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婚約破棄された悪役令嬢ですが、仕事を奪った王宮が先に崩れました  作者: 水城ルナ


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第89話 二つの決断

 「……続ける」


 その一言が、空気を押し出した。


---


 列は、動いている。


 ゆっくりだが、

 確実に。


---


 押し合いは消え、

 怒号も減った。


---


 完全ではない。


 だが、


---


 崩壊は止まっている。


---


 アルノーは息を吐く。


 胸が痛い。


---


 怖い。


---


 だが、


---


 止まらない。


---


「次!」


---


 声を出す。


---


 人が動く。


---


 その時、


---


 別の方向から、


---


 重い音が響いた。


---


 地面を踏み鳴らすような音。


---


 振り向く。


---


 兵だ。


---


 王国軍。


---


 整列している。


---


 広場に、進んでくる。


---


 レオンハルトが先頭に立つ。


---


「……始める」


---


 低い声。


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 アルノーの背筋が凍る。


---


「何を」


---


 リリアーナが静かに聞く。


---


 レオンハルトは答える。


---


「都市の封鎖だ」


---


 空気が止まる。


---


「出入りを制限する」


「流通も統制する」


---


「秩序が戻るまでな」


---


 それは、


---


 完全な介入だった。


---


 アルノーが言う。


---


「それは……」


---


「強制だ」


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 レオンハルトは即答する。


---


 迷いがない。


---


「今の状態で自由にさせれば」


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「都市は壊れる」


---


 正しい。


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 だが、


---


 それは、


---


 選択ではない。


---


 命令だ。


---


 アルノーの手が震える。


---


「……でも」


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「人は今、動いています」


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 列を見る。


---


 ゆっくりと進む流れ。


---


 それは、


---


 人が選んだ結果だ。


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 レオンハルトはそれを一瞥する。


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「遅い」


---


 一言。


---


「間に合わない」


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 その言葉に、


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 アルノーの中で何かが揺れる。


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 確かに、


---


 遅い。


---


 確かに、


---


 間に合わないかもしれない。


---


 だが、


---


「それでも」


---


 言葉が出る。


---


「これは」


---


「人が決めた流れです」


---


 レオンハルトの視線が変わる。


---


 少しだけ、


---


 興味を持つ目。


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「なら」


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「その責任は誰が取る」


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 問い。


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 アルノーは言葉を詰まらせる。


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 責任。


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 それは、


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 神託が引き受けてきたもの。


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 そして、


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 今はない。


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 沈黙。


---


 その時、


---


 別の声が響いた。


---


「私です」


---


 ルシアだった。


---


 全員が振り向く。


---


 彼女はまっすぐに立っている。


---


「私は神託官です」


---


 静かな声。


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「これまで」


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「人々は神託に従ってきました」


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「ならば」


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「その結果も、私が受け止めます」


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 アルノーの目が揺れる。


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 それは、


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 責任だった。


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 神ではない。


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 人の。


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 レオンハルトは彼女を見る。


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「受け止める?」


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 短い問い。


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「どうやって」


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 ルシアは答える。


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「逃げません」


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 それだけ。


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 だが、


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 重い。


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 レオンハルトは少しだけ笑う。


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「それは」


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「美しいな」


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 皮肉ではない。


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 だが、


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 現実でもない。


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「だが」


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 彼は続ける。


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「都市は理想では守れない」


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 その言葉に、


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 空気が引き締まる。


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 そして、


---


 彼は命じる。


---


「封鎖を開始する」


---


 兵が動く。


---


 門が閉じられる。


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 人の流れが止まる。


---


 列も、


---


 止まる。


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 アルノーの心臓が跳ねる。


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「……!」


---


 選択が、


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 遮断された。


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 その瞬間、


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 リリアーナが動いた。


---


 一歩前に出る。


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 そして言う。


---


「それは」


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 静かに。


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「過剰です」


---


 空気が止まる。


---


 王国に対する、


---


 明確な否定。


---


 レオンハルトの視線が向く。


---


「理由は」


---


 短い問い。


---


 リリアーナは答える。


---


「今、人は動いています」


---


「それを止めると」


---


「次は、もっと強く崩れます」


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 沈黙。


---


 兵は動きを止めない。


---


 だが、


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 空気が揺れる。


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 レオンハルトは考える。


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 一瞬。


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 そして、


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 決める。


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「……半分だ」


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 全員が顔を上げる。


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「北門は封鎖」


「南門は開放」


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「流れを分ける」


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 完全ではない。


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 だが、


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 止めない。


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 そして、


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 管理する。


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 リリアーナは小さく頷く。


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 アルノーは息を吐く。


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 完全な勝ちではない。


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 だが、


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 消されなかった。


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 その時、


---


 遠くから煙が上がる。


---


 誰かが叫ぶ。


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「火だ!」


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 空気が一変する。


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 アルノーの顔が強張る。


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 止まっていない。


---


 どこかで、


---


 別の崩壊が始まっている。


---


 選択は終わっていない。


---


 むしろ、


---


 増えている。


ここでついに「神・人・力」の三つが真正面からぶつかりました。


アルノーの成長、ルシアの覚悟、そしてリリアーナの介入。

それぞれの「決断」が交差する重要回です。


ですが、まだ終わりではありません。

むしろ、ここからが本番です。


続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価で応援していただけると嬉しいです。

次話もぜひお楽しみに。

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