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学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について   作者: 沢田美


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学年一可愛い令嬢三姉妹は、写真立て一つ選ぶだけなのに当然みたいに半日がかりの外出へ発展させる

 写真立ての話が出た翌々日、俺は昼前から駅前のショッピングモールにいた。


 どうしてこうなったのかと聞かれれば、原因はいつもの三姉妹である。


 あの日のあと、涼花は「今週のうちに見に行こ!」と騒ぎ、優里は「自然なサイズ感のものがいいですね」と静かに候補を絞り、龍華は「どうせなら机に合うやつを選べ」と、当たり前のように日程を押さえてきた。


 俺は最後まで「別に今すぐじゃなくていいだろ」と抵抗した。

 したのだが、結局こうして連れ出されている。


 しかも今日の三姉妹は、やたらと買い物慣れした顔をしていた。


 涼花は軽いワンピースにスニーカーという、いかにも動き回る気満々の格好。

 優里は涼しげなブラウスと長めのスカートで、上品なのに歩きやすそうだ。

 龍華は相変わらずシンプルなパンツスタイルだが、店内を歩いていても変に浮かない絶妙なまとまり方をしている。


「で」


 俺はエスカレーターを上がりながら言った。


「本当に買うのか」


「買うよ?」


 涼花がきょとんとする。


「なんでそんな確認するの?」


「お前らの勢いで決まっただけだからな」


「でも、神谷くんも嫌じゃなかったでしょ?」


 優里がやわらかく言った。


「……まあ」


「ほら」


 涼花がすぐに勝ち誇る。


「だから今日は楽しく選ぶ日!」


「“楽しく選ぶ”って言い方だと、写真立て一個じゃ済まない未来しか見えない」


「それは気のせいだな」


 龍華が言う。

 その時点で気のせいじゃない。


 インテリア雑貨のフロアへ着くと、三姉妹の動きは一気に速くなった。


 木目のもの、ガラスのもの、シンプルな金属フレーム、壁掛け型、卓上型、二連、三連。

 写真立てと一口に言っても、こんなに種類があるのかと少しだけ驚く。


「これかわいくない!?」


 涼花が最初に飛びついたのは、白い木枠に小さな花の装飾がついたタイプだった。


「お前の基準、完全に“かわいい”だな」


「大事じゃん!」


「机に置いた時、浮くだろ」


「えー、そうかな」


 優里がそのフレームを手に取る。

 少し傾けて、光の入り方まで見てから、静かに言った。


「神谷くんのお部屋には、もう少し落ち着いた方が合いそうですね」


「だよな」


「でも、涼花らしさはあります」


「優里お姉ちゃん、それフォローになってる?」


「半分くらいは」


 そこで龍華が、すでに別の棚の前にいた。


「こっち」


 短く呼ばれて行ってみると、そこには透明なアクリルの三連フレームが並んでいた。


「これなら机の圧迫感少ないし、三枚並べても重くない」


「三枚並べるの確定なんだな」


「今さらそこから戻るのか?」


 龍華のその返しは、最近だいぶ強い。


 優里はその横に並んで、静かにフレームの縁を見ていた。


「透明なのは綺麗ですが、少し無機質かもしれません」


「じゃあ何がいいんだよ」


「木目ですね」


 優里が指したのは、薄い色の木でできた三連タイプだった。

 飾りはない。けれど、安っぽくも見えない。机に置いた時の馴染み方を考えると、たしかにこれが一番自然かもしれない。


「神谷くんのお部屋、机や本棚の色味がやわらかいでしょう?」


「……見てるな」


「見てます」


 優里はさらっと言う。


「だから、あまり冷たい質感より、こういう方が合うと思います」


 隣で涼花が「たしかにー」と頷いていた。

 お前、さっきまで白に花柄って言ってなかったか。


「でも、三連ってことは並び順も大事だよね!」


 来た。

 絶対そこへ行くと思った。


「何の並びだよ」


「写真の!」


 涼花が当然みたいに言う。


「真ん中は誰か!」


「決めるな」


「でも大事じゃん!」


「大事じゃない」


「大事です」


 優里が静かに補足するな。


 龍華は腕を組んで、フレームを見下ろしたまま言った。


「真ん中は神谷だろ」


「は?」


「三連なんだから」


 たしかに構造上そうなる。

 だが、そういう問題ではない。


「じゃあ、左右どうするの!?」


 涼花がすぐ反応する。


「それは交代じゃない?」


「写真立ての中でまでローテーション組むな」


「でも公平でしょ!」


 優里が小さく息をついた。


「公平性を持ち込むと、かえって難しくなります」


「じゃあ優里お姉ちゃんどうするの?」


「……季節ごと、でしょうか」


「お前も変な方向に賢いな」


 夏はこの写真、秋は別の写真、みたいな話を始めたら、本当に終わらない。


 その時、龍華がふと別の棚からもう一つフレームを持ってきた。


 今度は、卓上サイズの二連だった。

 薄い木枠で、真ん中に小さな蝶番があるだけのシンプルなもの。


「これも悪くない」


「なんで二連」


「一枚は机、一枚は棚」


「増やすな」


「でも、こっちの方が自然に置けそうです」


 優里が少しだけ乗り気になる。


「神谷くんの机には二連、棚には集合写真とか」


「待て待て」


「それなら圧も少ないし!」


 涼花まで嬉しそうだ。


 完全にインテリア計画になってきている。

 写真立て一つ買うだけじゃなかったのかよ。


「お前ら、本当に俺の部屋のこと好きだな」


 思わずそう言うと、三人とも少しだけ動きを止めた。


「好きだよ?」


 最初に言ったのは、涼花だった。

 相変わらずまっすぐだ。


「私もです」


 優里がやわらかく続ける。


「落ち着くしな」


 龍華まで当然みたいに言う。


 そこで揃うな。

 こっちが変に意識するだろうが。


 結局、最初の三連フレームと、二連の小さいフレームの両方が候補として残った。

 そして、そこからさらに三十分くらい、色味だの置き方だの並び方だので揉めた。


 涼花は「見た瞬間に楽しいのがいい!」を譲らず、

 優里は「自然で、長く置ける方が」と静かに押し、

 龍華は「実際の机に置いて邪魔かどうか」で切っていく。


 三人とも言ってることは違うのに、全部ちゃんと“俺の部屋に置く前提”なのが、やっぱり少しおかしい。


「神谷くん」


 優里が、少しだけ真面目な声で聞いた。


「最終的には、どちらがいいですか?」


 三連か。

 二連か。


 涼花も龍華も黙る。

 店の中なのに、妙に静かな時間だった。


 俺は二つを見比べてから答えた。


「……二連」


「おっ」


 龍華が少しだけ口元を上げる。

 優里も、ほっとしたみたいに目を細めた。

 涼花だけが「あれっ」と声を漏らす。


「なんで!?」


「三連だと、いかにも置いてます感が強い」


「うっ」


「でも、二連なら自然だし、机にあってもおかしくない」


「……なるほど」


 優里が小さく頷く。


「神谷くんらしいですね」


「どういう意味だよ」


「ちゃんと残したいけど、主張しすぎるのは苦手」


「それ、だいぶ見抜かれてるな」


「見てますから」


 やっぱり、その返しだ。


 涼花はまだ少し不満そうだったが、やがて二連フレームを手に取って言った。


「じゃあ、こっちにしよ!」


「切り替え早いな」


「だって神谷くんが選んだし!」


 その一言は、わりと強い。


 支払いは当然のように揉めた。


「これは私たちが」


 優里が財布を出す。


「いや、俺の部屋のだし俺が――」


「それなら、なおさらです」


「意味が分からん」


「記念ですから!」


 涼花まで言う。


「期末頑張った記念、海行った記念、写真残した記念!」


「記念が多いな」


「私は別に割り勘でいい」


 龍華が珍しく現実的なことを言う。


「でも、神谷だけ払わせるのは違うだろ」


 結局、三姉妹が折半する形で落ち着いた。

 俺の意見が通る余地が、どこにもなかった。


 店を出たあと、涼花が紙袋を大事そうに持っていた。


「なんでお前が持つんだよ」


「だってうれしいし!」


「お前の部屋に置くわけじゃないんだぞ」


「でも、半分くらいは関係あるもん」


「半分どころか全部関係ありますよ」


 優里がやわらかく言う。


「私たちが選んだので」


「そこを堂々と言うな」


 龍華はそんなやり取りを見ながら、ふっと笑った。


「で、今日は設置までやるんだろ」


「……やっぱりそこまでセットか」


「当たり前じゃん!」


 涼花が元気よく言った。


「買ったら置きたいもん!」


 だから、お前らは本当に話が早すぎる。


 どうやら令嬢三姉妹は、写真立て一つ買うだけでも、当然みたいにその日のうちに俺の部屋の景色まで変えるつもりらしい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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