第295話:開幕戦で弟子達の活躍と・・・奇跡の13.3秒
開幕戦は、投手戦になった。相手エースに対し、
ミッキー・シュナイダーも無双している。
シュナイダーは、ライジングストレートは
投げられないが、ライジングカッターは自在に
操れるようになった、左のアンダースローだ。
シュート成分の大きい速球、
バッターの外角に逃げながら沈むシュート、
浮き上がらない低目のカットボールと
多彩な投球ができる。
全盛期の橘周と比べると見劣りするが、
名門ドジャースの開幕投手を担えるピッチャー
に成長した。
浮き上がるカットボールやスライダーを投げる左右の
アンダースローはメジャーで数人いるが、その中で
ストレートの威力は断然シュナイダーがトップであり、
バッターが苦労する点である。
相手エースに対して、日本人3人は、いずれも三振した。
独特のパワーカーブに合わなかった。
松村祐「なかなか鋭いカーブですね。でも2球見た
から、次は打ちたいです」
橘周「俺も2球見たから、行けそうな気がする」
神島ルカ「ええ!さすが天才達。僕はもうちょっと
見ないと・・・」
その言葉通り松村祐は、2打席目にセンター前ヒット。
チーム初ヒットだ。
神島ルカ「ほんとに打った。すげえ」
橘周「今のはスライダーな(笑)」
5回表にシュナイダーが先制点を献上し、0-1とリード
されて5回裏は、7番橘周から始まる。
若干衰えが見える橘周を開幕オーダーに入れて
くれた新監督の期待に応えるために、フォアボール
でも何でもいいから塁にでたいところ。
「ルカ!2人のうち、どっちかが同点のホーム踏むぞ」
「うっす!気合入れます」
「空回りせず、楽しんでいけよ」
橘周の打席。
初球 外角ツーシーム:ボール
2球目 外角高めフォーシーム:ファール
「ツーシームか、スライダーか、よしパワーカーブだ」
3球目 パワーカーブ:狙い通り、コンパクトに叩く。
ライナーがライトのやや右中間寄りに飛ぶ。
前進したライトが慌てる。そう、橘周のライナーは、
イメージより伸びるのだ。
バットの真芯で捉えるのが上手く、
足腰のパワーをうまく腕に伝え、100キロ近い握力がある。
だから外野手から見た打った際のイメージと、実際に
飛んでくる飛距離にけっこうな差が出るのだ。
3m以上前に突っ込んで頭を越された。
大ベテランでありながら、スピードスター橘周が
全力疾走に切り替える。ぐんぐん加速し、
セカンドベースの手前当たりから、オリンピックメダリストを
彷彿とさせるフォームに進化する。
まさに・・・飛ぶように走る!!!
3塁コーチャーの手が回った。
他の選手ならここからスピードダウンするのだが、
2年前のマスターズ陸上世界大会200m走メダリスト
の橘周は、さらに加速する。
返球が返ってきたが、足からの高速スライディングで、
余裕のセーフ!!
幾度も見てきた光景。しかし、ドジャースファンは、
一斉に立ち上がってスタンディングオベーションだ。
世界で唯一ベース一周ランニングで観客を熱狂
させる男は、今年も健在だった。
橘周は、ホームイン後神島ルカに小さい声で耳打ちした
「ピッチャーがっくりきてるから、初球からチャンスだ」
ピッチャーにとって、ランニングホームランを打たれる
ことは滅多にないが、特大ホームランを打たれるより
もやもやが残る。ライトのまずいミスも見たのだから、
尚更だ。
しかも、神島ルカが8番バッターだから、どこか舐めてる。
神島ルカは、ワクワクしながらバッターボックスへ入る。
そして、まんまと初球のパワーカーブを捉えて、
ライトスタンドに運んだ。2者連続ホームランで逆転だ。
勝ち星の権利を得たシュナイダーが飛びあがる。
4-2でドジャースが勝利。
最後はタナー・ロックが締め、ミッキー・シュナイダー
に今期初勝利が付いた。
試合後、ドジャースナインには笑顔が溢れる。
しかし、橘周は「13秒3かあ、これで一昨年より、
コンマ3秒も遅くなってる。やっぱ老いたのか?俺」
とちょっぴり悔しがった。
「しかし、まあルカにホームランでたから一安心」




