359話 第何時ともしれない改革 2
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「人材が無さすぎる」
マコトは公城の執務室で呻いていた。マコトの執務室には以前は護衛の親衛隊員ぐらいしか常時待機して居なかったが業務の激増に伴い秘書官3名が追加で常駐するようになった。
その3人と時折追加される書類の山と格闘していたがあまりの量に思わず音を上げてしまう。
「どうかされましたか、陛下?」
執務室に追加で設置された業務机で書類業務をしていた初老の眼鏡をした男性が反応する。
彼は元は自分の商会を有していたが、商機をかけて挑んだ投資に失敗して借金奴隷落ち(第17話参照)していたのをマコトの旧知の奴隷商人のミケーレ・ザザ(第18話参照)から是非に、と売り込まれた人物であった。
因みにヤマト公国では奴隷制は廃止にはしていない。今の国際情勢では社会的弱者の救済には幾ら金が有っても足りない。ならば民間の資本を使った救済処置伴とも言える奴隷制は存続させざるを得なかった。
勿論、過度な奴隷への暴力や違法な行為による奴隷落ちを取り締まるべく法整備は行っている。ミケーレ商会はその取り組みにいち早く順応し、ヤマト公国の奴隷経済のまとめ役的な立場に収まり度々国へと提言を行っていた。
そんな中、ザザは『これは?』と睨んだ有能な人物を見付けるとマコトへと売り込みをかけていた。そうして有望な人材を公国に提供することにより自らの有用制をアピールし、また市場であるヤマト公国を発展させようとしているのだ。
元商人ピカサはそうしてマコトに紹介された人材であったが、その商才に限らない国際情勢を見極め、素早い情報処理を行える才能にマコトは即決でザザの申し出を受け、ピカサの身柄をもらい受けると直ぐに奴隷からの解放を行った。
そうして、ピカサに公国への協力を要請したが商売に失敗し、財産もなく、知人に融資をしてもらい1から再出発をするのは年齢的にも厳しかったピカサに断れる筈も無く、この申し出を快諾した。
そうして、公国の設けた各種学校を首席で卒業し、商業省で働き始めたピカサだがめきめきと実力を発揮して各省からの引き抜きを打診されたが特務省への異動を受け、マコトの秘書官兼務の事務官として勤務している。
「今は、国内だけでなく、周辺国家を含めた官民の技術・経済発展の取り組みを自惚れでなくて我が国が主導しなければいけない。なのに事務方の文官の数が全然足りていない。人材を手当たり次第ともいかない」
「確かに公国は国内にも洩らす訳にはいかない重要な情報が多数有りますからな。私も奴隷契約を元とした機密保持の制約の魔法をかけられた時は大袈裟な、と思いましたが今では充分納得していますが」
ピカサはマコトと会話しつつも他の秘書官に小休憩とお茶の準備をするように合図をする。もう1人の秘書官が手を止めて肩を回し始め、残った秘書官が内線電話で武装侍女にお茶を頼む。
「あの魔法を遺跡から発掘して使えるようにしてくれた人には本当に感謝しかない。だけど、秘密を守れてもそれを扱う人間が居ないことには仕事が進まない」
「陛下の政策により、識字率、修学人口が増えているとはいえそれを生かして文官に全員がなれる訳ではありませんからな。寧ろ小商いをする者が増えて政府の仕事が増えたのでは?」
「国民が豊かになるのは良いんだが、国がそれを統制出来なければ最後は無秩序になるだけだからな。やはり人材が欲しい」
執務室の扉を警護の親衛隊員が開けて武装侍女がカートを押してお茶セットを持ってきた。自然と会話は止まり待つこととなる。お茶が室内の全員へと行き渡ると会話が再開する。マコトはコーヒーで秘書官達は皆紅茶のようだ。
「ザザ殿には聞いてみたのですかな?」
「以前から打診してようやくまとまった数が、約50人が来ることになりそうだ。全員が使い物になるか分からないしそれだけだと各省からの引き抜きを受けて一瞬で居なくなるだろうな」
「・・・・、愚案ですが陛下の故国の人材をこちらに招くことは出来ませんでしょうか?聞いた話しですと識字率も高いようですし、陛下の進んだ知識をこちらの人間が1から学ぶよりも早く実践出来ますでしょう」
「あ~、自分もそのことは考えた。しかし、知識があることは有益な事ばかりでは無い。余計な知識があれば経験の乏しいこちらの人間をカモにしようとする馬鹿が現れるだろうし、自分で言うのもなんだが我が故国の人間は外国の言語を
学ぶのが苦手だ。半世紀の国交のある同盟国の国際共通言語を流暢に使えるのは国民の何割も居ないだろう。全く知らない言語の我が国に招いても使い物になるのは何年も先になるだろう」
マコトがため息をつくとピカサは紅茶を一口、口にした。
「ままなりませんな」
「ままならんよ」
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