第289話:疲れ果てた身体で熱投につぐ熱投!結末は?
9回裏のマウンドに橘周が、比較的ゆっくりと歩いていく。
まあ疲労感を抱えていたのだ。
それを振り切るように、マウンドで肩をグルグル回し、
ぴょんぴょんと数回ジャンプした。
ここまで8回をバッター24人で抑えている。ヒット1本
を打たれてはいるが、ダブルプレーできっちり3人ずつで
抑え込んでいるのだ。
これはかなり画期的なことだである。しかもバッターでも
走者でも決定的な仕事をしている。
球場内は異常な空気だ。敵地なので、当然大半は
ブレーブスファンであり、ブレーブスに逆転して
欲しい気持ちはある。でもこのまま橘周に投げ切って
勝たせたい気持ちもある。歴史上すごい選手のすごい
プレーを見ている喜びもある。
そんな不思議な世界。
9回の1人目には、まず遅いナックルでストライク。
続いてスプリットで空振り。
3球目も遅いナックルで空振り三振。
先頭打者を抑え、チームも観客もホッとする。
これで後2人。
2人目は、代打が登場する。右のパワーヒッターだ。
初球は、速いナックルで空振り。
ブレーキがかかった落差に、バッターは驚く。
2球目は、ボールになる外に逃げていくシンカー。
橘周は、はやる気持ちを抑え、慎重な配球を選択。
ストレートか落ちる球種と考えていたバッターは
一瞬混乱する。
「そう言えば左右に曲がる球種もあったな」と。
次にインコースへのスプリットで空振り。
インコースだからストレートと判断して振ったら
20cm以上落ちた。
そして4球目は、真ん中高めのボールになるストレート。
空振り三振!若干頭が混乱したまま、振らされたのだ。
後1人。球場全体の観客が立ち上がる、滅多に無い光景。
3人目は9番バッターだ。
遅いナックル・・・ボール。
速いナックル・・・見送ってストライク。
143キロのスプリット・・・空振り。
さあ追い込んだ。
155キロの高めストレート。空振り三振!!!
試合終了!!!
橘周は、珍しく吠える、吠える。
そして、地面にへたり込んだ。
キャッチャーが駆け寄る。野手陣も駆け寄る。
最後はライダー・ゴールドが抱えて起こす。
そのライダー・ゴールドとジャックス・ハーラン
に両脇を抱えられて、橘周はベンチへ戻っていく。
抱えられた橘周に松村祐が話しかける。
松村祐「ナイスピッチング!でも大丈夫ですか?」
橘周「いやーマジで疲れた。特にメンタルがね(笑)」
松村祐「俺も疲れましたよ。エラーしたらヤバイって(笑)」
橘周「皆の固い守備で助かったよ」
9回を1安打無失点。完封勝利。しかも27人で
終わらせる、準パーフェクトゲーム。
40歳以上で、27人で試合を完結させたのは、
過去数人しかいない快記録。
橘周の熱投を思う存分堪能した、両チームと観客は、
勝負を忘れて祝福ムードだ。熱狂ではなく、
ほんわかとした不思議な世界が広がっている。
勝負としては、ドジャースはこれで1勝2敗となった。




