呟きながら、窓際のロッキングチェアーに腰掛けていたアーミティアスが立ち上がり、こちらへ歩いてきた。

「相変わらずの女好き……か。気がしれん。女など我々のエサでしかないのに」


 ミアの顔が、動いた。


 明らかにアーミティアスを見ている。


 生肉を一切れ取り、口に入れる一角獣のことを、不思議そうにじっと見ている。


 不安になり、オレはミアの耳に口を近づけ、聞いた。

「ミア……。額に一本角をもつイケメンのことが見えているのか?」


「うん」

 オレに合わせてミアも小声で答えてくれる。

「来た時から気になってたけど……このひと、誰? なんで頭からツノが生えてるの?」


「コイツがここにいること、誰にも言うな」

 オレはミアに釘を刺した。

「見えてることがわかれば、誰かが殺される」


「あれ?」

 アーミティアスはそのことに気づくと、オレとミアの間にその長身を屈め、楽しそうに聞いてきた。

「その子、私のことが見えているのか?」


 美しいその白い顔に、生肉の汁を口から滴らせながら、碧色の瞳が楽しそうにオレとミアを見る。


「手を出すな」

 オレは低く唸るように言った。


「面白くなりそうだ」

 アーミは何もせず、離れていった。

「私の角が見えるのみならず、『ステルス』まで見破る人間は初めてだ。楽しみにしているよ」


 ゼンゾーもスティーブも、アーミティアスがここにいることにはまったく気づかずに二人で会話をしていた。


「今の……、誰?」


 改めてそう聞くミアに、オレは教えた。


「愛田谷《あいたがや》アーミティアス──ゼンゾーの兄だ。そして、人間の心を持たぬ、ユニコーンという名の化け物だ」





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