学年一可愛い令嬢三姉妹は、予約なしでいいと言われた瞬間に本当に遠慮をやめる
三姉妹が帰ったあと、俺はその場で自分の失言を反芻していた。
――来たい時に来ればいい。
なんでそんなことを言ったんだ、俺は。
あの場では、変に順番や予約で揉めるよりマシだと思った。思ったんだが、相手が西園寺三姉妹だという事実を忘れていた。
嫌な予感しかしないまま風呂を済ませ、机に向かっていた時だった。
スマホが震える。
西園寺涼花。
『明日ちょっとだけ行っていい!?』
早い。
思ったよりずっと早い。
さらに数秒後。
西園寺龍華。
『明日行くかも』
“かも”じゃない。
その文面はもう半分確定だろ。
そして、最後に来たのが一番静かで、一番重かった。
西園寺優里。
『遠慮しなくていいと、言っていただいたので』
『少しだけ、お邪魔してもいいですか?』
「……」
こいつら、本当に容赦がない。
俺が返事に困っていると、部屋の外で控えめなノックが鳴った。
まさか、と思う。
こんなタイミングで来るやつなんて、一人しか思い浮かばない。
いや、三人思い浮かぶのが最悪なんだが。
「神谷くん」
扉の向こうから聞こえたのは、やっぱり優里の声だった。
「もし、もう休むところでしたら帰ります」
その言い方はずるい。
帰る気がないくせに、こっちへ選ばせる余地だけ残してくる。
ため息をつきながら扉を開ける。
そこに立っていた優里は、学校でも屋敷でも見た時とは少し違っていた。淡い紺色のワンピースに薄いカーディガンを羽織っていて、長い黒髪もいつもより柔らかく下ろしている。手には小さな白い箱。上品なリボンまでかかっていた。
「……来るの早すぎるだろ」
「すみません」
そう言いながら、優里は少しだけ笑う。
「でも、今なら一番乗りかなと思って」
「やっぱり競ってるじゃないか」
「少しだけです」
少しだけで済んでいない。
優里は箱を持ち上げる。
「屋敷で焼いたマカロンです」
「屋敷で焼くなよ、そういうの」
「神谷くんのお部屋で食べたくて」
その一言に、また言葉が詰まる。
優里は俺の反応を見て、ほんの少しだけいたずらっぽく目を細めた。
「入ってもいいですか?」
それを玄関先で聞くのは反則だろ。
少し迷ったあと、俺は体をずらした。
「……少しだけな」
「はい」
優里は嬉しそうに頷いて、静かに部屋へ入った。
どうやら“予約なしでいい”の最初の被害者は、俺自身らしい。
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