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幕間 蠢動

「お疲れさまでした」


 ギルドの三階で、ギルドマスターにそう声をかける女性がいた。

 二十代中頃くらいの女性だが、小柄で丸顔、ただでさえ地味な顔立ちなのに大きな黒縁メガネをかけてさらに地味さを高めている。

 ギルドマスターと同じく白いローブ姿で、ギルドマスターにお茶を持ってきたところだ。


「ああ、笹さんでしたか。いやぁ、魔術って難しいものですね。まだまだ練習が必要ですよ」


 ギルドマスターはその女性、笹さんと呼ばれる黒縁メガネの女性に言う。


「私からすると、魔術を身につけているマスターが凄まじいと思うんですけど」

「ああ、これにはトリックがあって、まだ私が身に付けている訳では無いんですよ」


 肩を回したり首を左右に振ったりして、ギルドマスターは体のコリをほぐす。


「ですが、わざわざ遠隔でヒントを与えるほどですか? 私には彼はさほど特殊であるとは思えませんが」

「ええ、私にも彼が特殊だとは思えませんよ」


 ギルドマスターの部屋は、大きなテーブルの他には本棚が多数あり、部屋の隅にベッドもあるのでこの部屋に寝泊り出来るようになっている。


「笹さんはゲームとかしてましたか?」

「はい? ええ、まあ、有名どころを少しくらい」

「私はRPGやシミュレーションRPGが大好きで、基本的にやり込むんですよね。まあ、お金がないと言う理由もありましたけど、やり込む時には大体仲間のレベルをカンストまで上げるんですよ」

「はあ」

「結局のところココも同じなのですから、ついつい手を加えたくなると言う訳です。別に彼を特別視している訳でも無く、私の趣味ですよ」


 ギルドマスターは自分のテーブルで、笹さんが淹れたお茶を飲む。


「ただ、彼は基本的にはダメ人間ですからね。私と一緒で。だから見ていて腹が立ってしまって、必要のないちょっかいを出したくなったと言うのはありますよ」

「マスターはダメ人間ではありませんよ。ダメなところは、まあ、ありますけど」

「ははは、そこは否定して下さいよ」

「エーカちゃんといる時のマスターはダメですから。それで、彼は何か変わりましたか?」


 笹さんの言葉に、ギルドマスターは笑いながら首を振る。


「まだ目覚めてもいませんよ。これからです」

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