第37話:自主トレinハワイに元先輩の高井を連れ、さらなる高みを目指して取り組む
今や世界中が注目する左のアンダースロー橘周は、正月前にハワイに向けて出発した。傍らにはアンダースローを勧めてマスターするまで寄り添ってくれた高井がいた。
「正月休みに同行してもらって助かります。しかもノーギャラで(笑)」
「いやいやギャラもらうと副業になっちまうから。それより旅費全額出してもらってありがたいよ。いいのか?」
「当然ですよ。その代わり、マネージャー兼栄養士兼キャッチャー兼運転手よろしくです」
「肩書多いな(笑)。もちろんいい経験させてもらうよ」
「そうすね。来年一緒にメジャーに行きたいですからね」
「そうそう。今回ケガだけはすんなよ」
「はい、それは最低条件ですね」
高井は去年宣言した通り、今年トレーナーとしての資格を取得した。TOEICは目標の700点には届かなかったが、650点超えを達成したので、まずは充分だろう。
橘周は、ハワイで全ての球種の棚卸しをしたかった。
それぞれの球種と初速は次の通りだ。
・ストレート:145~150キロ
・ツーシーム:140~145キロ
・カットボール:135~140キロ
・パワーカーブ、シンカー:125~135キロ
・チェンジアップ:115~125キロ
・スローカーブ:90~110キロ
この中で特にチェンジアップのバリエーションを増やしたかった。もっと速い種類やもっと落差の大きいパターンとか。そこには、素人ながら経験豊富なキャッチャー高井の存在が貴重だった。それと高井には、今年橘周がケガをした腰のケアについて、深く学んでもらっていたので、その方法の習得もしたかった。
チェンジアップのバリエーションはある程度成功した。ボールを離す時の方法を色々と試して、しっくりくるものを探り当て、落差を大きくすることができた。と同時に、抜くけどほとんど落ちないチェンジアップもいつでも使えるレベルになった。これで来シーズンの武器になるだろう。
特にチェンジアップは指ではじかない球種なので、肘への負担が少なく、メジャーでは、多目に投げたい球種だ。トミージョン手術をすることにはなりたくないのだ。




