第268話:史上最高の注目試合 ドジャース vs ヤンキース inヤンキースタジアム 始まる
兄の橘周の今シーズンのフォームは、若干サイドスローに近いスリークォーター。
子供の頃から大学卒業間近まではスリークォーターだったから、馴染みが無いわけではない。その大学までは、スリークォーターではどうしてもスピードが出なくてアンダースローに転向したわけだけど、ようやくしっくりきてスピードが出るスリークォーターのフォームに出会えた。
また、長年の希望だった「メジャーで腕を上げて、スプリットやナックルを投げる」を42歳シーズンでやっと叶えた。飽き性の性格を逆手に取って?試行錯誤した結果である。
対して弟の橘壮太郎のフォームは、昔から変わりなく、斜め45度付近のスリークォーター。
時々腕を上げたり下げたりはあるが、兄と違って一貫性がある(笑)。先にプロに入った兄のアドバイスはかなり受けはているが、基本は高校からプロ入り後3年間で、じっくりと固めてきたフォームである。
世紀の兄弟先発対決の当日。試合前に兄弟で30秒間だけ会話を交わした。
普通はしないが、メディアの取材をかねて、公開の場での会話だ。
去年も橘周は、オープナーとしてヤンキース戦に先発して2イニング限定で投げたが、今年は先発ローテーション入りした中での兄弟同時先発だから、インパクトが遥かに大きい。
周「投手戦にしたいな」
壮太郎「それより、今日ピッチャーで4番打つなんて聞いて無いぞ。しかも200勝をかけて登板するなんて、完全に周が主役みてーじゃねーか(笑)」
周「正義のヒーローだからなあ。しゃあないさ(笑)」
壮太郎「じゃあ俺は悪役だから、ぶつけてしまうかもしれんな(笑)」
今日のドジャースの打順は、2番松村祐、3番ライダー・ゴールド、4番橘周だ。また5番には、新進気鋭の右打ちキャッチャー:ミハエル・シュミットが抜擢された。松村祐と橘周はスイッチヒッターなので、サウスポーのスーパーエース)橘壮太郎をかなり意識した打順である。
ヤンキースの3番は、3年目を迎えた桜井淳がいる。プロ野球ではジャイアンツのチームメイトでもあった。プロ野球史上初の四冠王)桜井淳と史上初の四割バッター松村祐の対決にもかなり注目が集まっている。
試合開始。先発の橘壮太郎がマウンドに上がる。
初球のナックルカーブの後、2球目160キロストレートでセカンドゴロ。
次に2番松村祐が、橘壮太郎との初対決!
初球161キロのストレートでストライク。
2球目は、今年使っている、スラッター(カットボールとスライダーの中間で20~30cm鋭く曲がる)で外角ボールからのバックドアでストライク。
松村祐は、驚いた。「手元であんなに急に曲がって、ストライクゾーンに入ってくるのはやっかいだなあ」
若干集中力をかいたまま3球目の162キロ高めストレートで三球三振に斬って取られた。
「やっぱ、世界一のピッチャーは凄まじい。でも次の打席では・・・」
3番打者は、チーム1の強打者ライダー・ゴールド。
壮太郎は、ここでもスラッターで押す。
外角スラッター、ナックルカーブ、内角スラッターで連続の三球三振!!
ヤンキースタジアムが大歓声に包まれる。
橘周「壮のヤツ、バリバリ気合入ってるやん。スピードでは歯が立たないから、冷静に冷静に」
と言って、1回裏のマウンドに向かう。
この日の登場曲は、特別に選んだ。インディー・ジョーンズのテーマ曲で有名な「Raiders March」だ。
数年前は、ヤンキースで史上最高のクローザーだった橘周が、その時のアンダースローとも昨年のサイドスローとも異なる姿で、ヤンキースタジアムに戻って来たのだ。そのヒーローがインディー・ジョーンズのテーマ曲で登場したのだから、超満員の観客が興奮しないわけがない。
バックネット裏等には、有名人も群がっている。
この試合、最高額で500万円超えの席まで出現した。
「盛り上げ過ぎだろ。この変則ピッチャーに(笑)」とちょっぴり照れ臭かった。




