2
表通りから少し外れた程々の場所。そこが俺の仕事場だ。えて表通りから外れたことで広めの土地が確保されているのが良いところで、悪いところは客通りがほとんどないところか。今も朝っぱらだからということもあるが、店の前には1人しか姿が見えない。
「はぁ、憂鬱だわ」
「なーにため息してるんですか」
俺の姿に気づいたのか、店の前に立っていた女性がこちらへと近づいてきた。薄灰色の髪をツインテールに、身長は140cmしかない。完全に少女にしか見えない彼女がこの店で唯一の同僚。名前はカノンという。
「誰だって仕事をする前はため息だって吐きたくなるだろ」
「そうですか?私は仕事が楽しく感じるので共感できないです」
「あー、そう……」
やる気があるのは結構。そのやる気を発散するほどウチの店が賑わっていないのが問題だが。そんな無粋なことを言って機嫌を損なうのもあれなので、さっさと店の中へ鍵を開けて入った。
後ろからカノンがついてきていることからわかることだが、彼女は店の鍵を持っていない。まあ、色々あるのだ。
「それで、なんであんなデカいため息吐いてたんですか?」
「言っただろ。仕事が嫌だからって」
「違いますよね。仕事が嫌なんじゃなくて、客が少ない現状が嫌なんですよね」
「それもある」
普通に仕事をするのもいやだ。俺は働かずに金が欲しい。ああ、そうだ、働くのが嫌過ぎてもう忘れていた。
「仕事をする前に言っておくことがある。これをみてくれ」
「なんですこれ。赤い卵?」
「買ったんだよ。金貨1枚」
「たっっっっかいですね。何の卵なんですか?みたところは鶏の卵を赤くしただけに見えますけど」
「知らん」
「知らないって……あ、また酔っ払って帰ったときについってやつですか。もう!昨日はあれほどそのまま帰れって言っておいたのに」
ツインテールが顔の下でぶんぶんしている。この娘、普段はクールぶってるのに、予想外のことが起こるとすぐに仮面が剥がれるんだよな。そっちの方が姿相応に可愛らしくて俺は良いと思うんだが、どうも本人は大人に見られたいらしい。無理だろ。
「その件は置いておいて、火の魔石ってまだ在庫あったよな」
「置いとくって……それに火の魔石は昨日売れたじゃないですか。ほら、野営に使うからって冒険者さんたちが」
「そんな奴らいたか?」
「ほら、最後に駆け込んできた、名前は確か「不死者の剣」だとか」
そんなのいたっけな。もしかしてあれか、最後に扉閉めようとしたら大声で叫んできた男達か。赤、青、緑とカラフルな髪色をしていて、声もデカいもんだから目立つ目立つ。何事かって見られていたから仕方なく入れたんだったわ。
髪色以外は特に変わったところもなく、体つきも細いが全員が剣を持っていた。あれが形だけのものなのか、全員が前衛というアンバランスなパーティーなのかはしらないが、魔法職のような格好はいなかったはずだ。
「あいつらそんな名前だったのか。接客は任しちまったから忘れてたわ」
「そんなだから常連さんが増えないんです。もっと顔を覚え、覚えられるような努力をしてください」
「……善処します。売れたなら他の在庫含めて先に仕入れにいくか。俺は倉庫の方をみてくるからカノンは」
「店の分は昨日のうちに数え終わってるので一緒に倉庫へいきましょう」
「はい……」
言われるまでもなく仕事をこなしている。この人ほんと仕事早い。
「店長なれば?」
「馬鹿言ってないでさっさと数えますよ、店長」




