まったく別の、反目
指定された寺に赴き、協力者と会った。
――典型的な、貴族のお坊ちゃまだな。しかも文官か。
「そちゃが、麿の手足か。ふ、ん……阿闍梨様の仰せゆえ使うてやるが、麿の役に立つよう、心して励むがよいぞ」
ふざけるな! むしろ、アンタが足手まといになるんじゃないのか?!
怒鳴りたい気持ちを、ぐっと堪えた。
座主様の兄君が連れてきたのなら、こういう人間だろう。まるっきり同じタイプだ。
「貴方様こそ、お見受けしたところ文官のようですが、このような荒事のご覚悟がおありなのですか」
わざと、嘲るような口調で言ってやった。
身分はかけ離れているが、ともかく今は同格の協力態勢なのだと、分からせねばならない。
「麿は以前、蔵人もしておった。それで今回、白羽の矢が立ったのじゃ。蔵人の仕来りを知らねば、疑われずに近づくこともできまいて。地下の者は黙って従えばよい」
お坊ちゃまが、むっとして、言い返す。
たったあれだけの挑発で、もう青筋を立てている。こんな癇性で、慎重な計画を成せるのだろうか。
だいたい、ここも、阿闍梨様のいる寺だ。こんな所に我を呼びつけて、自分は出仕の時の袍(ユニフォーム)のまま、来ている。
寺参りや物見遊山ではないのだ。後日のために用心するという、考えすら浮かばないのか。
それでも、宮中に参内できる身分、蔵人の警護の知識は、今回の計画に不可欠だ。
我は、深呼吸して、気を静めた。
そして、何よりも。
「ええ。我と貴方様だけが、特別な体質ですから」
我らは二人とも、蜂に何度刺されてもまったく支障がない、という体質なのだ。
「まあ、そうなのじゃが。支障はなくとも、痛みは同じぞ。蜂の針は特別に痛うて、麿は嫌いじゃ。そちゃ、蜂を手に入れる手筈は整えたのか」
「はい。山科にて、大量に蜂を飼っている酔狂な貴族の牧場があります。そこから、特に毒の強いものをいただく予定で」
「ふーん。手に入れば、細かいことはどうでもよい。よきにな」
唖然とした。
このお坊ちゃまは、我一人に行かせるつもりなのか。
「我ら二人で赴かねばなりませぬ」
「蜂さえ手に入れば、そちゃ一人でよかろ。麿は出仕がある。急に休むと、上司が口うるさいヤツでのう。麿が出世したら、あやつはクビじゃ、クビ」
なんとか、気を取り直す。
動きも鈍そうだし、こんなお坊ちゃまと盗人などやる方が、足手まといだ。
市かどこかで、慣れているヤツを見繕った方がマシだろう。
「お、そうじゃ。麿は、大事ないとはいえ、蜂に刺されたくない。そちゃ、蜂をおとなしくさせておく手筈も万端整えてから、麿に連絡して来よ」
もう、怒りが抑えられなかった。
憤然と立ち上がり、無言で退出した。
我が急に立っただけで、お坊ちゃまはびくっと身を竦めていた。
本当に、こんなヤツに大事を任せて、よいのですか、座主様!




